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ドワーフ族には使いづらい家(4)
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それからバルドールが素材を運んで来てくれるまでの間、研吾たちは部屋の間取りを確認していった。
部屋自体には不満を持っていないようだったけど、念のために……のつもりだったけど実際に見てみるとモロゾフが使うには不便そうな部分が幾つかあった。
全て普通の人間族にあわしているからなのだろう、研吾から見たら違和感がないのだが、腰を実際に落として見ていくと頼まれていた以上に使いにくい部分を発見する。
(まずは頼まれていたイスや扉、食器棚だな。その他にはキッチンや洗面所と言った部分も少し直さないといけないな。ただ、奥さんも使うことを考えると邪魔にならないようにしないとね)
考えていたこと以上のことが必要だなと書いていた図面を取り出し、更に修正箇所を書き加えていく。
そして、バルドールが昨日採取した素材を運んで来てくれたので出来る部分から作っていくことにした。
イスの脚の部分を外すと昨日採取した木材を脚の形に切ると新しく元の場所に付け直していく。
そして4本付け直し、元の形になったので研吾は試しに座ってみる。
座り心地は普通の椅子と変わらない。
「じゃあこの椅子に魔力を込めてくれる?」
椅子から退いた研吾は椅子をミルファーの方へ近づける。
「わかりました。それじゃあ使ってみるね」
ミルファーは手を前に出し、魔力を込めてくれると脚の一つが小さく縮んだ。それを4回繰り返すとようやく椅子が小さいサイズになる。
「これはちょっと使いにくそうだね」
顎に手を当てて結果がどうなるか見ていた研吾の眉が少し釣り上がる。
「うん、小さくするまでがすこし大変ですね」
「これを一回で小さくする方法……やっぱり脚の部分を分けずに一本の木で作らないといけないか」
何度か頷いた後、今度は別の指示を出す研吾。
そして出来上がったのは一本の太い脚がついた椅子だった。
「できたな……」
「うん、できたね……」
完成した椅子を見ながら複雑な顔をする研吾たち。すると横からバルドールがきっぱりと言う。
「かっこ悪い椅子だな……」
丸太に背もたれがついたかのような形の椅子。それはお世辞にもかっこいいとは言い難かった。
「で、でもこれは一回で小さくできるし……」
小声でつぶやく研吾。ただ、さすがにこれではダメだと研吾もわかっているようだった。
「実験的なものだから……ミルファー、魔力を頼める?」
「うん、わかったよ」
ミルファーが手をかざし魔力を込めると脚の部分が小さくなる。
「まぁあの木を切っただけだもんね。もちろんこうなるよね」
少し苦笑いをしながら小さくなった椅子を眺めるミルファー。
「丸太なら一回で小さくなるなら、そこからくり抜いて脚を作ろうか」
脚だけを別で作るのではなく、それも含めて一本の木から作ってもらう。
そして、ミルファーが魔法で刻んでくれたものをよくよく見る研吾。
見た目は普通の椅子そのもの。その出来に満足した様子で何度も頷いていた。
そして、座って見て感触を調べてみるが、何も問題のないように感じられた。
「それじゃあミルファー、またお願いできる?」
再び魔力を込めるミルファー。今度は一度で椅子が小さくなる。
「見た目はうまくいったね。問題は……」
「座った感覚だよね? 早速試してみる?」
「うん、そうだね……」
すこしためらいながらも覚悟を決めた研吾は椅子へと腰を下ろしていく。
そして、実際に座ってみた後に何度か立って座ってを繰り返していた。
「意外と丈夫?」
次第に勢いを増していくがそれでも壊れる様子はない。
「むしろ小さくした方が強度はありそうだな」
バルドールが別の木に魔力を込めて小さくした後、地面を叩いていたがそれでも壊れる気配がなかった。
「小さくなったら強度も落ちると思ってたよ。でもこれなら他に使い道があるかも――」
バルドールの持っていた木を興味深く見る研吾。
「ケンゴさん、とりあえず今は――」
