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第2章
64 解呪防壁
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リフィストに抱えられてレルアの攻撃を躱しつつ、素因の流れが安定する……神からの接続がより不安定になる瞬間を待つ。
だが元が魔力暴走並だ。素因の流れが安定したとしてもそれは文字通り「一瞬」だろうし、ちょっと緊張しすぎて手汗がヤバいことになってる。
「あれだけの魔術を連発していれば必ず魔力切れを起こす。魔力は即回復されるゆえ無意味に見えるであろうが、まさにそこが狙い目ぞ」
その「神が魔力を供給することに力を割く瞬間」を狙うのがきっと成功しやすい、とリフィストは言った。だがあっちの魔力が尽きる前にリフィストが疲れて飛べなくなるんじゃ……
「我は大丈夫だとも。それより童、機会は恐らく一度きりぞ。くれぐれも外すことのないようにの? 魔術の出力調整が始まったら終わりゆえな」
「プレッシャーかけないでくれよ、俺そういうの苦手なんだから……」
真っ白い空間の中を、光って見える鈍色の球やら、反対に光を一切反射しなそうな鎖やら、当たったらワンパンで死にそうなモノが大量に飛んでくる。
そいつらが落ちた部分はもれなく亀裂が走ってるし、所々泥みたいなモノも噴き出したりしてる。怖すぎる。
「残存魔力量減少。対古代種魔術兵装を簡易化――防御結界」
レルアが立ち止まり、守りに入った。つまり今。
「いくぞリフィスト! ――遅延!」
突き出した手のひらから、レルアに向かって真っ直ぐに遅延の波が進む。
「風の精霊よ、我に従え。彼の者を切り裂け――風刃!」
俺の遅延に合わせて飛んでいく風の刃。それはレルアのうなじに当たって――
消滅した。
なんでだ。レルアは防御結界しか張ってなかったはずだろ。対魔術は魔術障壁のはず。
「解呪防壁の発動、下級天使による魔術に対する有効性を確認」
レルアはうなじに触れると、変わらず感情のない声で言った。遅延が効いてないのなんて言うまでもない。なんすか解呪防壁って。チートっすか。
「……我の力不足ぞ。すまぬな、童」
「いやいやいやいや諦めるにはまだ早いでしょうよ? 俺死にたくねーっすよ?」
「一応眼の奥にも神からの接続線が繋がっておる。だが、我も童も最早あの天使に近付くことすら叶わん」
「そんなこと――」
やってみないとわからない、と言いかけて考える。
多分、解呪防壁は普通に剣で切りかかるとかは無効化できないだろう。名前もディスペラーだし。
だが、それがなんだ。俺が剣で切りかかって敵うはずがあるか? レルアよりも階級が低いリフィストがやっても同じだ。最初の一瞬で失敗した時点で、割と詰んでる。
「魔力回復、出力調整完了。対個体名リフィスト用魔術兵装を展開」
うわピンポイントで設定してきた。もうダメだ。
いや、ピンポイント? 俺は?
「何故」
「うぉおう!?」
「何故、その叛逆者を庇うのですか、マスター」
相変わらず目は虚ろだし声のトーンもそのままだが、話しかけてくれたってことはもしや意識戻ったのか?
「叛逆者を庇わないのであれば、私にマスターを攻撃する理由はありません」
なるほど。確かに知り合ったばかりのリフィストのために命張る必要はない。可哀想ではあるが、見捨ててレルアが元に戻るなら……
「いや、戻らぬ。かつて神に干渉されて人形同然になった仲間を、我は何人も知っておる。むしろ逆よ。早く接続を切らねば、元の存在――中身は長い時間をかけて完全に消滅する」
ってことは今喋ってるこいつはレルアじゃないってことか? 神の演技?
「マスター、叛逆者に騙されてはなりません」
「全く忌々しい神よの……それほど我を殺したいなら! そちが出てきて直接殺さんか!」
「――それは大きな歪みを生むのだ、下級」
ああ。レルアじゃないな。
「悪い、レルア。俺は今のレルアを信じられない」
「残念だよ、彩人君――交渉決裂。個体名・水嶋彩人を敵対存在と認識。補欠勇者の書への介入を開始。神域魔術の術式構築を開始」
そうですか、とすら言ってくれない。隠さないなら言う必要もない。やっぱこうなっちまったか。ただ操られてるだけにしろ、接続を切らないとどうにもならないってことが証明されたな。
てか台詞を聞くに、多分俺も殺るモードに入ったわこれ。
(リフィスト!)
(わざわざ呼ばなくても聞こえておる。それで、何か策でもあるのかえ?)
