1 / 111
役目となれそめとばれてから
しおりを挟む
両翼の守り人、またの名を…狩人。大切な主に仇なすものを、刈る者。その名を授けられた初代は…騎士として、その主を守った。すべての事から。その血脈が受け継がれて、今、私が次期当主として…近代最も命が狙われるであろう、ルーヴェリア様についている。
当主と言っても、貴族としてのというよりは、コッチの、ですが。
この国は、他と比べると特殊だ。国を守る為のモノが、魔力なのだ。正確には、魔術で編んだ装置に魔力を注ぐことで、国へと齎される攻撃をはじき返すというモノ。また、万が一国に入られたとしても…王都だけは、魔術が使えない。ただ、抜け道としては…王族であることと、一定量の魔力を有していれば、それに当てはまらずに魔術を使い放題ですけれど。
とはいえ…王族でも、反旗を翻しそうだとか、担ぎ上げられそう、ということはあるので、危険因子は排除するという手も取られたりしますけれど。
さて。では、なぜルーヴェリア様が命を狙われるのか、という理由ですが…魔力がないから、です。なんというか…国を守る為には魔力があったほうがいい訳です。分からなくはないですよ。ええ。けれど、魔力を持たないからと言って、何か不都合が出る訳でもないですし、子をもうければ高魔力持ちが生まれる事もあるのですから。ただ、そう…なんというか、魔力が全て、という偏った思想のやつらがいる訳で。それらに狙われているという事です。
ここ…城内はもとより、王都では魔術は使えませんから、毒だったり、武器を手に襲い掛かったり、そう言った単純な手ばかりではありますが、それでも幼い子供であれば、害することも可能ですしね。
襲撃してくる者、というか…犯人は分かっているのだけれど、それをどうにかできない事情というか…国の守りのシステムを握っていて、一子相伝で外部にまったく漏れないので、いなくなると守りがなくなってしまうから、なんともできないというか。それこそ長いなが~~~~い年月かけてすらどうにも出来てない。
そのシステム維持に魔力が必要なんだから、魔力持ちを生む可能性がある魔力なしでも、こういっちゃなんだが、利用価値あるはずなんだけれども。何か他に理由があるのかすらわからないですし。
そんなルーヴェリア様と俺は、乳母兄弟という事もあって、本当に…赤子の頃から一緒に育った。親友とも呼べるくらいに。幼いころは、流石に母が守っていたようだが、俺が6歳になった時に、聞かれた。家の成り立ちから、様々な事を説明されたうえで。そして、ルーヴェリア様が無事に育つことができるかは、傍に在る俺次第だとも。嫌なら別の者が守るだけだと。ただ…どうしても、年代が違えば傍に付くことが難しい場合もある。その時に、間に合わなければどうなるかわかりませんよと言われて---
「おれ、しん…ルーヴェリア、様が…いなくなるのは、いやだ」
そう、言っていた。それまで母と一緒に、ルーヴェリア様とすごしていたけれど…半年ほど、本家に預けられた。地獄だった。毒の勉強から、武術はもちろん礼儀作法まで、寝る間もなく教え込まれた。
そういえば、毒で死にかけましたね。あはは。くじけそうになっても、なんだか…あの太陽の様な、ちょっと…ばかっぽい、よく言えば純真な、あいつといると楽しいし…裏がないから、分かりやすいですし。幼心にいなくなったら嫌だなと思うくらいには…だから頑張れた。忠心からくるものなのか…血のなせる業なのか…まさかあの頭弱いあいつに、傅く要素があって………そんな訳はないか。うん、ない。ないない。
えぇと、まあ、それらの…修行というか、訓練を終えて戻る時に、守っていることを気取られてはいけないと言われた。そして、足を怪我して歩けなかった事にするようにとも。久しぶりに城に行ったら、ものすごく心配されて、困りましたけれど。そして…習った礼儀作法が出そうになって困りましたね。だって、急にそんな態度になったら違和感あるでしょうしね。
そんなルーヴェリア様が騎士になるのだと言い出した時は、どうしようかと思ったものだったが…まあ、二人とも元々身体を動かすのが好きで、俺も一緒に剣の練習をしてたから…その時に、俺も騎士になって、将来あんたの護衛になるのだと言った。驚かれたが、それもいいなと笑いあった。
護衛以外にも、執事や補佐官といった道もあった。ただ…騎士学校に通うのであれば、その道を示す事が最善だと思ったから。離れていては守れない。なら、同じ場所にいればいいのだ、と。
実際…騎士学校に通うようになってから、様々な事があった。食事に毒が盛られるのはもちろん、遠くから狙われたりとか。授業中…まあ、1対1で剣を合わせたりもするのだけれど、本気で命を狙う攻撃をしてきたり、という場合もあった。ただ…あいつ、ただでさえ城の近衛相手にもいい勝負するのに、同年代とはいえ子供…青年か、それくらいの年代相手に負けるわけがない。しかも、近衛は特に、命を守るようにと訓練を施してくるからな…急所突きなんて当たり前、不意打ちとかも普通にやってくる。まあ、武器は木刀だから、全力でやられなければなんとでもなるけれど。
