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第8章
210 危機
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「二人とも、少し止まって」
「え?」
「どしたの、マコト?」
地下37階に足を踏み入れた瞬間、マコトが先頭の二人に静止をかける。なんだ? まさか今の時点で気付いたってことはないだろ。そういう能力があるとは思えない。ただのファスケーヴにビビってたくらいだしな。
「ううん、気のせいだったみたいだ。ごめん」
「そ? ならいいんだけど――」
「――解析!」
「わわ!?」
「!」
解析が放たれたのは、丁度リフェアの隠れた天井裏部分。こいつ見えてやがる。なんでだ。
「……何かいるのか?」
「うん。影の一族、個体名はリフェア。解析でも看破できない強力な隠蔽を使ってる」
そこまで分かるのかよ。流石は勇者用スキルだな。
「敵か? 迷宮側の奴なのか?」
「どうなんだろう、所属までは見えなかった。他の魔物みたいに仕掛けてくる様子はないし、敵意があるようにも思えないけど……リフェアさん、聞こえますか?」
沈黙。どうする、リフェアと念話でやり取りしたいが、それだけでも微妙に素因の動きが発生するって魔術講義で習ったからな。
リフェア側から飛ばしてこないのも、多分それが理由だろう。色々バラすのは相手の動きが決まってからでも遅くない。
「返事はなし、かあ……」
「ここにいても仕方ない、放置して先に進むか?」
「いや、殺していった方が安全だ」
真顔で言い切るマコト。急に過激な意見だな。いや確かに迷宮探索者のマインドとしては正しいというか、別に間違ったことは言ってないんだが、驚いた。普通人殺しにはもっと抵抗あるもんじゃないか? あ、それとも影の一族がほとんど人と変わらないってのを知らないのか? 魔物みたいな感じだと思ってるなら納得できなくもない。
かーっ、怯えるリフェアが目に浮かぶようだぜ。かわいそうなことしやがって。
「殺すのか? ちょっと乱暴すぎる気がするけどな」
「そうかな。それでリスクが減るなら十分だと思うけど。シエルはどう思う?」
「ぼっ、ボク? ええと……あんまり気は進まない……かなあ……」
そうだその調子だ。こんだけ留まってたら天使については分かってるだろうし、後はさっさとどっか行ってくれればそれでいい。
「敵じゃないとしても、何らかの理由で死ねなくなってるのかもしれない。地上に戻れないタイプの罠とか、そういうのがあってもおかしくない」
「……なんでそんなに殺したいんだ?」
「今の僕の解析で見破れない隠蔽は脅威になり得るからだ。術者本人かは知らないけど、気付けた時点で始末しておいた方がいい」
リフェアに何か恨みでもあるのかって勢いだな。こっち来る前に勇者と争ったみたいな話は聞いてないが……
「でもでも、話し合ったら仲間になってくれたりするかもよ?」
「そもそも話し合えるのか、っていう問題はあるけどね。……でも、シエルがそう言うなら少し呼び掛けを続けてみよう。余裕があれば魔術的な干渉も。それでもダメなら、僕がやる」
「う、うん。そうしてみよ!」
よし、今すぐ戦闘になるってことはなさそうだ。リフェア自身も強いし影の洪水みたいな大技もあるが、勇者と天使にどこまで通用するか分からない。少なくとも一人で当たるべきじゃない。
魔術的な干渉とかいうのも怖いな。まあ解析で剥がされなかった隠蔽がある。今はまだ大丈夫だろう。
さてどうするか。依然念話は使えない。無理やり目くらましして救出、ってのが手っ取り早いか?
レルアがそういうの得意だったはずだ。今は倉庫の掃除をしてるんだったよな。
「レルア、いるか?」
どことなく埃っぽい感じがする奥の部屋。扉は開けっ放しだったが、中に人の気配はなかった。
「入るぞー」
案の定二人の姿はない。……これ多分拡張倉庫の方に行ったな。向こうは武器とかも並べてあるしマジで広いんだよな。
(あー、レルア?)
(はい、マスター)
念話はなんの問題もなく繋がった。実は若干不安だったりした。
(今どこにいる?)
