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第7章
190 エフィ
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警戒アナウンスは聞こえてない。あの台詞を吐いて迷宮外に逃げたってことはないだろうし、もしそうだとしてもシステム側の結界は超えてきたってわけだ。さてどこに出た?
「およ? お客さんですかぁ?」
教授の姿があるのはエフィの場所、つまり地下80階。今の迷宮最終階だ。ここより先はデフォルトの洞窟然とした場所が広がってるだけ。
教授が自分でここを選んだわけではないらしい。あの怪訝そうな表情を見れば分かる。何らかの妨害が入ったってことだろ。
「早速結界の効果が出ましたな」
「おおアルデム、お前のお陰だったか」
「実はまだ範囲を広げている途中でしてな。一応は上手くいったようで何よりですじゃ」
アルデム曰く、結界ごとに反映速度が違って手間取ったらしい。最近階層によって追加で色々やったりしてるからな。
アルデムの結界強化が間に合ったお陰で、教授は雪山で魔術を使えなかった。それでも転移を実行できたのは、教授が陣を描くことによって波長をズラしたからだ。
まあ波長がズレたからって結界の意味が完全になくなるわけじゃなく、術の効果を弱めることで地下80階で止めてくれたんだとか。
「ふぅむ、失敗か。余程腕のいい術師がいると見える」
「不正入場ならお帰りいただきますよぅ!」
「おおっと――!?」
教授はエフィに向かって腕を振り上げたが、結界の効果で術式は霧散した。
「……ふぅ、いい打撃だ。臓器をいくつかやられた気がするね」
「まだ立ってられるなんて凄いですねぇ! 次いきますよぅ!」
「――っ!」
今度は横に躱そうとしたが、まあエフィの速度にノーバフでついていけるわけがない。
「やれやれ恐ろしい子だ。私でなければ肉が弾け飛んでとんでもないことになっているよ。生身の人間に使っていい技じゃあない」
「問答無用! さあ次ですよぅ――」
「そろそろ私の番であるべきだ。解放」
教授が取り出した紙が光り、そして消えた。
詳細は分からないが、多分これは魔術だ。解放って聞いたことあるし。……いや、これに関しては術式名が同じだけって可能性もあるが、僅かに魔力を感じた。
問題は、素因の揺らぎが広がっただけで何も起きてないってことだ。エフィもそれを警戒しているのか構えた姿勢のまま動かない。
(アルデム)
(こちらでも見とりました。新しくあの魔力波も追加しておきますぞ)
(話が早くて助かる)
解析とかはアルデムに任せよう。あいつが今更普通の魔術を使うとは思えないし、あの紙に何か秘密があるはずだ。
「おや、休憩か。私にとっても好都合だ。丁度傷を癒したいと考えていてね……」
「っ、そうはさせませんよぅ!」
痺れを切らしたエフィが遂に殴りかかった。教授は避ける素振りも見せない――案の定、近くまで寄った途端に大爆発が起こった。花畑がめちゃくちゃだ。まあこれも勝手に再生するからいいんだが。
「げほ、げほっ、卑怯ですよぅ!」
「卑怯だなんて失礼な。術を封じる君たちも大概だ」
「はん、そうですかぁ。なら私も飛び道具を使いますよぅ。神力によりて――」
エフィの傍の素因がザワ、と騒いだ。だがそれは一瞬のことで、すぐにそのざわめきは収まる。
「ふむ、警戒はしていたが失敗か。魔力でも足りなかったかな」
「そんなわけ……これはエフィの得意魔術なんですよぅ!?」
「でもどうやら使えないらしい。ならばまた私の番だね。解放」
教授の背後にピンポン玉程度のサイズの火球が無数に発生した。それらが一斉にエフィに襲いかかる。
「うぐ、熱い、やめろですぅ!」
「君のような幼子を痛め付けるのは趣味ではないが、ここは戦場だ。私も仲間を失っているし、今更引くに引けないだろう」
後半は明らかな嘘だ。絶対そんな情湧いてないだろ。テキトーなこと言いやがって。
「でも、エフィには他にも遠距離攻撃があるんですよぅ。たぁ!」