その頃から…髪と、背中に変化が現れた。それは…髪には、守った人の瞳の色が出る。背中には…守って、奪った命の数だけ…紋がでる。最初は利き手側に。どういう基準なのか不明だけれど、それがいっぱいになると利き手ではない方の背中にも。それが、羽の様に見える事から…片翼や、両翼と呼ばれる。
それらの特徴を上手く隠していた…隠せていたと思っていたのに、気づかれた。髪は、元々黒だから分かりにくいとは思うけど、根本が群青っぽい色になってきたから染めて分からないようにしていたし、背中も見えないように服を脱がないようにしていたのに。ルーヴェリア様は、もともと、魔力はないのに勘が鋭いし…人の思惑とか、感情なんかを感じ取る事に長けてるから…それが理由かわからないけれど。
「一応、そういうヤツが俺にもついてるって、兄が言ってた。それがお前だとは、思わなかったけど」
「…俺---私は、貴方の護衛になると言ったでしょう」
「っ…」
「ばれてしまったのなら仕方ありません。もうすぐ、両翼になります。私に、守られてくださいますね…我が君」
「いやだ!お前とは友達だ!」
「それがお望みであれば構いませんよ」
常に守られる王族でありながら…友であると言ってくれるあんただから、守りたい、のかもしれない。
「そのしゃべりかた、やめろ」
「…いくら乳母兄弟とはいえ…そろそろけじめをつけるべきかと」
「いやだ」
「あのですね…」
「俺がいいっていってるんだから、いいんだ!」
「…もう少し、分別つけろよ」
「まだ、学生なんだから、いいだろ、別に!」
こういう…王族としてあろうとしないバカ正直な所も、気に入ってはいるけれど。
「へぇ…俺の目の色なのか。でもそれ、どういう原理なんだ?」
「原理というか、魔術的なものらしいですよ。詳しくは知りません。血にそういった魔術的要素が混じっているとしか聞いてませんから」
「その背中のも、か?痛くないの?」
「新たに出る時は少し熱っぽい感じはしますけれど、特にはないですよ」
「触ってみてもいいか?」
「いいですけど…傷つけないでくださいよ。一応、それ、勲章みたいなモンなんですから」
「勲章?」
「両翼で一人前とみられるんで」
「へー…」
「ちょ、ひっかかないでくださいよ!」
「傷つけてはいないぞ。見た目だけなんだな…別にぼこぼこしてたりそういう訳でもないのか」
「っっ、くすぐったいんでもうやめてもらえますか」
「ん?ああ、悪い」
「まったく…」
この会話の最後の方だけ、通りがかりのメイドが聞いてしまい…新たな扉を開いたとかなんとか…知らないのは当人たちだけである。
当主と言っても、貴族としてのというよりは、コッチの、ですが。
この国は、他と比べると特殊だ。国を守る為のモノが、魔力なのだ。正確には、魔術で編んだ装置に魔力を注ぐことで、国へと齎される攻撃をはじき返すというモノ。また、万が一国に入られたとしても…王都だけは、魔術が使えない。ただ、抜け道としては…王族であることと、一定量の魔力を有していれば、それに当てはまらずに魔術を使い放題ですけれど。
とはいえ…王族でも、反旗を翻しそうだとか、担ぎ上げられそう、ということはあるので、危険因子は排除するという手も取られたりしますけれど。
さて。では、なぜルーヴェリア様が命を狙われるのか、という理由ですが…魔力がないから、です。なんというか…国を守る為には魔力があったほうがいい訳です。分からなくはないですよ。ええ。けれど、魔力を持たないからと言って、何か不都合が出る訳でもないですし、子をもうければ高魔力持ちが生まれる事もあるのですから。ただ、そう…なんというか、魔力が全て、という偏った思想のやつらがいる訳で。それらに狙われているという事です。
ここ…城内はもとより、王都では魔術は使えませんから、毒だったり、武器を手に襲い掛かったり、そう言った単純な手ばかりではありますが、それでも幼い子供であれば、害することも可能ですしね。
襲撃してくる者、というか…犯人は分かっているのだけれど、それをどうにかできない事情というか…国の守りのシステムを握っていて、一子相伝で外部にまったく漏れないので、いなくなると守りがなくなってしまうから、なんともできないというか。それこそ長いなが~~~~い年月かけてすらどうにも出来てない。
そのシステム維持に魔力が必要なんだから、魔力持ちを生む可能性がある魔力なしでも、こういっちゃなんだが、利用価値あるはずなんだけれども。何か他に理由があるのかすらわからないですし。
そんなルーヴェリア様と俺は、乳母兄弟という事もあって、本当に…赤子の頃から一緒に育った。親友とも呼べるくらいに。幼いころは、流石に母が守っていたようだが、俺が6歳になった時に、聞かれた。家の成り立ちから、様々な事を説明されたうえで。そして、ルーヴェリア様が無事に育つことができるかは、傍に在る俺次第だとも。嫌なら別の者が守るだけだと。ただ…どうしても、年代が違えば傍に付くことが難しい場合もある。その時に、間に合わなければどうなるかわかりませんよと言われて---
「おれ、しん…ルーヴェリア、様が…いなくなるのは、いやだ」