(拡張倉庫東に。まず大きなものから片付けてしまおうと考えまして……)
(あー、了解。それならいいんだ。引き続き頑張ってくれ)
(はい。ありがとうございます)
拡張倉庫、広いのはいいんだが移動に微妙に時間がかかる。転移門の設置制限のせいだ。
え? 複数階に分けろって? ……ハイホント仰る通りです。でも荷物の移動が面倒臭えんだ。実態化した武器をデータに戻してストレージに収納できれば話は早いんだが、生憎そういうシステムは用意されてなかった。上の武器屋とか宝箱とかへの転送は自動化されてるんだけどな。これを可能にしようと思うとまず転移の例外設定から入るだろ、その作業量を考えるだけで……
ってこんな話をしてる場合じゃない。まあ広いとは言っても現実的なサイズではあるんだ。レルアとリフィストなら東からでも数分で戻ってこれるレベル。ただ今回はそれだと遅すぎる。
拡張倉庫のことは頭にあったが、まさか本当に気付かれるとは思ってなかったしな。普通に連絡があって戻ってくる分には問題ないし、十分「その辺」に含まれる範囲ではある。
……こうなったら俺が行くしかないか。パっと行ってパっと帰ってくるだけだ。
そうと決まれば持ち物準備。隠蔽の魔術結晶は切らしてたな。ちなみに店売りがなくてレルアの手作りだ。今度補充を頼んどこう。
最低限必要なのは白煙、閃光、あとは……麻痺も持ってっとくか。最悪全部投げて、罠だったってことにすればいい。
音を立てずに行きたいし、剣は置いてこう。そもそも俺は魔術メインだからな。つーか間違っても戦闘にはなりたくない。勇者二人と天使と謎の魔術師姉妹だぞ。俺とリフェアだけじゃ人数が足りなすぎる。
てかアレだ、普通に迷宮探索に来てるってことで見逃してもらえるんじゃなかろうか。俺は一般探索者。平和が一番。愛と平和。
さーて、いざ転移門の前に立ってみるとやけに荷物が少ない気がする。まあ魔術師ならこんなもんなのか? そういうことにしとこう。待ってろリフェア、今助けに行くぜ。
「え?」
「どしたの、マコト?」
地下37階に足を踏み入れた瞬間、マコトが先頭の二人に静止をかける。なんだ? まさか今の時点で気付いたってことはないだろ。そういう能力があるとは思えない。ただのファスケーヴにビビってたくらいだしな。
「ううん、気のせいだったみたいだ。ごめん」
「そ? ならいいんだけど――」
「――解析!」
「わわ!?」
「!」
解析が放たれたのは、丁度リフェアの隠れた天井裏部分。こいつ見えてやがる。なんでだ。
「……何かいるのか?」
「うん。影の一族、個体名はリフェア。解析でも看破できない強力な隠蔽を使ってる」
そこまで分かるのかよ。流石は勇者用スキルだな。
「敵か? 迷宮側の奴なのか?」
「どうなんだろう、所属までは見えなかった。他の魔物みたいに仕掛けてくる様子はないし、敵意があるようにも思えないけど……リフェアさん、聞こえますか?」
沈黙。どうする、リフェアと念話でやり取りしたいが、それだけでも微妙に素因の動きが発生するって魔術講義で習ったからな。
リフェア側から飛ばしてこないのも、多分それが理由だろう。色々バラすのは相手の動きが決まってからでも遅くない。
「返事はなし、かあ……」
「ここにいても仕方ない、放置して先に進むか?」
「いや、殺していった方が安全だ」
真顔で言い切るマコト。急に過激な意見だな。いや確かに迷宮探索者のマインドとしては正しいというか、別に間違ったことは言ってないんだが、驚いた。普通人殺しにはもっと抵抗あるもんじゃないか? あ、それとも影の一族がほとんど人と変わらないってのを知らないのか? 魔物みたいな感じだと思ってるなら納得できなくもない。
かーっ、怯えるリフェアが目に浮かぶようだぜ。かわいそうなことしやがって。
「殺すのか? ちょっと乱暴すぎる気がするけどな」
「そうかな。それでリスクが減るなら十分だと思うけど。シエルはどう思う?」
「ぼっ、ボク? ええと……あんまり気は進まない……かなあ……」
