木曽義仲の覇業・私巴は只の側女です。

水源

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嘉応2年(1170年)

信州法度

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 さて三ヶ月も経て手習天神での訓練も成果が出てきたと思われます。

 治安を維持するためにも法度を定めましょう。

 法度とは律令いわゆる法律のことです。

 治安を維持するためには法を定めやってはいけないことと其れを行った場合には罰があることを知らしめなければなりません。

 田畑を耕すよりも食料などを持っているものから奪ったほうが楽ならば、誰も田畑を耕そうとは思わないでしょう。

 まじめに働くものを守りそうでないものを罰するのが法というものです。

 私はさらさと紙へと文を書き始めました。

 ・・・

 以下の法度は木曽松本の地においての平時にて適用されるものとする。

 問注所を松本に作り訴訟事案は問注所にて受付裁判を行うものとする。

(問注所は現在の裁判所)

 侍所を松本に作りその権限においておいて非違巡検を行うものとし村に駐在所を設けるものとする。

(侍所は現在の警察機構、当時における京の治安を守っていた検非違使に近い。

 非違とは不法行為、違法行為。そういった行為が行われていないか巡回調査するということ。)

 火消所を松本に作り火消し集は火消しの方法を各村々に伝えて回るものとする。

 各村において火消し桶を用意すること。

 各家において火消しの水と砂を桶一杯ずつ用意すること。

(火消所は消防団)

 施薬院と療病院を松本に作り病人を診察するものとする。

 施薬院及び療病院の利用にはそれ相応の対価を必要とする。

(施薬院は薬草による治療を行う場所、療病院は温泉を用いた湯治入院施設)

 悲田院を松本に作り貧しい人や孤児を養育するものとする。

 養育されたものは10を過ぎたら手習天神の訓練を参加すること。

(悲田院は孤児院)

 ちなみにこれらの機関の長は今のところ私です。

 優秀な人がいたら権限を譲渡したいとは思いますけど。

 年貢の率は四公六民とする。

 検地は5年に一度とする。

 検地の年に隠田が見つかった場合には、再度の調査により本来納めるべき数量を取り立てる。

 謀反を起こしその後捕らえられたものは一族すべて石打にて死罪とする。

 賊行為、強盗、計画的に家屋や田畑に火付けを行い捕らえられたものは一族すべて石打にて死罪とする。

 意図的に領内に賊行為、強盗、火付けを行ったものを庇い立て滞在させたものは場合は同罪とする。

 地位や財産を奪うために親族を殺害した場合そのものと加担したものを斬首とする。

 酒の席もしくは口論が発展してのち相手を殺害した場合などはその者を斬首とする。

 年貢を納めず横領した場合そのものは斬首とする。

 ただし、天災飢饉などの収められない正当な理由がある場合減免する。

 代官が罪を犯した場合、任命した者場も同罪とする。

 公の場で暴力をふるい他人へ傷害を負わせ訴えられたたものは財産を没収する。

 財産がない場合は額に”傷害”の文字の刺青を入れたうえで剃髪とする。

 文書・花押・印などを偽作成したものは額に”偽造”の刺青を入れたうえで剃髪とする。

 他人に頼まれて作った者も同罪とする。

 嘘の訴えをおこしそれによって田畑を得たものはその者の田畑を没収する。

 道路上で女子供を拉致したものは額に”拉致”と刺青を入れたうえで剃髪とする。

 道路上で女を犯したものは額に”女犯”と刺青を入れたうえで剃髪とする。

 道路上で男を犯したものは額に”男犯”と刺青を入れたうえで剃髪とする。

 道路上で元服、裳着に至らぬ男女を犯したものは額に”子犯”と刺青を入れたうえで剃髪とする。

 理由もなく他人の領地をうばい年貢や財産をとることを禁ずる。

 奪ったものは奪われたものに返納し、行った者の財産を没収する。

 裁判時において暴言、暴力行為に及んだものは敗訴とする

 裁判に負けたものが不正判決と不服を訴えることを禁ずる。

 ただし、賄賂などで実際に偏った判決を行っていた場合裁判官は斬首とする。

 ・・・
 細かくしすぎればキリがないですしこの程度で良いでしょうか。

 出来上がったものを父上に見ていただくことにしましょう。

 私は父のいる中原の本屋敷へ文をしたためた紙を持って馬を走らせました。

 屋敷にたどり着き、馬を木に結ぶと父に面会をします。

「おお、巴、今日はどうしたのだ?」

「はい、私なりに考えて木曽松本における法度を定めてまいりました
 信濃権守である父上に意見を賜りたく見ていただこうかと」

 父は私から紙を受け取ると読んでゆきます。

「ふむふむ……」

「いかがでしょうか?」

「うむ、良いと思うぞ」

「ありがとうございます」

 私は屋敷に帰ると、早速機関用の建物の建築指示を出すとともに、法度を木版で印刷し各村々へ回すように指示しました。

 そして義仲様に使いを出し屋敷に来てもらうようにするとともに、我が家の客人たちも呼び集めました。

 皆が集まったところで私は法度の書かれた紙を床に広げ説明していきます。

「というわけで、皆さんここに書かれた法度を守って行動して下さい。
 お願いします」

 義仲様が聞いてきます。

「要するに理由もなく刀を似いたり暴力を振るうなっつうことだよな?」

「はい、そうです」

「わかった、あと女犯ってのは合意が有ればいいんだよな?」

「もちろん、双方の合意のであれば構いませんが、縄につくような真似はおやめ下さい
 私達ではご不満ですか?」

「い、いやそういうわけじゃないが……」

 次に鎌田兄弟の朝顔が聞いてきました。

「私達の仇討は大丈夫なのですか?」

「ええ、あくまでもこれは木曽松本の私が権限をあたえられた、場所での平時においての法度ですので。
 長田忠致は尾張からそうはなれないでしょうし、仇討の機会があるとしたらもう少し世が乱れてきた時でしょう。
 現状では平氏の代官を害したらその後が無いでしょうが、機会はいずれ必ず来ますので」

「わかりました、機会が来た時は必ずお伝え下さい」

「ええ、大丈夫です、約束を違えるような真似はいたしませんよ」

「ありがとうございます」

「後は当然のことですが、木曽と縁戚関係のある場所でも行動には注意して下さいね」

 逆に言えばそれ以外の場所では自己責任ということですが。

「ああ、わかった、気をつけるとするよ」

「当然ですが武術の訓練などの最中の怪我はこれに含まれませんが、それを口実に意図的に障害を負わせるのはダメですよ」

 まあ、軍事訓練や罪人の捕縛の時まで考慮するのは難しいですよね。
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