エフィの手のひらから、球体の何か――はど〇だんみたいなのが出た。結構デカい。ビーチボールくらいはある。
「解放。これだけで問題なさそうだね」
球は教授が出した土壁っぽい壁に当たって消滅した、が。
「舐めんなですぅ!」
その後ろから突っ込んできたエフィの拳に砕かれる。教授に焦る様子は見られないし、まだ何かあるのか。
「かかったね」
拳が届くまであと数メートルというところで、エフィは黒い鳥かごのような檻に閉じ込められた。
慣性の法則的なアレで檻ごと教授の方に吹っ飛んでくかと思ったが、別にそんなことはなく、派手な音を立ててその場に止まる。
「んな! 何すんですかぁ!」
「後はそうだな……この場で書き込んでしまおう」
檻の中のエフィには目もくれず、教授は紙に何やら書き込み始めた。エフィが結構暴れ回ってるにも関わらず、檻には傷一つ付いていない。
「大体こんなもので……いや、もっと簡単にできるかな。範囲を狭めてしまえば……」
「えい、やあ! なんで壊れないんですかぁ、この! この!」
「記術。もう一枚書いておこう。きっと必要だからね」
檻の内外での温度差が凄い。あんだけガッシャンガッシャンやられてれば多少は気が散りそうなもんだが、教授は眉一つ動かさずに二枚目の紙も書き上げた。
「――記術、これで良し。随分と待たせてしまったね。何か言っておきたいことでもあるかな」
教授は折れた柱に腰掛けた。どっからどう見ても隙だらけだ。そんだけあの檻に自信があるのか。
「はぁ、はぁ、ここから出せですぅ!」
「構わないが、出たところで何も変わらないよ。どうせそこから動けやしないんだ――」
そう言うと、教授は指を鳴らして檻を消してみせた。
「――解放」
マジかよと思ったのも束の間、さっきの紙で術式を起動。今度も何も起こってないように見えるが……あれほど暴れてたエフィが立ち止まってるとこを見るに、正しく発動したんだろう。
「素直なのは大変よろしいが、単純だというのは大きな弱点だ。次回までに直してきなさい」
「リ……リフィスト様ぁ……」
半泣きのエフィが宙に浮く。続いて、体が端から崩れ始めた。文字通りバラバラになっていく。これ見たことあるぞ。
「では、さようなら」
エフィの体は指先くらいのサイズまで圧縮され、そして、消えた。
「およ? お客さんですかぁ?」
教授の姿があるのはエフィの場所、つまり地下80階。今の迷宮最終階だ。ここより先はデフォルトの洞窟然とした場所が広がってるだけ。
教授が自分でここを選んだわけではないらしい。あの怪訝そうな表情を見れば分かる。何らかの妨害が入ったってことだろ。
「早速結界の効果が出ましたな」
「おおアルデム、お前のお陰だったか」
「実はまだ範囲を広げている途中でしてな。一応は上手くいったようで何よりですじゃ」
アルデム曰く、結界ごとに反映速度が違って手間取ったらしい。最近階層によって追加で色々やったりしてるからな。
アルデムの結界強化が間に合ったお陰で、教授は雪山で魔術を使えなかった。それでも転移を実行できたのは、教授が陣を描くことによって波長をズラしたからだ。
まあ波長がズレたからって結界の意味が完全になくなるわけじゃなく、術の効果を弱めることで地下80階で止めてくれたんだとか。
「ふぅむ、失敗か。余程腕のいい術師がいると見える」
「不正入場ならお帰りいただきますよぅ!」
「おおっと――!?」
教授はエフィに向かって腕を振り上げたが、結界の効果で術式は霧散した。
「……ふぅ、いい打撃だ。臓器をいくつかやられた気がするね」
「まだ立ってられるなんて凄いですねぇ! 次いきますよぅ!」
「――っ!」
今度は横に躱そうとしたが、まあエフィの速度にノーバフでついていけるわけがない。
「やれやれ恐ろしい子だ。私でなければ肉が弾け飛んでとんでもないことになっているよ。生身の人間に使っていい技じゃあない」
「問答無用! さあ次ですよぅ――」
「そろそろ私の番であるべきだ。解放」
教授が取り出した紙が光り、そして消えた。
詳細は分からないが、多分これは魔術だ。解放って聞いたことあるし。……いや、これに関しては術式名が同じだけって可能性もあるが、僅かに魔力を感じた。