考え事を始めた研吾にミルファーはたまらずに声をかける。すると研吾はハッとなってミルファーにお礼を言う。
「ごめん、それじゃあとりあえず今の作り方で椅子を作っていこうか」
研吾がそう言うとミルファーたちは残りの椅子を直していく。
そして、椅子を直し終えると次は机を直していく。これも椅子と同じ要領で良かったので簡単に直し終えると次は扉に取り掛かっていく。
「ケンゴさん、ドアはどうするの?」
「そうだね……せっかくだからミルファーも考えてごらん」
研吾が悪戯っぽく微笑むのでミルファーは真剣に悩み一つ、呟いた。
「もしかして先ほどみたいに魔力を込めると小さくなる素材を使うのですか?」
考えた末、ミルファーが出してきた結論はこうだった。確かにそれでもいいかもしれないと思ったけど、そこまで無理をする必要はないと研吾はすぐ否定する。
「そこまで大変なことをしなくてもいいよ。だって開く分には困ってないみたいだからね。少し取っ手が高いだけで」
それを聞いたミルファーはハッとなり、言葉早に言ってくる。
「そっか……。モロゾフさんの開けやすい位置に取っ手があればいいだけだもんね」
今はまだ何もないちょうどモロゾフが開けやすそうな取っ手の位置で上げるしぐさをするミルファー。
「でも、取っ手が二つもあったら見た目変じゃない?」
「うん、だからこんな取っ手にするんだよ」
研吾が図面で見せてきたのは一般的に使われている横向きの取っ手ではなく縦向きの取っ手。それもモロゾフが使用しても困らないほどの長さの取っ手。違和感のあるものになるのではと懸念を示していたが、研吾の図面を見た途端にそんな心配はミルファーの中からなくなった。
「これ……、凄いね。何の違和感もないよ。それにこれだったら使うものは——」
「今あるもので全然事足りるね。それじゃあ早速取り掛かっていこうか」
研吾は持ってきた材料のなかから使えそうなものを見繕っていく。
そして、一通りの扉を直し終えたところでちょうどお昼になったので昼食をとりにミルファーとバルドールの三人で町へと繰り出していった。
「お腹すいたねー」
ミルファーが嬉しそうに小走りで先に進んでいく。
「どこ行く?」
「俺はたらふく食いたいな」
嬉しそうになって答えるバルドール。するとミルファーは少し頬を膨らませる。
「バルドールさんには聞いてないですよ。ケンゴさん、どうします?」
それを聞いていた研吾は少し苦笑い気味に答える。
「俺はどこでもいいよ。どこか美味しいところ知ってる?」
「よし、それならあそこにしようぜ!」
バルドールが指さしたのは小さな一軒のお店だった。特にメニューが書かれているわけでもなく、ただ一言『食事処』とだけ書かれていた。一体何のお店なのか……少し不安になる研吾だが、バルドールは嬉しそうに言葉を続ける。
「ここ、安くて量が多くてうまいんだよな。ミルファーも何度か行ったことあるだろ?」
「うん、ただ私には少し量が多いかも……」
「なら俺と分ける? さすがに俺もバルドールさんほど食べられないからな」
何気ない一言だったが、ミルファーは目を大きく見開くほど驚き、頬を染めながら小さく頷いた。
食事処では料理名で書かれていても何かわからないので、オススメを頼む研吾だった。が運ばれてきた料理を見て唖然となった。
「男なんだからこのくらい楽勝に食べるわよね」
高笑いするおばちゃんの好意とも嫌がらせとも取れる行動によって研吾の料理はミルファーの倍近く盛られていた。
「あっ、値段は同じでいいからね。ゆっくりしていってね」
大声で笑いながら厨房に戻っていくおばちゃん。しかし研吾は固まったまましばらく身動きが取れなかった。
「そ、そろそろ食べましょうか……」
「そ、そうだよね」
ようやく我に返った研吾は一心不乱に料理を貪り食べていくが、ミルファーと同じ量でも多いくらいなのにその倍もあってはとても食べきれる量ではなかった。研吾がもう食べられないと思った時にはまだ半分近く残っていた。
「なんだ、もういらないのか? 俺がもらっていいか?」
食べ過ぎでいっぱいになったお腹をさすっていた研吾にバルドールが救いの手を差し伸べてくれる。