(レルアが巨大魔術とやらを使うタイミングで置換を使う。空間と入れ換えるのは中々難しいが、それでお前をレルアの前に移動させようと思う)
転移制限がなければパパっと転移で飛ばせるのに。いやそれはそれで集中しないとキツいけど。
(隙さえあれば、とな……悪くないの。飛ぶぞよ、捕まるがよい!)
「神力によりて、汝が四肢を縛らん――縛縄」
遂に神による魔術だってことも隠さなくなってきたな。ラスボスかよ。
「あれは恐らく対・我に特化している。捕まったら終わりだ、童!」
縄が飛んでくる速度もかなりのものだが、リフィストも負けてはいない。これなら。
「――置換!」
「!」
レルアの方に空間を繋げて魔術をそっちに向かわせる。白縄はレルアのうなじ直前で動きを止め、地面に落ちた。
最強の矛と最強の盾ではどうやら盾の方が強かったらしいな。ちょっと残念。いやここで首締められても困るけど。
「神力によりて、汝が胴を封ぜん――封岩」
次は大岩か。岩っていうより大地だが。置換で送り返すにはちょっとデカすぎる。
(リフィスト、俺が遅くするから破壊を頼む!)
(任せよ)
「――遅延!」
「――素因爆発!」
派手な音と光と共に爆散。神力とかいう割にはなんとかなるもんだな。多分こいつらは前菜レベルなんだろうが……
「神力によりて、汝が存在を滅せん――滅槍」
天井が金色に光る槍に埋め尽くされた。いやここは圧空とかでなんとかなるレベルの魔術出してくる場面だろ。なんだこれ。ちょっと待て。
「――起動せよ!」
加速の魔術結晶を使った。もうあとはリフィストに全力で逃げ切ってもらうしかない。幸い一気に全部降ってくることはないみたいだし。
(中々無理を言うのう)
無理を承知でお頼み申す。てか出来なかったら死ぬ。普通に死ぬ。
(飛ばすぞよ)
あちこちから降り注ぐ槍を某頭文字にも引けを取らないドラテクで強引に回避していく。飛んでるからドラテクって言うのかは知らんが。
「――滅槍」
おっと二発目は聞いてねえ。前も後ろも天も地も、360度槍まみれ。反則だろ。
(さてどうする童、これでは加速でも逃げきれぬ)
今はなんとか躱しきれてるが、このままだと……
「遅――!?」
くそ、間に合わねえ。こんなのってありかよ――
「――我、其の魔術の解呪を望む!」
……金の槍の動きが止まった。そして俺に近いものから消滅していく。
どうやら俺はまだ生きてるらしい。
「お待たせ、マスターさん」
「た……助かったぜ、ラビ」
空間を裂いて現れたのは、ラビ。そういやこの空間を作ったのラビだった。今度ばかりは死んだと思った……って、今日何回死んだと思ったかわからん。
未だに心臓もバックバクだが、かつて一度レルアに勝ってるラビが来てくれたんだ。なんとかなる気がしてきたぞ。
だが元が魔力暴走並だ。素因の流れが安定したとしてもそれは文字通り「一瞬」だろうし、ちょっと緊張しすぎて手汗がヤバいことになってる。
「あれだけの魔術を連発していれば必ず魔力切れを起こす。魔力は即回復されるゆえ無意味に見えるであろうが、まさにそこが狙い目ぞ」
その「神が魔力を供給することに力を割く瞬間」を狙うのがきっと成功しやすい、とリフィストは言った。だがあっちの魔力が尽きる前にリフィストが疲れて飛べなくなるんじゃ……
「我は大丈夫だとも。それより童、機会は恐らく一度きりぞ。くれぐれも外すことのないようにの? 魔術の出力調整が始まったら終わりゆえな」
「プレッシャーかけないでくれよ、俺そういうの苦手なんだから……」
真っ白い空間の中を、光って見える鈍色の球やら、反対に光を一切反射しなそうな鎖やら、当たったらワンパンで死にそうなモノが大量に飛んでくる。
そいつらが落ちた部分はもれなく亀裂が走ってるし、所々泥みたいなモノも噴き出したりしてる。怖すぎる。
「残存魔力量減少。対古代種魔術兵装を簡易化――防御結界」
レルアが立ち止まり、守りに入った。つまり今。
「いくぞリフィスト! ――遅延!」
突き出した手のひらから、レルアに向かって真っ直ぐに遅延の波が進む。
「風の精霊よ、我に従え。彼の者を切り裂け――風刃!」
俺の遅延に合わせて飛んでいく風の刃。それはレルアのうなじに当たって――
消滅した。
なんでだ。レルアは防御結界しか張ってなかったはずだろ。対魔術は魔術障壁のはず。
「解呪防壁の発動、下級天使による魔術に対する有効性を確認」
レルアはうなじに触れると、変わらず感情のない声で言った。遅延が効いてないのなんて言うまでもない。なんすか解呪防壁って。チートっすか。
「……我の力不足ぞ。すまぬな、童」
「いやいやいやいや諦めるにはまだ早いでしょうよ? 俺死にたくねーっすよ?」
「一応眼の奥にも神からの接続線が繋がっておる。だが、我も童も最早あの天使に近付くことすら叶わん」
「そんなこと――」
やってみないとわからない、と言いかけて考える。
多分、解呪防壁は普通に剣で切りかかるとかは無効化できないだろう。名前もディスペラーだし。
だが、それがなんだ。俺が剣で切りかかって敵うはずがあるか? レルアよりも階級が低いリフィストがやっても同じだ。最初の一瞬で失敗した時点で、割と詰んでる。
「魔力回復、出力調整完了。対個体名リフィスト用魔術兵装を展開」
うわピンポイントで設定してきた。もうダメだ。
いや、ピンポイント? 俺は?
