辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

第7章：未来への学びと絆

第211話「新たな試練！予想外の気象変動」

王都アルヴェイン東部農地――。

魔力供給システムの調整が完了し、農地内の魔道具が安定して稼働するようになったエルヴィンたち。
魔道スプリンクラーは適切な量の水と魔力を散布し、魔力式の風除け結界や温度調整装置も問題なく動作していた。

「よし、これでひとまず完成だな！」
レオンが腕を組み、満足そうに畑を見渡す。

「ええ、今のところは魔力の供給も安定していますわね。」
カトリーヌもノートに記録をつけながら頷く。

「私も魔力測定をしましたが、特に異常は見られません。」
リヴィアが静かに報告する。

エルヴィンはそんな仲間たちの言葉を聞きながら、ホッと胸を撫でおろした。
これで農地への魔力供給はほぼ完璧になったはずだ――そう思っていた。

だが、その直後だった。

――ゴォォォッ……！

突然、強烈な風が吹き荒れ、畑の作物が大きく揺れた。
舞い上がる土ぼこりに思わず目を細めるエルヴィンたち。

「うわっ！？ なんだ！？ 急に風が強くなったぞ！」
レオンが顔を覆いながら叫ぶ。

「天候の変化……？ こんなに急に？」
カトリーヌが驚いた表情で辺りを見回す。

「待ってください、魔力測定器に異常な数値が出ています！」
リヴィアが慌てて魔力の流れを確認する。

エルヴィンは風の強さを測定しながら、何かが違うことに気づいた。

「これ、ただの風じゃない……魔力の乱流だ！」

「魔力の乱流？」
レオンが首を傾げる。

「そう、農地周辺の魔力が急激に変動してる。たぶん、どこかで大規模な魔力の流れが変わったんだ。」
エルヴィンは必死に測定器のデータを解析する。

「でも、そんな大規模な魔力の変化が起こるようなことなんて……。」
カトリーヌが考え込む。

「……王宮の魔道炉かもしれません。」
リヴィアが静かに推測を口にした。

「えっ、王宮の魔道炉が原因なのか？」
レオンが驚いたようにリヴィアを見た。

「王宮の魔道炉は、王都全体の魔力供給を管理しています。その流れが少しでも変われば、農地の魔力供給にも影響を及ぼす可能性があります。」
リヴィアは冷静に説明する。

「でも、王宮の魔道炉は夜間の調整以外で大きく変動することはないはず……。」
エルヴィンは歯を噛みながら考え込んだ。

すると、農地の管理を担当する老農夫が駆け寄ってきた。

「おい、若いの！ なんだか急に風が強くなってきたぞ！ 作物が倒れちまう！」

「すみません、おそらく魔力の影響です。すぐに調整します！」
エルヴィンは慌てて供給装置の設定を確認する。

「魔力の流れを安定させる方法は……」

「とりあえず、風除け結界を強化するしかねぇんじゃねぇか？」
レオンが提案する。

「でも、それだと今度は結界が魔力を吸いすぎて、ほかの魔道具が動かなくなるかもしれませんわ。」
カトリーヌが慎重に指摘する。

「じゃあ、一度魔力供給全体を抑えて、様子を見た方がいいですね。」
リヴィアが落ち着いた口調で言った。

「……よし、それでいこう！」
エルヴィンは魔力供給装置のレバーを操作し、供給量を一時的に下げた。

――ゴォォォ……

しばらくすると、風の勢いが少しずつ収まり始める。
畑の作物もなんとか持ちこたえ、被害は最小限に抑えられたようだった。

「ふぅ……なんとかなったか。」
エルヴィンが安堵の息をつく。

「でも、根本的な解決にはなっていませんわね。」
カトリーヌが腕を組んで考え込む。

「そうだな。王宮の魔道炉が原因なのか、それとも別の何かが影響してるのか、ちゃんと調べる必要があるな。」
レオンが真剣な表情になる。

「ええ……。一度、王宮の魔道炉の管理者に話を聞きに行くのがよさそうですね。」
リヴィアが静かに言う。

「じゃあ、すぐに王宮に向かおう！」
エルヴィンは決意を固めた。

こうして、エルヴィンたちは新たな課題を解決するため、王宮へと向かうことになった――。