問題は、素因の揺らぎが広がっただけで何も起きてないってことだ。エフィもそれを警戒しているのか構えた姿勢のまま動かない。
(アルデム)
(こちらでも見とりました。新しくあの魔力波も追加しておきますぞ)
(話が早くて助かる)
解析とかはアルデムに任せよう。あいつが今更普通の魔術を使うとは思えないし、あの紙に何か秘密があるはずだ。
「おや、休憩か。私にとっても好都合だ。丁度傷を癒したいと考えていてね……」
「っ、そうはさせませんよぅ!」
痺れを切らしたエフィが遂に殴りかかった。教授は避ける素振りも見せない――案の定、近くまで寄った途端に大爆発が起こった。花畑がめちゃくちゃだ。まあこれも勝手に再生するからいいんだが。
「げほ、げほっ、卑怯ですよぅ!」
「卑怯だなんて失礼な。術を封じる君たちも大概だ」
「はん、そうですかぁ。なら私も飛び道具を使いますよぅ。神力によりて――」
エフィの傍の素因がザワ、と騒いだ。だがそれは一瞬のことで、すぐにそのざわめきは収まる。
「ふむ、警戒はしていたが失敗か。魔力でも足りなかったかな」
「そんなわけ……これはエフィの得意魔術なんですよぅ!?」
「でもどうやら使えないらしい。ならばまた私の番だね。解放」
教授の背後にピンポン玉程度のサイズの火球が無数に発生した。それらが一斉にエフィに襲いかかる。
「うぐ、熱い、やめろですぅ!」
「君のような幼子を痛め付けるのは趣味ではないが、ここは戦場だ。私も仲間を失っているし、今更引くに引けないだろう」
後半は明らかな嘘だ。絶対そんな情湧いてないだろ。テキトーなこと言いやがって。
「でも、エフィには他にも遠距離攻撃があるんですよぅ。たぁ!」
エフィの手のひらから、球体の何か――はど〇だんみたいなのが出た。結構デカい。ビーチボールくらいはある。
「解放。これだけで問題なさそうだね」
球は教授が出した土壁っぽい壁に当たって消滅した、が。
「舐めんなですぅ!」
その後ろから突っ込んできたエフィの拳に砕かれる。教授に焦る様子は見られないし、まだ何かあるのか。
「かかったね」
拳が届くまであと数メートルというところで、エフィは黒い鳥かごのような檻に閉じ込められた。
慣性の法則的なアレで檻ごと教授の方に吹っ飛んでくかと思ったが、別にそんなことはなく、派手な音を立ててその場に止まる。
「んな! 何すんですかぁ!」
「後はそうだな……この場で書き込んでしまおう」
檻の中のエフィには目もくれず、教授は紙に何やら書き込み始めた。エフィが結構暴れ回ってるにも関わらず、檻には傷一つ付いていない。
「大体こんなもので……いや、もっと簡単にできるかな。範囲を狭めてしまえば……」
「えい、やあ! なんで壊れないんですかぁ、この! この!」
「記術。もう一枚書いておこう。きっと必要だからね」
檻の内外での温度差が凄い。あんだけガッシャンガッシャンやられてれば多少は気が散りそうなもんだが、教授は眉一つ動かさずに二枚目の紙も書き上げた。
「――記術、これで良し。随分と待たせてしまったね。何か言っておきたいことでもあるかな」
教授は折れた柱に腰掛けた。どっからどう見ても隙だらけだ。そんだけあの檻に自信があるのか。
「はぁ、はぁ、ここから出せですぅ!」
「構わないが、出たところで何も変わらないよ。どうせそこから動けやしないんだ――」
そう言うと、教授は指を鳴らして檻を消してみせた。
「――解放」
マジかよと思ったのも束の間、さっきの紙で術式を起動。今度も何も起こってないように見えるが……あれほど暴れてたエフィが立ち止まってるとこを見るに、正しく発動したんだろう。
「素直なのは大変よろしいが、単純だというのは大きな弱点だ。次回までに直してきなさい」
「リ……リフィスト様ぁ……」
半泣きのエフィが宙に浮く。続いて、体が端から崩れ始めた。文字通りバラバラになっていく。これ見たことあるぞ。
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