「何故」
「うぉおう!?」
「何故、その叛逆者を庇うのですか、マスター」
相変わらず目は虚ろだし声のトーンもそのままだが、話しかけてくれたってことはもしや意識戻ったのか?
「叛逆者を庇わないのであれば、私にマスターを攻撃する理由はありません」
なるほど。確かに知り合ったばかりのリフィストのために命張る必要はない。可哀想ではあるが、見捨ててレルアが元に戻るなら……
「いや、戻らぬ。かつて神に干渉されて人形同然になった仲間を、我は何人も知っておる。むしろ逆よ。早く接続を切らねば、元の存在――中身は長い時間をかけて完全に消滅する」
ってことは今喋ってるこいつはレルアじゃないってことか? 神の演技?
「マスター、叛逆者に騙されてはなりません」
「全く忌々しい神よの……それほど我を殺したいなら! そちが出てきて直接殺さんか!」
「――それは大きな歪みを生むのだ、下級」
ああ。レルアじゃないな。
「悪い、レルア。俺は今のレルアを信じられない」
「残念だよ、彩人君――交渉決裂。個体名・水嶋彩人を敵対存在と認識。補欠勇者の書への介入を開始。神域魔術の術式構築を開始」
そうですか、とすら言ってくれない。隠さないなら言う必要もない。やっぱこうなっちまったか。ただ操られてるだけにしろ、接続を切らないとどうにもならないってことが証明されたな。
てか台詞を聞くに、多分俺も殺るモードに入ったわこれ。
(リフィスト!)
(わざわざ呼ばなくても聞こえておる。それで、何か策でもあるのかえ?)
(レルアが巨大魔術とやらを使うタイミングで置換を使う。空間と入れ換えるのは中々難しいが、それでお前をレルアの前に移動させようと思う)
転移制限がなければパパっと転移で飛ばせるのに。いやそれはそれで集中しないとキツいけど。
(隙さえあれば、とな……悪くないの。飛ぶぞよ、捕まるがよい!)
「神力によりて、汝が四肢を縛らん――縛縄」
遂に神による魔術だってことも隠さなくなってきたな。ラスボスかよ。
「あれは恐らく対・我に特化している。捕まったら終わりだ、童!」
縄が飛んでくる速度もかなりのものだが、リフィストも負けてはいない。これなら。
「――置換!」
「!」
レルアの方に空間を繋げて魔術をそっちに向かわせる。白縄はレルアのうなじ直前で動きを止め、地面に落ちた。
最強の矛と最強の盾ではどうやら盾の方が強かったらしいな。ちょっと残念。いやここで首締められても困るけど。
「神力によりて、汝が胴を封ぜん――封岩」
次は大岩か。岩っていうより大地だが。置換で送り返すにはちょっとデカすぎる。
(リフィスト、俺が遅くするから破壊を頼む!)
(任せよ)
「――遅延!」
「――素因爆発!」
派手な音と光と共に爆散。神力とかいう割にはなんとかなるもんだな。多分こいつらは前菜レベルなんだろうが……
「神力によりて、汝が存在を滅せん――滅槍」
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「――滅槍」
おっと二発目は聞いてねえ。前も後ろも天も地も、360度槍まみれ。反則だろ。
(さてどうする童、これでは加速でも逃げきれぬ)
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「遅――!?」
くそ、間に合わねえ。こんなのってありかよ――
「――我、其の魔術の解呪を望む!」
……金の槍の動きが止まった。そして俺に近いものから消滅していく。
どうやら俺はまだ生きてるらしい。
「お待たせ、マスターさん」
「た……助かったぜ、ラビ」
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