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古く悪臭のする召使いの館(3)
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ゆらゆらと体を揺らされる。どこかから優しげな声が聞こえる。
「……ルファー、……ルファー」
体を揺する力は次第に強くなり、聞こえる声もはっきりとしてくる。
「ミルファー、もう朝だよ!」
ゆっくりとまぶたを開くとすぐ目の前には研吾の顔があった。その表情はどこか涼しげで顔のとりものが取れた感じだった。
(でもどうしてケンゴ様が?)
寝ぼけ眼を擦り、周りの状況を確認する。
どうやら研吾の側に座っていたらそのまま眠ってしまったようだ。
(つまり今は頭を乗せてるのは……ケンゴ様のベッド!?)
「も、申し訳ありません!」
ミルファーは慌てて頭をどけようとするが、研吾がそれを制止し、ゆっくりと頭を撫でてくる。
「ふぇ……。あ、あの……ケンゴ様?」
「ミルファー、ありがとう。おかげで少し目が覚めたよ」
何かを悟ったのか研吾はミルファーにはにかんでくる。
「そ、それはいいのですが、その手は……?」
ミルファーは未だに撫で続けられる頭に恥ずかしさからか目には少し涙をため、顔を赤面させながら少し顔を伏せた。
「えっと……、なんとなく?」
そう言いながらも撫でることをやめない研吾にミルファーは顔をさらに赤く染め、ついには知恵熱を出したかのように発熱してしまう。
「もう、ケンゴ様はー!」
少し拗ねたミルファーは研吾の頭を軽く叩いていた。
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ! こう、目の前にミルファーの頭があったからついつい撫でてしまっただけなんだよ!」
頭を押さえながらどこか苦笑を浮かべてミルファーの攻撃をそのまま受け続けていた。
「でもミルファー? どこか砕けた言葉になったね」
研吾に言われて初めて気づいたミルファーはハッとなり叩く手を止める。
「も、もうしわけ——」
「いや、いいよ。むしろその方が話しやすいからね。これからもそう話してくれない?」
ミルファーが謝ろうとしたのを研吾は止めてくる。
「そう言われましてもすぐには……」
「じゃあちょっとずつでいいから直してくれると嬉しいかな。いつもの話し方だと少し距離があるような気がするから」
それならとミルファーは小さく頷く。
「それでケンゴ様は一体何を悩んでいたのですか?」
そう言いながらミルファーは研吾が書いていた図面を覗き込む。そこにはほとんど書きあがった平面図(建物を水平に切り、真上から見下ろした間取り図)と立面図(建物を横から見た図面)が置かれていた。
「詳しいことはわかりませんが、これを見る限りほとんど完成してるように見えますけど」
「いや、それだと軽く予算オーバーするんだよ。ただ図面のまとまりはいいからどうにか予算を押さえる方法はないかと考えていてね」
ミルファーの後ろから覗き込むように見る研吾。その横顔をチラッと見る。
(こういった建築のことを考えてるケンゴ様って本当にかっこいい……って私何考えてるの!?)
頭のモヤモヤを吹き飛ばし、研吾と一緒に何かいい案がないかを考える。
「と、とにかく一度かかる費用をまとめてはどうでしょうか?」
手を慌ててブンブン振るとそう言いながら置いてある図面を見やすいように広げる。
「——確かにいつまでも一人で悩んでるよりミルファーに聞いてもらった方がいい案が浮かぶかも……しれないよね」
少し考える素振りを見せた後、研吾は頷いて必要なものをまっさらの紙に書き連ねていく。
魔石導力式キッチン――金貨十三枚
魔石導力式トイレ――金貨一枚×四個
魔石導力式シャワー――銀貨四十枚×二つ
魔石導力式浴槽――金貨五枚×二つ
その他材料費金貨三枚
人件費約金貨一枚
その他雑費銀貨二十枚
計――金貨三十枚
「どう見てもオーバーしてますね。ただ、この設備――」
「うん、キッチンは良いものを……、他のものはある程度にランクを落としたんだけどそれでもダメみたい……」
(ただ、前々から思っていたけどケンゴ様に建築を頼んだら相当安い。きっと余計な費用を取ってないのが大きいのかな)
ミルファーは紙と図面を何度も見比べる。
「設備だけ見てても良く分からないですね。もっと落としてもいい気がしますが……」
「ただ、やっぱりほとんどやり変える事になるから他の材料費も大幅にかかるんだよ。だいたいで見積もってはみたけど、本当にこれで収まるのか……」
「材料費っていつも使ってる木材はお金かかりませんよ?」
大森林に生えている木を勝手に切って運んでるわけだし特に費用はかかっていない。しかも、魔力度の濃い大森林では普通では考えられないほど早く木々が成長する。 いつも建築で使用してる木くらいなら一年ほどで出来るくらいだ。
「それでも建築するにはまずは基礎から作らないといけないよね」
「はい、そうですよ。でも基礎工事も費用かかりませんよ?」
何かおかしなことを言ってるといった感じに目を細めてミルファーを見る研吾。
「あっ……、そっか……。その辺は魔法で出来るんだったね。なら――」
それを教えると再び研吾は何かを考え始めた。
研吾は図面と格闘を始めた。
「そういえば今の館は平屋ですけど、今度は二階建てになるのですね」
「えっ、あぁ、そうだよ。どうしても個室を取るにはね」
研吾が書いた図面には一階は大広間にキッチン、大浴場が二つ、あとは客間が一室あった。そして、階段を上った先は全て個室。完全にプライペートと共用の空間を分けた建物になっている。
「やっぱり設備に手をかけないとまずいね。基礎の分でちょっと予算削減は出来たけど、それでも焼け石に水だし」
「そうですね……。例えばですけど浴槽は一つで良いと思います」
「でも男女で別れた方が……」
「確かにその方が良いのですが、予算を落とすならそれくらいしても良いと思います。今までもシャワーだけですが時間を決めて入ってましたから」
それで不自由に感じたことはミルファーは一度もなかった。そういうもんだと納得して入っていたからだ。
「それならだいぶ予算は削れるけど、この間スペースはどうしよう……」
浴室は男女隣り合わせで計画されていた。その片方を削るとなると開いた空間を何に使うかが問題だった。しかし、ミルファーは何が問題なのかと首を傾げる。
「開いたところもくっつけて大浴場にしてはいけないのですか?」
「あっ……!?」
すっかり頭から抜け落ちていたのだろう。研吾は慌てて新しい図面を書き出す。素早い手つき。真剣な表情。それでいて昨日までの研吾とは違い、どこか生き生きとした表情だった。
そして、研吾は図面を完成させる。そこから軽く見積もりを取り直した結果――。
「合計……金貨二十四枚……。金貨一枚予備費にして……。うん、これなら……」
研吾はミルファーの方に振り向く。その表情は目に涙を浮かべ、しかし、口はどこか嬉しげに微笑んでいた。そして、そのまま研吾は抱きついてくる。
「ミルファー、やったよ! これならきっと出来る! もう少し詳細に図面を起こして確認するけどこれで完成だよ!」
「やりましたね! ケンゴ様」
ミルファーも無事図面が完成したことを喜び、同じように研吾に抱きつき返し、二人一緒に飛び跳ねて喜んだ。
しかし、しばらく過ぎるとミルファーの熱気も冷め、研吾と抱きついてる己を冷静に見つめ返すことができた。
(わ、私、どうしてケンゴ様と抱きついてる?)
今の状況にミルファーの顔は紅潮し、慌てて研吾から離れると部屋の隅にしゃがみ込んで両頬を押さえる。
(完成したことが嬉しすぎて思わず抱きついたけど、良かったのかな? うぅ……、恥ずかしいよ……)
恥ずかしさのあまり、脳内でいつもの言動ではなく素の状態が出ていた。しかし、それを気にする余裕もなく首を横に振ったり頭を叩いたりと訳のわからない行動をしていた。
「ミルファー、だいじょう……」
「ケンゴ様、わ、私……」
ミルファーを労わる声についに堪え切れなくなって泣き出してしまう。すると研吾は慌てて何とか宥めようとするが、その前にどこからともなくバルドールが現れる。
「ミルファー、どうしたんだ!? ……はっ、まさかケンゴが!? お前はそんなことをするやつじゃないと思っていたのに……」
盛大に勘違いしたバルドールは研吾の胸元を掴む。
「ば、バル……、勘違いだ!」
「問答無用!」
そのまま研吾は投げ飛ばされた。
「……ルファー、……ルファー」
体を揺する力は次第に強くなり、聞こえる声もはっきりとしてくる。
「ミルファー、もう朝だよ!」
ゆっくりとまぶたを開くとすぐ目の前には研吾の顔があった。その表情はどこか涼しげで顔のとりものが取れた感じだった。
(でもどうしてケンゴ様が?)