そう、言っていた。それまで母と一緒に、ルーヴェリア様とすごしていたけれど…半年ほど、本家に預けられた。地獄だった。毒の勉強から、武術はもちろん礼儀作法まで、寝る間もなく教え込まれた。
そういえば、毒で死にかけましたね。あはは。くじけそうになっても、なんだか…あの太陽の様な、ちょっと…ばかっぽい、よく言えば純真な、あいつといると楽しいし…裏がないから、分かりやすいですし。幼心にいなくなったら嫌だなと思うくらいには…だから頑張れた。忠心からくるものなのか…血のなせる業なのか…まさかあの頭弱いあいつに、傅く要素があって………そんな訳はないか。うん、ない。ないない。
えぇと、まあ、それらの…修行というか、訓練を終えて戻る時に、守っていることを気取られてはいけないと言われた。そして、足を怪我して歩けなかった事にするようにとも。久しぶりに城に行ったら、ものすごく心配されて、困りましたけれど。そして…習った礼儀作法が出そうになって困りましたね。だって、急にそんな態度になったら違和感あるでしょうしね。
そんなルーヴェリア様が騎士になるのだと言い出した時は、どうしようかと思ったものだったが…まあ、二人とも元々身体を動かすのが好きで、俺も一緒に剣の練習をしてたから…その時に、俺も騎士になって、将来あんたの護衛になるのだと言った。驚かれたが、それもいいなと笑いあった。
護衛以外にも、執事や補佐官といった道もあった。ただ…騎士学校に通うのであれば、その道を示す事が最善だと思ったから。離れていては守れない。なら、同じ場所にいればいいのだ、と。
実際…騎士学校に通うようになってから、様々な事があった。食事に毒が盛られるのはもちろん、遠くから狙われたりとか。授業中…まあ、1対1で剣を合わせたりもするのだけれど、本気で命を狙う攻撃をしてきたり、という場合もあった。ただ…あいつ、ただでさえ城の近衛相手にもいい勝負するのに、同年代とはいえ子供…青年か、それくらいの年代相手に負けるわけがない。しかも、近衛は特に、命を守るようにと訓練を施してくるからな…急所突きなんて当たり前、不意打ちとかも普通にやってくる。まあ、武器は木刀だから、全力でやられなければなんとでもなるけれど。
その頃から…髪と、背中に変化が現れた。それは…髪には、守った人の瞳の色が出る。背中には…守って、奪った命の数だけ…紋がでる。最初は利き手側に。どういう基準なのか不明だけれど、それがいっぱいになると利き手ではない方の背中にも。それが、羽の様に見える事から…片翼や、両翼と呼ばれる。
それらの特徴を上手く隠していた…隠せていたと思っていたのに、気づかれた。髪は、元々黒だから分かりにくいとは思うけど、根本が群青っぽい色になってきたから染めて分からないようにしていたし、背中も見えないように服を脱がないようにしていたのに。ルーヴェリア様は、もともと、魔力はないのに勘が鋭いし…人の思惑とか、感情なんかを感じ取る事に長けてるから…それが理由かわからないけれど。
「一応、そういうヤツが俺にもついてるって、兄が言ってた。それがお前だとは、思わなかったけど」
「…俺---私は、貴方の護衛になると言ったでしょう」
「っ…」
「ばれてしまったのなら仕方ありません。もうすぐ、両翼になります。私に、守られてくださいますね…我が君」
「いやだ!お前とは友達だ!」
「それがお望みであれば構いませんよ」
常に守られる王族でありながら…友であると言ってくれるあんただから、守りたい、のかもしれない。
「そのしゃべりかた、やめろ」
「…いくら乳母兄弟とはいえ…そろそろけじめをつけるべきかと」
「いやだ」
「あのですね…」
「俺がいいっていってるんだから、いいんだ!」
「…もう少し、分別つけろよ」
「まだ、学生なんだから、いいだろ、別に!」
こういう…王族としてあろうとしないバカ正直な所も、気に入ってはいるけれど。
「へぇ…俺の目の色なのか。でもそれ、どういう原理なんだ?」
「原理というか、魔術的なものらしいですよ。詳しくは知りません。血にそういった魔術的要素が混じっているとしか聞いてませんから」
「その背中のも、か?痛くないの?」
「新たに出る時は少し熱っぽい感じはしますけれど、特にはないですよ」
「触ってみてもいいか?」
「いいですけど…傷つけないでくださいよ。一応、それ、勲章みたいなモンなんですから」
「勲章?」
「両翼で一人前とみられるんで」
「へー…」
「ちょ、ひっかかないでくださいよ!」
「傷つけてはいないぞ。見た目だけなんだな…別にぼこぼこしてたりそういう訳でもないのか」
「っっ、くすぐったいんでもうやめてもらえますか」
「ん?ああ、悪い」
「まったく…」
この会話の最後の方だけ、通りがかりのメイドが聞いてしまい…新たな扉を開いたとかなんとか…知らないのは当人たちだけである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
133
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる