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酒場
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「おい、こいつ喋ったぞ!」
「まじかよ! 一体何なんだ!?」
「これってあれじゃないのか?」
「なんだよ?」
一瞬の沈黙のあと、店内が騒がしくなる。
それを一蹴するかのようにカウンターを叩くお姉さん。
すると、皆一斉にその動きが固まる。
「静かにしてください! それでミーシャさん。そちらの……トカゲですか? 一体何なのですか?」
みんなの注目が私に集まる。
だからちびどらには話すなって言ったのに……。
ただ、こうなってしまってはどうすることも出来ないので詳細に説明する。
「この子はちびどら。喋る空飛ぶトカゲです」
「なるほど……」
「おい、いくら何でもそれはどうかと思うぞ。いくら温厚なおいらでも怒ってしまうぞ」
私の説明でお姉さんは納得しかけたがちびどらは反論してくる。
折角まとまりそうだったのに……。
そう思っていると勝手にちびどらがしゃべり出す。
「おいらは偉大な錬金竜(の子)にして、伝説の錬金を司るドラゴン。その名も……」
同じこと2回言ってるよ……。でも何も言わない方が良いんだよね? あっ、名前くらいは私が言うべきかな。
「ちびどら」
「…………」
あれっ? ちびどらが言おうとした名前は別のもののように聞こえたけど……。ちびどらも落ち込んでるし……。
「ど、ドラゴンですか? あの炎を吐いたりする伝説の……。いえ、あなたはトカゲですね。空飛ぶしゃべるトカゲのちびどらさん」
「…………」
説明した後にも誰も信用してくれないちびどら。
少し不憫な気もするけど仕方ないよね。だって……。
「ドラゴンって体長10メートル以上あるって噂のあれだろ?」
「あんなちび助じゃないよな?」
そうなのだ。ちびどらはドラゴンと言っている割に小さい。
これじゃあドラゴンらしさも威厳の欠片もないだろう。
ただ、ちびどらの体がかなり小さくなって言っている。相当落ち込んでいるのだろう。
「大丈夫。私はどらごんだってわかっているよ」
私はちびどらを励ます。
「おう、俺たちも信じてるぞ!」
「ちっこいトカゲ竜だろ!」
「あはははっ、それはいいな。トカゲ竜」
お酒が入っているので変なテンションで再び冷やかしてくる。そのせいでちびどらが完全に拗ねてしまっていた。
◇
その後、大量の食べ物をあげたことでなんとかちびどらは機嫌を直してくれた。
「どうせおいらなんて食べることしか能の無いダメドラゴンだよ」
完全に直しているかは疑問符が付くけど、話してくれるようになっただけマシかな?
「これに懲りたらもう人前では話さないでね」
「わかったよ!」
ちびどらが納得したところで今度は酒場の方に向かっていた。
私的にはさっきの商業組合も酒場みたいだったけど、あれは各々が勝手に持ち込んでいるだけらしい。
そして、これから行くところが本当の酒場みたいだ。
「さっきのであれだし、本当の酒場だともっと怖いとこじゃないの?」
私は不安になってマークくんに聞いてみる。
「大丈夫だ! 次はもっとちゃんとしたところだ!」
自信たっぷりといった感じに話すマークくん。どこからこの自信がきてるんだろう?
◇
酒場にたどり着いた私は先ほどのこともあり、恐る恐る扉をあけた。
すると店内は……閑古鳥が鳴いていた。
「なっ、大丈夫だっただろ?」
嬉しそうに言うマークくん。
確かにこれだと大丈夫だよね。中にいる人が店員さんしかいないんだし。
私はジト目でマークくんを見るがマークくんは気づいていない。
「いらっしゃい。まだ開店してないよ」
コップをキュッキュッと磨いていたおじさんが言ってくる。
私のマークくんを見る目がさらに鋭くなる。
「あっ、おっちゃん。誰か店員になるような人を探しているんだ。募集しておいてよ」
「マークくん、私は一人で大丈夫だから……。それにいきなり人を雇ってなんて……」
「大丈夫だ、金は俺(の親)が出す! どうせミーシャも素材とか取りに町の外へ出るんだろう? なら戦えるやつが一人くらい必要だろう。俺がいけるときは一緒に行ってやるが……」
マークくん……そこまで考えてくれていたんだ……。
いつものはっちゃけた感じとは違い意外に頼りになる彼に私は感心すら覚えた。
「それに錬金術でこなせる依頼とかが来るかもしれないだろう? このおっちゃんに顔を覚えておいてもらうことも大事なんだ。だろう?」
「あぁ、一度会っておくと私のほうも頼みやすいからな」
何やらポンポンと話が進んでいく。でも、その中に聞き捨てならない言葉があった。
「マークくん!? 報酬くらい私が……」
「払えるのか?」
マークくんがジッと私を見てくる。確かにあんまりお金を持ってないけど、鉄銭なら何枚か……。
「ここの依頼だと一件あたり銀貨数枚はいるぞ!」
「ぎ、銀貨……って何?」
私がそう言うとマークくんはコケそうになっていた。
おかしいこと言ったかな?
お金って言ったらこの鉄銭しか見たことないけど。
私は首を傾げ不思議そうにマークくんを見る。
「あのなー。銀貨と言ったら普通の通貨だぞ! どうして知らないんだ!?」
「えっ? だって鉄銭しか使ったことないし……」
「一体どこの田舎に住んでいたんだ!?」
マークくんが呆れ顔になりながらも詳しく教えてくれる。
ただ、終始疑問符がつきながら話を聞いていた私には鉄銭、銅貨、銀貨、金貨の順にいいお金になるということしかわからなかった。
「まじかよ! 一体何なんだ!?」
「これってあれじゃないのか?」
「なんだよ?」
一瞬の沈黙のあと、店内が騒がしくなる。
それを一蹴するかのようにカウンターを叩くお姉さん。
すると、皆一斉にその動きが固まる。
「静かにしてください! それでミーシャさん。そちらの……トカゲですか? 一体何なのですか?」
みんなの注目が私に集まる。
だからちびどらには話すなって言ったのに……。
ただ、こうなってしまってはどうすることも出来ないので詳細に説明する。
「この子はちびどら。喋る空飛ぶトカゲです」
「なるほど……」
「おい、いくら何でもそれはどうかと思うぞ。いくら温厚なおいらでも怒ってしまうぞ」
私の説明でお姉さんは納得しかけたがちびどらは反論してくる。
折角まとまりそうだったのに……。
そう思っていると勝手にちびどらがしゃべり出す。
「おいらは偉大な錬金竜(の子)にして、伝説の錬金を司るドラゴン。その名も……」
同じこと2回言ってるよ……。でも何も言わない方が良いんだよね? あっ、名前くらいは私が言うべきかな。
「ちびどら」
「…………」
あれっ? ちびどらが言おうとした名前は別のもののように聞こえたけど……。ちびどらも落ち込んでるし……。
「ど、ドラゴンですか? あの炎を吐いたりする伝説の……。いえ、あなたはトカゲですね。空飛ぶしゃべるトカゲのちびどらさん」
「…………」
説明した後にも誰も信用してくれないちびどら。
少し不憫な気もするけど仕方ないよね。だって……。
「ドラゴンって体長10メートル以上あるって噂のあれだろ?」
「あんなちび助じゃないよな?」
そうなのだ。ちびどらはドラゴンと言っている割に小さい。
これじゃあドラゴンらしさも威厳の欠片もないだろう。
ただ、ちびどらの体がかなり小さくなって言っている。相当落ち込んでいるのだろう。
「大丈夫。私はどらごんだってわかっているよ」
私はちびどらを励ます。
「おう、俺たちも信じてるぞ!」
「ちっこいトカゲ竜だろ!」
「あはははっ、それはいいな。トカゲ竜」
お酒が入っているので変なテンションで再び冷やかしてくる。そのせいでちびどらが完全に拗ねてしまっていた。
◇
その後、大量の食べ物をあげたことでなんとかちびどらは機嫌を直してくれた。
「どうせおいらなんて食べることしか能の無いダメドラゴンだよ」
完全に直しているかは疑問符が付くけど、話してくれるようになっただけマシかな?
「これに懲りたらもう人前では話さないでね」
「わかったよ!」
ちびどらが納得したところで今度は酒場の方に向かっていた。
私的にはさっきの商業組合も酒場みたいだったけど、あれは各々が勝手に持ち込んでいるだけらしい。
そして、これから行くところが本当の酒場みたいだ。
「さっきのであれだし、本当の酒場だともっと怖いとこじゃないの?」
私は不安になってマークくんに聞いてみる。
「大丈夫だ! 次はもっとちゃんとしたところだ!」
自信たっぷりといった感じに話すマークくん。どこからこの自信がきてるんだろう?
◇
酒場にたどり着いた私は先ほどのこともあり、恐る恐る扉をあけた。
すると店内は……閑古鳥が鳴いていた。
「なっ、大丈夫だっただろ?」
嬉しそうに言うマークくん。
確かにこれだと大丈夫だよね。中にいる人が店員さんしかいないんだし。
私はジト目でマークくんを見るがマークくんは気づいていない。
「いらっしゃい。まだ開店してないよ」
コップをキュッキュッと磨いていたおじさんが言ってくる。
私のマークくんを見る目がさらに鋭くなる。
「あっ、おっちゃん。誰か店員になるような人を探しているんだ。募集しておいてよ」
「マークくん、私は一人で大丈夫だから……。それにいきなり人を雇ってなんて……」
「大丈夫だ、金は俺(の親)が出す! どうせミーシャも素材とか取りに町の外へ出るんだろう? なら戦えるやつが一人くらい必要だろう。俺がいけるときは一緒に行ってやるが……」
マークくん……そこまで考えてくれていたんだ……。
いつものはっちゃけた感じとは違い意外に頼りになる彼に私は感心すら覚えた。
「それに錬金術でこなせる依頼とかが来るかもしれないだろう? このおっちゃんに顔を覚えておいてもらうことも大事なんだ。だろう?」
「あぁ、一度会っておくと私のほうも頼みやすいからな」
何やらポンポンと話が進んでいく。でも、その中に聞き捨てならない言葉があった。
「マークくん!? 報酬くらい私が……」
「払えるのか?」
マークくんがジッと私を見てくる。確かにあんまりお金を持ってないけど、鉄銭なら何枚か……。
「ここの依頼だと一件あたり銀貨数枚はいるぞ!」
「ぎ、銀貨……って何?」
私がそう言うとマークくんはコケそうになっていた。
おかしいこと言ったかな?
お金って言ったらこの鉄銭しか見たことないけど。
私は首を傾げ不思議そうにマークくんを見る。
「あのなー。銀貨と言ったら普通の通貨だぞ! どうして知らないんだ!?」
「えっ? だって鉄銭しか使ったことないし……」
「一体どこの田舎に住んでいたんだ!?」
マークくんが呆れ顔になりながらも詳しく教えてくれる。
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