「いいのですか?」
「あぁ、まだ少し食い足りなかったからな」
そういうバルドールだが、すでに研吾と同量の料理を食べた上で更にミルファーの残した分も食べていた。
(もしかしたらおばちゃんはそれを見越した上で料理を増やしてくれたのかも……)
バルドールにお皿を渡しながら研吾はふとそんなことくを考えていた。
食事に満足した研吾たちはモロゾフの家に戻ってきて残り作業を始める。
今度はキッチンや食器棚の前にやってきた。ここもモロゾフが使うには少し高い。でも他の人が使う部分でもあるのでキッチンとか自体をいじるわけにも行かない。そうなると何か台のようなものを置くしかないわけで研吾は置く台の高さを念入りに調べていた。
「うん、これなら大丈夫かな」
「何が大丈夫なんですか?」
ミルファーは何かを調べた後何度も頷く研吾を見て首を傾げていた。
「いや、このキッチンの下……わかる?」
研吾が指さした先をミルファーが見る。普通キッチンのしたと言えば収納スペースが設けてある。ここもその例に漏れずにちょっとした収納スペースになっている。
「普通に収納スペースがあるだけだよ?」
「うん、でもその更に下に何もない空間があるでしょ?」
確かにキッチンの収納スペースの下の部分に少しだけ何もない空間があった。
「確かにあるね……」
「そこに台をしまう部分を作ろうかなって思っているんだよ。キッチンにすぐ側に台がしまってあったら便利でしょ」
微笑む研吾にミルファーは確かに一理あるかもしれないと同意する。
「でも、この高さの台だとさすがに低すぎてあまり効果ないですよ」
収納スペース下は空いてると言ってもせいぜい10センチほど。たったそれだけ上がったとしてもモロゾフの背丈では使いやすくはならないだろう。
「うん、だからこれを使うんだよ」
研吾が見せてきたのは折りたたみ式の台だった。ただ、大きくするのには少し魔力を必要とするものではあったが。
「これはさっき椅子に使った素材でできてるんですね」
「そうだよ。普通に魔力を使う生活をしてるならこのくらい使えるだろうし、自分で大きくできるなら便利でしょ」
微笑みながら出来上がった台を実際にしまいつつ、最終調整していく研吾。
部屋自体には不満を持っていないようだったけど、念のために……のつもりだったけど実際に見てみるとモロゾフが使うには不便そうな部分が幾つかあった。
全て普通の人間族にあわしているからなのだろう、研吾から見たら違和感がないのだが、腰を実際に落として見ていくと頼まれていた以上に使いにくい部分を発見する。
(まずは頼まれていたイスや扉、食器棚だな。その他にはキッチンや洗面所と言った部分も少し直さないといけないな。ただ、奥さんも使うことを考えると邪魔にならないようにしないとね)
考えていたこと以上のことが必要だなと書いていた図面を取り出し、更に修正箇所を書き加えていく。
そして、バルドールが昨日採取した素材を運んで来てくれたので出来る部分から作っていくことにした。
イスの脚の部分を外すと昨日採取した木材を脚の形に切ると新しく元の場所に付け直していく。
そして4本付け直し、元の形になったので研吾は試しに座ってみる。
座り心地は普通の椅子と変わらない。
「じゃあこの椅子に魔力を込めてくれる?」
椅子から退いた研吾は椅子をミルファーの方へ近づける。
「わかりました。それじゃあ使ってみるね」
ミルファーは手を前に出し、魔力を込めてくれると脚の一つが小さく縮んだ。それを4回繰り返すとようやく椅子が小さいサイズになる。
「これはちょっと使いにくそうだね」
顎に手を当てて結果がどうなるか見ていた研吾の眉が少し釣り上がる。
「うん、小さくするまでがすこし大変ですね」
「これを一回で小さくする方法……やっぱり脚の部分を分けずに一本の木で作らないといけないか」
何度か頷いた後、今度は別の指示を出す研吾。
そして出来上がったのは一本の太い脚がついた椅子だった。
「できたな……」
「うん、できたね……」
完成した椅子を見ながら複雑な顔をする研吾たち。すると横からバルドールがきっぱりと言う。
「かっこ悪い椅子だな……」
丸太に背もたれがついたかのような形の椅子。それはお世辞にもかっこいいとは言い難かった。
「で、でもこれは一回で小さくできるし……」
小声でつぶやく研吾。ただ、さすがにこれではダメだと研吾もわかっているようだった。
「実験的なものだから……ミルファー、魔力を頼める?」
「うん、わかったよ」
ミルファーが手をかざし魔力を込めると脚の部分が小さくなる。
「まぁあの木を切っただけだもんね。もちろんこうなるよね」
少し苦笑いをしながら小さくなった椅子を眺めるミルファー。
「丸太なら一回で小さくなるなら、そこからくり抜いて脚を作ろうか」
脚だけを別で作るのではなく、それも含めて一本の木から作ってもらう。
そして、ミルファーが魔法で刻んでくれたものをよくよく見る研吾。
見た目は普通の椅子そのもの。その出来に満足した様子で何度も頷いていた。
そして、座って見て感触を調べてみるが、何も問題のないように感じられた。
「それじゃあミルファー、またお願いできる?」
再び魔力を込めるミルファー。今度は一度で椅子が小さくなる。
「見た目はうまくいったね。問題は……」
「座った感覚だよね? 早速試してみる?」
「うん、そうだね……」
すこしためらいながらも覚悟を決めた研吾は椅子へと腰を下ろしていく。
そして、実際に座ってみた後に何度か立って座ってを繰り返していた。
「意外と丈夫?」
次第に勢いを増していくがそれでも壊れる様子はない。
「むしろ小さくした方が強度はありそうだな」
バルドールが別の木に魔力を込めて小さくした後、地面を叩いていたがそれでも壊れる気配がなかった。
「小さくなったら強度も落ちると思ってたよ。でもこれなら他に使い道があるかも――」
バルドールの持っていた木を興味深く見る研吾。
「ケンゴさん、とりあえず今は――」
考え事を始めた研吾にミルファーはたまらずに声をかける。すると研吾はハッとなってミルファーにお礼を言う。
「ごめん、それじゃあとりあえず今の作り方で椅子を作っていこうか」
研吾がそう言うとミルファーたちは残りの椅子を直していく。
そして、椅子を直し終えると次は机を直していく。これも椅子と同じ要領で良かったので簡単に直し終えると次は扉に取り掛かっていく。
「ケンゴさん、ドアはどうするの?」
「そうだね……せっかくだからミルファーも考えてごらん」
研吾が悪戯っぽく微笑むのでミルファーは真剣に悩み一つ、呟いた。
「もしかして先ほどみたいに魔力を込めると小さくなる素材を使うのですか?」
考えた末、ミルファーが出してきた結論はこうだった。確かにそれでもいいかもしれないと思ったけど、そこまで無理をする必要はないと研吾はすぐ否定する。
「そこまで大変なことをしなくてもいいよ。だって開く分には困ってないみたいだからね。少し取っ手が高いだけで」
それを聞いたミルファーはハッとなり、言葉早に言ってくる。
「そっか……。モロゾフさんの開けやすい位置に取っ手があればいいだけだもんね」
今はまだ何もないちょうどモロゾフが開けやすそうな取っ手の位置で上げるしぐさをするミルファー。
「でも、取っ手が二つもあったら見た目変じゃない?」
「うん、だからこんな取っ手にするんだよ」
研吾が図面で見せてきたのは一般的に使われている横向きの取っ手ではなく縦向きの取っ手。それもモロゾフが使用しても困らないほどの長さの取っ手。違和感のあるものになるのではと懸念を示していたが、研吾の図面を見た途端にそんな心配はミルファーの中からなくなった。
「これ……、凄いね。何の違和感もないよ。それにこれだったら使うものは——」
「今あるもので全然事足りるね。それじゃあ早速取り掛かっていこうか」
研吾は持ってきた材料のなかから使えそうなものを見繕っていく。
そして、一通りの扉を直し終えたところでちょうどお昼になったので昼食をとりにミルファーとバルドールの三人で町へと繰り出していった。
「お腹すいたねー」
ミルファーが嬉しそうに小走りで先に進んでいく。
「どこ行く?」
「俺はたらふく食いたいな」
嬉しそうになって答えるバルドール。するとミルファーは少し頬を膨らませる。
「バルドールさんには聞いてないですよ。ケンゴさん、どうします?」
それを聞いていた研吾は少し苦笑い気味に答える。
「俺はどこでもいいよ。どこか美味しいところ知ってる?」
「よし、それならあそこにしようぜ!」
バルドールが指さしたのは小さな一軒のお店だった。特にメニューが書かれているわけでもなく、ただ一言『食事処』とだけ書かれていた。一体何のお店なのか……少し不安になる研吾だが、バルドールは嬉しそうに言葉を続ける。
「ここ、安くて量が多くてうまいんだよな。ミルファーも何度か行ったことあるだろ?」
「うん、ただ私には少し量が多いかも……」
「なら俺と分ける? さすがに俺もバルドールさんほど食べられないからな」
何気ない一言だったが、ミルファーは目を大きく見開くほど驚き、頬を染めながら小さく頷いた。
食事処では料理名で書かれていても何かわからないので、オススメを頼む研吾だった。が運ばれてきた料理を見て唖然となった。
「男なんだからこのくらい楽勝に食べるわよね」
高笑いするおばちゃんの好意とも嫌がらせとも取れる行動によって研吾の料理はミルファーの倍近く盛られていた。
「あっ、値段は同じでいいからね。ゆっくりしていってね」
大声で笑いながら厨房に戻っていくおばちゃん。しかし研吾は固まったまましばらく身動きが取れなかった。
「そ、そろそろ食べましょうか……」
「そ、そうだよね」
ようやく我に返った研吾は一心不乱に料理を貪り食べていくが、ミルファーと同じ量でも多いくらいなのにその倍もあってはとても食べきれる量ではなかった。研吾がもう食べられないと思った時にはまだ半分近く残っていた。
「なんだ、もういらないのか? 俺がもらっていいか?」
食べ過ぎでいっぱいになったお腹をさすっていた研吾にバルドールが救いの手を差し伸べてくれる。
「いいのですか?」
「あぁ、まだ少し食い足りなかったからな」
そういうバルドールだが、すでに研吾と同量の料理を食べた上で更にミルファーの残した分も食べていた。
(もしかしたらおばちゃんはそれを見越した上で料理を増やしてくれたのかも……)
バルドールにお皿を渡しながら研吾はふとそんなことくを考えていた。
食事に満足した研吾たちはモロゾフの家に戻ってきて残り作業を始める。
今度はキッチンや食器棚の前にやってきた。ここもモロゾフが使うには少し高い。でも他の人が使う部分でもあるのでキッチンとか自体をいじるわけにも行かない。そうなると何か台のようなものを置くしかないわけで研吾は置く台の高さを念入りに調べていた。
「うん、これなら大丈夫かな」
「何が大丈夫なんですか?」
ミルファーは何かを調べた後何度も頷く研吾を見て首を傾げていた。
「いや、このキッチンの下……わかる?」
研吾が指さした先をミルファーが見る。普通キッチンのしたと言えば収納スペースが設けてある。ここもその例に漏れずにちょっとした収納スペースになっている。
「普通に収納スペースがあるだけだよ?」
「うん、でもその更に下に何もない空間があるでしょ?」
確かにキッチンの収納スペースの下の部分に少しだけ何もない空間があった。
「確かにあるね……」
「そこに台をしまう部分を作ろうかなって思っているんだよ。キッチンにすぐ側に台がしまってあったら便利でしょ」
微笑む研吾にミルファーは確かに一理あるかもしれないと同意する。
「でも、この高さの台だとさすがに低すぎてあまり効果ないですよ」
収納スペース下は空いてると言ってもせいぜい10センチほど。たったそれだけ上がったとしてもモロゾフの背丈では使いやすくはならないだろう。
「うん、だからこれを使うんだよ」
研吾が見せてきたのは折りたたみ式の台だった。ただ、大きくするのには少し魔力を必要とするものではあったが。
「これはさっき椅子に使った素材でできてるんですね」
「そうだよ。普通に魔力を使う生活をしてるならこのくらい使えるだろうし、自分で大きくできるなら便利でしょ」
微笑みながら出来上がった台を実際にしまいつつ、最終調整していく研吾。
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