そうだその調子だ。こんだけ留まってたら天使については分かってるだろうし、後はさっさとどっか行ってくれればそれでいい。
「敵じゃないとしても、何らかの理由で死ねなくなってるのかもしれない。地上に戻れないタイプの罠とか、そういうのがあってもおかしくない」
「……なんでそんなに殺したいんだ?」
「今の僕の解析で見破れない隠蔽は脅威になり得るからだ。術者本人かは知らないけど、気付けた時点で始末しておいた方がいい」
リフェアに何か恨みでもあるのかって勢いだな。こっち来る前に勇者と争ったみたいな話は聞いてないが……
「でもでも、話し合ったら仲間になってくれたりするかもよ?」
「そもそも話し合えるのか、っていう問題はあるけどね。……でも、シエルがそう言うなら少し呼び掛けを続けてみよう。余裕があれば魔術的な干渉も。それでもダメなら、僕がやる」
「う、うん。そうしてみよ!」
よし、今すぐ戦闘になるってことはなさそうだ。リフェア自身も強いし影の洪水みたいな大技もあるが、勇者と天使にどこまで通用するか分からない。少なくとも一人で当たるべきじゃない。
魔術的な干渉とかいうのも怖いな。まあ解析で剥がされなかった隠蔽がある。今はまだ大丈夫だろう。
さてどうするか。依然念話は使えない。無理やり目くらましして救出、ってのが手っ取り早いか?
レルアがそういうの得意だったはずだ。今は倉庫の掃除をしてるんだったよな。
「レルア、いるか?」
どことなく埃っぽい感じがする奥の部屋。扉は開けっ放しだったが、中に人の気配はなかった。
「入るぞー」
案の定二人の姿はない。……これ多分拡張倉庫の方に行ったな。向こうは武器とかも並べてあるしマジで広いんだよな。
(あー、レルア?)
(はい、マスター)
念話はなんの問題もなく繋がった。実は若干不安だったりした。
(今どこにいる?)
(拡張倉庫東に。まず大きなものから片付けてしまおうと考えまして……)
(あー、了解。それならいいんだ。引き続き頑張ってくれ)
(はい。ありがとうございます)
拡張倉庫、広いのはいいんだが移動に微妙に時間がかかる。転移門の設置制限のせいだ。
え? 複数階に分けろって? ……ハイホント仰る通りです。でも荷物の移動が面倒臭えんだ。実態化した武器をデータに戻してストレージに収納できれば話は早いんだが、生憎そういうシステムは用意されてなかった。上の武器屋とか宝箱とかへの転送は自動化されてるんだけどな。これを可能にしようと思うとまず転移の例外設定から入るだろ、その作業量を考えるだけで……
ってこんな話をしてる場合じゃない。まあ広いとは言っても現実的なサイズではあるんだ。レルアとリフィストなら東からでも数分で戻ってこれるレベル。ただ今回はそれだと遅すぎる。
拡張倉庫のことは頭にあったが、まさか本当に気付かれるとは思ってなかったしな。普通に連絡があって戻ってくる分には問題ないし、十分「その辺」に含まれる範囲ではある。
……こうなったら俺が行くしかないか。パっと行ってパっと帰ってくるだけだ。
そうと決まれば持ち物準備。隠蔽の魔術結晶は切らしてたな。ちなみに店売りがなくてレルアの手作りだ。今度補充を頼んどこう。
最低限必要なのは白煙、閃光、あとは……麻痺も持ってっとくか。最悪全部投げて、罠だったってことにすればいい。
音を立てずに行きたいし、剣は置いてこう。そもそも俺は魔術メインだからな。つーか間違っても戦闘にはなりたくない。勇者二人と天使と謎の魔術師姉妹だぞ。俺とリフェアだけじゃ人数が足りなすぎる。
てかアレだ、普通に迷宮探索に来てるってことで見逃してもらえるんじゃなかろうか。俺は一般探索者。平和が一番。愛と平和。
さーて、いざ転移門の前に立ってみるとやけに荷物が少ない気がする。まあ魔術師ならこんなもんなのか? そういうことにしとこう。待ってろリフェア、今助けに行くぜ。
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