寝ぼけ眼を擦り、周りの状況を確認する。
どうやら研吾の側に座っていたらそのまま眠ってしまったようだ。
(つまり今は頭を乗せてるのは……ケンゴ様のベッド!?)
「も、申し訳ありません!」
ミルファーは慌てて頭をどけようとするが、研吾がそれを制止し、ゆっくりと頭を撫でてくる。
「ふぇ……。あ、あの……ケンゴ様?」
「ミルファー、ありがとう。おかげで少し目が覚めたよ」
何かを悟ったのか研吾はミルファーにはにかんでくる。
「そ、それはいいのですが、その手は……?」
ミルファーは未だに撫で続けられる頭に恥ずかしさからか目には少し涙をため、顔を赤面させながら少し顔を伏せた。
「えっと……、なんとなく?」
そう言いながらも撫でることをやめない研吾にミルファーは顔をさらに赤く染め、ついには知恵熱を出したかのように発熱してしまう。
「もう、ケンゴ様はー!」
少し拗ねたミルファーは研吾の頭を軽く叩いていた。
「ご、ごめん。わざとじゃないんだ! こう、目の前にミルファーの頭があったからついつい撫でてしまっただけなんだよ!」
頭を押さえながらどこか苦笑を浮かべてミルファーの攻撃をそのまま受け続けていた。
「でもミルファー? どこか砕けた言葉になったね」
研吾に言われて初めて気づいたミルファーはハッとなり叩く手を止める。
「も、もうしわけ——」
「いや、いいよ。むしろその方が話しやすいからね。これからもそう話してくれない?」
ミルファーが謝ろうとしたのを研吾は止めてくる。
「そう言われましてもすぐには……」
「じゃあちょっとずつでいいから直してくれると嬉しいかな。いつもの話し方だと少し距離があるような気がするから」
それならとミルファーは小さく頷く。
「それでケンゴ様は一体何を悩んでいたのですか?」
そう言いながらミルファーは研吾が書いていた図面を覗き込む。そこにはほとんど書きあがった平面図(建物を水平に切り、真上から見下ろした間取り図)と立面図(建物を横から見た図面)が置かれていた。
「詳しいことはわかりませんが、これを見る限りほとんど完成してるように見えますけど」
「いや、それだと軽く予算オーバーするんだよ。ただ図面のまとまりはいいからどうにか予算を押さえる方法はないかと考えていてね」
ミルファーの後ろから覗き込むように見る研吾。その横顔をチラッと見る。
(こういった建築のことを考えてるケンゴ様って本当にかっこいい……って私何考えてるの!?)
