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2章

予想外な展開

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保健室につくとすぐに神代はベットに横になるよう促された。
かなり熱があり、相当無理をしていたようだ。
ベットの上でぐったりしている。

「ごめん…」
「いいって。ま、ゆっくり休んどけよ。あとの仕事はやっとくから」

相田の件とか色々と言いたいことはあるが今病人にいうことではない。
そう思ってそのまま保健室を後にしようとしたが神代に声を掛けられる。

「…ねえ、どうして助けてくれたの?」
「は?いきなり何?」

「うちが美咲ちゃん達に囲まれた時、見ないふりすることもできたでしょ。どうして?自分が良ければいいんじゃなかったの?」

…俺が今その辺触れずにしておこうと思ったのに自分からその話題に触れるのかよ。

「俺が見ていて気持ちのいい物じゃなかったからだよ。それだけ。見ないふりをしたら俺が嫌な気持ちになるだろ」
「なにそれ…」

本当にそれだけだ。俺が嫌な気持ちになりたくないから助けた。
残念ながら俺は人の為に動けるようなお人良しでは無い。


「ついでにこの際だから言わせてもらうけど、友達は選んだ方がいいぞ。というかあれは友達ですらない」
「…わかってるよ」


「でも、うち一人は嫌だよ。どうしてボッチ君は一人で平気なの?」
「俺だって好きでボッチやってるわけじゃねーよ!ただ、嫌な奴らとつるむより1人の方が良かっただけだ」

しかし、こいつはギャルかと思えば真面目だし、変な奴だと思っていたが、まさかいじめられてるとはな…。彼女は彼女なりに色々抱えているんだな。見た目では判らんもんだ。

「なんにせよ良く考えたほうがいいぞ。このままでいくのか、新しい友達を見つけるのか、ボッチになるのか」
「…これまで友達作なかったのに急に友達なんて作れないよ。うちだって、どうにかしたいけど、どうしていいかわかんないよぉ」

神代はそれきり袖口で目元を拭いながら完全にすすり泣きを始めてしまう。

…やってしまった。
部外者がこんな偉そうに言うことでは無かった…。
「…よく考えてくれ。もしボッチになった時でもボッチ仲間として話くらいは聞いてやるし、俺が出来る範囲なら助けてやるから」

いたたまれなくなった俺はそういって逃げるように保健室を後にした。

――――――――――

…その後、神代は体調不良で学校を休んだらしく、俺は神代と顔を合わせることなく一週間の委員会活動を終えた。
なので、俺は彼女がその後どうしたのかは知らない。
気にはなるが友達でもないし、わざわざ聞きに行くような関係でもない。
だから神代と次に顔を合わせるのは2か月後の次の活動になるだろうと思っていたが…
突然神代に呼び出された。


「下駄箱に手紙とか、また古風だな」
「だってうち、村井君の連絡先知らないし…。っていうかなんで携帯こっちに向けてるの?」
「いや、最悪相田達もいて俺を陥れようとしてるかと思って。自衛のために動画投稿サイトにリアルタイム配信を流せるようにしておいた」
「…なにそれ、発想が怖い」

神代は手を後ろに組んで、上目遣いで俺の事をチラチラ見ながらお礼を言ってきた。
「その、この間はありがとね。私も新しい友達を作るまで暫く1人でやってくことに決めました。だから、一応村井君には言っておこうかと思って」

「そっか」
その決断が良かったのかは俺はわからないが、案外彼女はすっきりした顔をしていた。
まあ、どう考えてもこいつと相田達が合うとは思えないしな。

「でね、村井君一つお願いしたい事があって…」
…この流れ。嫌な予感しかしないぞ。

「実はね?副委員長の子が美咲ちゃんのグループの子で、うちがグループ抜けてから委員会の打ち合わせに来なくなっちゃたんだ」
「…うん?」
なんか予想していた話の方向とは違う。

「お願い!彼女の代わりに副委員長やってくれないかな?うち一人だと流石に回らなくて。もう村井君くらいしか頼れる人がいなくて!」
そういって頭を下げてくる神代。

「いや、嫌だよ!俺の出来る範囲を超えてるよ!」
馬鹿野郎。絶対嫌だと思ってた仕事をなんでやらないといけないんだ!

「いや、そこを何とか!お願い。ボッチの後輩としてお願い!」
「この話、ボッチの話全然関係ないじゃん!?」

そもそもお願い事が仕事に関する事とかどんだけ真面目なんだよ。

「関係あるよ!もう先生にも言っっちゃたし!」
「お前、何してくれてんの!?」

強硬に突っぱねることもできたが、中途半端に関わってしまったことで微妙に責任感を感じてしまい、最終的に神代の泣き脅しに負けてしぶしぶ承諾してしまった。俺はなんて馬鹿なんだ…。

承諾すると神代は、ぱぁと花が咲くような笑顔を向けた。
「ありがとう!よろしくね。村井君!」

…あ、ボッチ君呼びじゃなくなってるんだな。
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