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第7章:未来への学びと絆
第213話「魔力の行方を追え!」
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王都アルヴェインの街並みを見下ろせる王宮の一室。
エルヴィンたちはヴェルトナー伯の協力のもと、王都内の魔力の流れを調査する準備を進めていた。
「調査の手がかりとして、まずは王宮の魔道炉の管理記録を確認しました。」
ヴェルトナー伯が資料を広げる。
「それで、何かわかりましたか?」
エルヴィンが興味深そうに覗き込む。
「はい。ここ最近、特定の時間帯に王都の魔力消費が急増していることが分かりました。」
ヴェルトナー伯は魔力供給の変動グラフを指さす。
「この時間帯……ちょうど、広場での魔力供給システムの試験運用を行っていた時期と重なっていますわね。」
カトリーヌが記録を見ながら言った。
「でも、おかしくねぇか? 俺たちのシステムは、むしろ魔力の効率を上げるためのもんだったろ?」
レオンが腕を組む。
「うん。だから、僕たちの試験運用が直接の原因とは考えにくい。でも、同じタイミングで他に魔力を大量に使っている施設があるとしたら……?」
エルヴィンは顎に手を当てた。
「王都内で、最近新しく建設された施設や、大規模な魔法実験を行っている場所はありませんか?」
リヴィアがヴェルトナー伯に尋ねる。
「実は……あります。」
ヴェルトナー伯が少し渋い表情を見せた。
「え?」
エルヴィンたちは思わず身を乗り出す。
「王都の南区に、貴族の有志が資金を提供して建設した『魔道研究塔』があるのです。そこでは、新しい魔道具の開発や大規模な魔法実験が行われていると聞いています。」
「魔道研究塔……?」
エルヴィンは聞き覚えのない施設の名前に首を傾げる。
「はい。建設されたのは半年前ですが、本格的な運用が始まったのはここ最近です。」
ヴェルトナー伯は記録を見ながら続ける。
「この研究塔は、魔道具の高度な研究を目的としていますが、詳細な活動内容は公開されていません。王宮としても 注視している施設の一つではあるのですが……。」
「王宮が把握していない研究を勝手に進めているってことか?」
レオンが怪訝そうな表情を浮かべる。
「そこまでは断言できませんが、少なくとも通常の研究機関よりも閉鎖的であることは確かです。」
ヴェルトナー伯は少し言葉を選びながら答えた。
「なるほど……。もしそこが大量の魔力を消費しているなら、王宮の魔道炉に影響を与えている可能性は高いですね。」
リヴィアが慎重に言葉を継ぐ。
「調査に行ってみる価値はありそうだな。」
エルヴィンが地図を見ながら頷いた。
「でも、研究施設なら勝手に入るのは難しいんじゃ?」
「確かに、その通りですわね。」
カトリーヌが顎に手を当てる。
「そこは、私が手配しましょう。」
ヴェルトナー伯が落ち着いた口調で言う。
「王宮の許可のもと、公式な視察として研究塔に訪問する手続きを進めます。」
「ありがとうございます、ヴェルトナー伯!」
エルヴィンは深く頭を下げた。
「ふふ、エルヴィン殿がこうして礼を言うのも珍しいですね。」
ヴェルトナー伯は微笑む。
「いや、普段から感謝してますって!」
エルヴィンは少し頬を染めながら抗議する。
「ははっ、まぁまぁ、行く準備を整えようぜ。」
レオンがエルヴィンの背中を軽く叩く。
◇
翌日――王都南区、魔道研究塔前。
エルヴィンたちは王宮から正式な視察許可を得て、研究塔の前に立っていた。
塔は他の建物と比べても異質な雰囲気を放っており、灰色の石で作られた外壁には、無数の魔法陣が刻まれている。
「なんか……普通の研究施設って感じがしねぇな。」
レオンが腕を組みながら言った。
「ええ、見た目からして、実験場というよりは要塞のような印象を受けますわね。」
カトリーヌも違和感を抱いたようだった。
「この研究塔、ただの魔道具開発施設じゃないかもしれない……。」
エルヴィンは慎重に扉へと歩を進めた。
扉の前には、塔の管理人らしき人物が立っていた。
黒いローブをまとった壮年の男が、冷静な表情でエルヴィンたちを見つめる。
「王宮からの視察ですね。お待ちしておりました。」
「お世話になります。エルヴィン・シュトラウスです。」
エルヴィンが丁寧に挨拶すると、男はわずかに眉を上げた。
「……あなたが、あの魔力供給システムを開発した方ですか。」
「え? 知ってるんですか?」
「ええ。研究者の間では、あなた方の技術は大変興味深いものとして話題になっています。」
男は穏やかに微笑む。
「どうぞ、中へ。」
エルヴィンたちは視察のために、研究塔の中へと足を踏み入れた。
「うわ……。」
レオンが思わず感嘆の声を漏らす。
研究塔の内部は、まるで別世界だった。
広大なホールの中央には巨大な魔道炉が設置されており、無数の魔導機器がその周囲に配置されている。
壁には魔法陣がびっしりと描かれ、空中には青白い魔力の粒子が漂っている。
「ここ、本当に研究施設なの?」
エルヴィンは圧倒されながら呟いた。
「通常の魔道具開発の規模をはるかに超えていますね……。」
リヴィアが周囲を見回しながら言った。
「ご案内しましょう。」