頭のモヤモヤを吹き飛ばし、研吾と一緒に何かいい案がないかを考える。
「と、とにかく一度かかる費用をまとめてはどうでしょうか?」
手を慌ててブンブン振るとそう言いながら置いてある図面を見やすいように広げる。
「——確かにいつまでも一人で悩んでるよりミルファーに聞いてもらった方がいい案が浮かぶかも……しれないよね」
少し考える素振りを見せた後、研吾は頷いて必要なものをまっさらの紙に書き連ねていく。
魔石導力式キッチン――金貨十三枚
魔石導力式トイレ――金貨一枚×四個
魔石導力式シャワー――銀貨四十枚×二つ
魔石導力式浴槽――金貨五枚×二つ
その他材料費金貨三枚
人件費約金貨一枚
その他雑費銀貨二十枚
計――金貨三十枚
「どう見てもオーバーしてますね。ただ、この設備――」
「うん、キッチンは良いものを……、他のものはある程度にランクを落としたんだけどそれでもダメみたい……」
(ただ、前々から思っていたけどケンゴ様に建築を頼んだら相当安い。きっと余計な費用を取ってないのが大きいのかな)
ミルファーは紙と図面を何度も見比べる。
「設備だけ見てても良く分からないですね。もっと落としてもいい気がしますが……」
「ただ、やっぱりほとんどやり変える事になるから他の材料費も大幅にかかるんだよ。だいたいで見積もってはみたけど、本当にこれで収まるのか……」
「材料費っていつも使ってる木材はお金かかりませんよ?」
大森林に生えている木を勝手に切って運んでるわけだし特に費用はかかっていない。しかも、魔力度の濃い大森林では普通では考えられないほど早く木々が成長する。 いつも建築で使用してる木くらいなら一年ほどで出来るくらいだ。
「それでも建築するにはまずは基礎から作らないといけないよね」
「はい、そうですよ。でも基礎工事も費用かかりませんよ?」
何かおかしなことを言ってるといった感じに目を細めてミルファーを見る研吾。
「あっ……、そっか……。その辺は魔法で出来るんだったね。なら――」
それを教えると再び研吾は何かを考え始めた。
研吾は図面と格闘を始めた。
「そういえば今の館は平屋ですけど、今度は二階建てになるのですね」
「えっ、あぁ、そうだよ。どうしても個室を取るにはね」
研吾が書いた図面には一階は大広間にキッチン、大浴場が二つ、あとは客間が一室あった。そして、階段を上った先は全て個室。完全にプライペートと共用の空間を分けた建物になっている。
「やっぱり設備に手をかけないとまずいね。基礎の分でちょっと予算削減は出来たけど、それでも焼け石に水だし」
「そうですね……。例えばですけど浴槽は一つで良いと思います」
「でも男女で別れた方が……」
「確かにその方が良いのですが、予算を落とすならそれくらいしても良いと思います。今までもシャワーだけですが時間を決めて入ってましたから」
それで不自由に感じたことはミルファーは一度もなかった。そういうもんだと納得して入っていたからだ。
「それならだいぶ予算は削れるけど、この間スペースはどうしよう……」
浴室は男女隣り合わせで計画されていた。その片方を削るとなると開いた空間を何に使うかが問題だった。しかし、ミルファーは何が問題なのかと首を傾げる。
「開いたところもくっつけて大浴場にしてはいけないのですか?」
「あっ……!?」
すっかり頭から抜け落ちていたのだろう。研吾は慌てて新しい図面を書き出す。素早い手つき。真剣な表情。それでいて昨日までの研吾とは違い、どこか生き生きとした表情だった。
そして、研吾は図面を完成させる。そこから軽く見積もりを取り直した結果――。
「合計……金貨二十四枚……。金貨一枚予備費にして……。うん、これなら……」
研吾はミルファーの方に振り向く。その表情は目に涙を浮かべ、しかし、口はどこか嬉しげに微笑んでいた。そして、そのまま研吾は抱きついてくる。
「ミルファー、やったよ! これならきっと出来る! もう少し詳細に図面を起こして確認するけどこれで完成だよ!」
「やりましたね! ケンゴ様」
ミルファーも無事図面が完成したことを喜び、同じように研吾に抱きつき返し、二人一緒に飛び跳ねて喜んだ。
しかし、しばらく過ぎるとミルファーの熱気も冷め、研吾と抱きついてる己を冷静に見つめ返すことができた。
(わ、私、どうしてケンゴ様と抱きついてる?)
今の状況にミルファーの顔は紅潮し、慌てて研吾から離れると部屋の隅にしゃがみ込んで両頬を押さえる。
(完成したことが嬉しすぎて思わず抱きついたけど、良かったのかな? うぅ……、恥ずかしいよ……)
恥ずかしさのあまり、脳内でいつもの言動ではなく素の状態が出ていた。しかし、それを気にする余裕もなく首を横に振ったり頭を叩いたりと訳のわからない行動をしていた。
「ミルファー、だいじょう……」
「ケンゴ様、わ、私……」
ミルファーを労わる声についに堪え切れなくなって泣き出してしまう。すると研吾は慌てて何とか宥めようとするが、その前にどこからともなくバルドールが現れる。
「ミルファー、どうしたんだ!? ……はっ、まさかケンゴが!? お前はそんなことをするやつじゃないと思っていたのに……」
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