案内役の男が歩き出す。
「まずは、こちらの実験場をご覧ください。」
エルヴィンたちは研究塔の奥へと進んでいった――。
エルヴィンたちはヴェルトナー伯の協力のもと、王都内の魔力の流れを調査する準備を進めていた。
「調査の手がかりとして、まずは王宮の魔道炉の管理記録を確認しました。」
ヴェルトナー伯が資料を広げる。
「それで、何かわかりましたか?」
エルヴィンが興味深そうに覗き込む。
「はい。ここ最近、特定の時間帯に王都の魔力消費が急増していることが分かりました。」
ヴェルトナー伯は魔力供給の変動グラフを指さす。
「この時間帯……ちょうど、広場での魔力供給システムの試験運用を行っていた時期と重なっていますわね。」
カトリーヌが記録を見ながら言った。
「でも、おかしくねぇか? 俺たちのシステムは、むしろ魔力の効率を上げるためのもんだったろ?」
レオンが腕を組む。
「うん。だから、僕たちの試験運用が直接の原因とは考えにくい。でも、同じタイミングで他に魔力を大量に使っている施設があるとしたら……?」
エルヴィンは顎に手を当てた。
「王都内で、最近新しく建設された施設や、大規模な魔法実験を行っている場所はありませんか?」
リヴィアがヴェルトナー伯に尋ねる。
「実は……あります。」
ヴェルトナー伯が少し渋い表情を見せた。
「え?」
エルヴィンたちは思わず身を乗り出す。
「王都の南区に、貴族の有志が資金を提供して建設した『魔道研究塔』があるのです。そこでは、新しい魔道具の開発や大規模な魔法実験が行われていると聞いています。」
「魔道研究塔……?」
エルヴィンは聞き覚えのない施設の名前に首を傾げる。
「はい。建設されたのは半年前ですが、本格的な運用が始まったのはここ最近です。」
ヴェルトナー伯は記録を見ながら続ける。
「この研究塔は、魔道具の高度な研究を目的としていますが、詳細な活動内容は公開されていません。王宮としても 注視している施設の一つではあるのですが……。」
「王宮が把握していない研究を勝手に進めているってことか?」
レオンが怪訝そうな表情を浮かべる。
「そこまでは断言できませんが、少なくとも通常の研究機関よりも閉鎖的であることは確かです。」
ヴェルトナー伯は少し言葉を選びながら答えた。
「なるほど……。もしそこが大量の魔力を消費しているなら、王宮の魔道炉に影響を与えている可能性は高いですね。」
リヴィアが慎重に言葉を継ぐ。
「調査に行ってみる価値はありそうだな。」
エルヴィンが地図を見ながら頷いた。
「でも、研究施設なら勝手に入るのは難しいんじゃ?」
「確かに、その通りですわね。」
カトリーヌが顎に手を当てる。
「そこは、私が手配しましょう。」
ヴェルトナー伯が落ち着いた口調で言う。
「王宮の許可のもと、公式な視察として研究塔に訪問する手続きを進めます。」
「ありがとうございます、ヴェルトナー伯!」
エルヴィンは深く頭を下げた。
「ふふ、エルヴィン殿がこうして礼を言うのも珍しいですね。」
ヴェルトナー伯は微笑む。
「いや、普段から感謝してますって!」
エルヴィンは少し頬を染めながら抗議する。
「ははっ、まぁまぁ、行く準備を整えようぜ。」
レオンがエルヴィンの背中を軽く叩く。
◇
翌日――王都南区、魔道研究塔前。
エルヴィンたちは王宮から正式な視察許可を得て、研究塔の前に立っていた。
塔は他の建物と比べても異質な雰囲気を放っており、灰色の石で作られた外壁には、無数の魔法陣が刻まれている。
「なんか……普通の研究施設って感じがしねぇな。」
レオンが腕を組みながら言った。
「ええ、見た目からして、実験場というよりは要塞のような印象を受けますわね。」
カトリーヌも違和感を抱いたようだった。
「この研究塔、ただの魔道具開発施設じゃないかもしれない……。」
エルヴィンは慎重に扉へと歩を進めた。
扉の前には、塔の管理人らしき人物が立っていた。
黒いローブをまとった壮年の男が、冷静な表情でエルヴィンたちを見つめる。
「王宮からの視察ですね。お待ちしておりました。」
「お世話になります。エルヴィン・シュトラウスです。」
エルヴィンが丁寧に挨拶すると、男はわずかに眉を上げた。
「……あなたが、あの魔力供給システムを開発した方ですか。」
「え? 知ってるんですか?」
「ええ。研究者の間では、あなた方の技術は大変興味深いものとして話題になっています。」
男は穏やかに微笑む。
「どうぞ、中へ。」
エルヴィンたちは視察のために、研究塔の中へと足を踏み入れた。
「うわ……。」
レオンが思わず感嘆の声を漏らす。
研究塔の内部は、まるで別世界だった。
広大なホールの中央には巨大な魔道炉が設置されており、無数の魔導機器がその周囲に配置されている。
壁には魔法陣がびっしりと描かれ、空中には青白い魔力の粒子が漂っている。
「ここ、本当に研究施設なの?」
エルヴィンは圧倒されながら呟いた。
「通常の魔道具開発の規模をはるかに超えていますね……。」
リヴィアが周囲を見回しながら言った。
「ご案内しましょう。」
案内役の男が歩き出す。
「まずは、こちらの実験場をご覧ください。」
エルヴィンたちは研究塔の奥へと進んでいった――。
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