俺の彼女がウブすぎる ~初々しい二人は一緒に帰ったことをきっかけに仲を深める~

空野進

文字の大きさ
25 / 30

25.

しおりを挟む
 遊園地当日、集合時間より早くに俺は結衣の家へとやってきていた。


「あっ、卓人くん。迎えに来てくれたの?」
「あぁ、一緒に行こうと思ってな。それよりもその鞄――」
「うん、お昼をみんなで食べようと思って作っておいたの」


 結衣の手には大きな鞄があった。
 さすがに重たそうに見えるな。


「その鞄、俺が持とうか?」
「そ、そんなことをしたら卓人くんに悪いよ……」
「いや、このくらいさせてくれ」
「うーん、いいのかな?」


 すこし悩む結衣。
 ただ、最後には俺に鞄を渡してくれる。
 そして、頬を染めながらも嬉しそうに微笑んでくれる。





 二人で手を繋ぎながら駅へと向かう。
 すると既に相場と佐倉は待っていた。
 ただ、何やら口げんかをしているようだった。


「もう、俺が荷物を持つって言ってるだろ!」
「持たなくていいって言ってるの!」


 何だろう、近視感がある光景だ。


「なんだかさっきの私たちみたいなことをしてるね」
「そうだな……」
「あっ、結衣ちゃん! おはよー」


 俺たちの姿に気づいた佐倉が手を振りながら近付いてくる。
 そして、相場の方は大きくため息を吐いていた。


「全く、荷物くらい持たせてくれても良いのにな……。三島もそう思うよな?」
「……そうだな」


 実際に俺自身はもっているわけだし頷くことしかできなかった。


「そういえばお前たち、いつの間に付き合ったんだ? 俺は全然気がつかなかったぞ?」


 気になったことを聞いてみると相場は不思議そうに聞き返してくる。


「付き合っている? 誰と誰がだ?」
「お前と佐倉だよ」
「いやいや、俺たちが付き合っているわけないだろう?」
「えっ!?」


 そのことを聞いて俺は思わず驚いてしまう。
 そして、全く同じことを佐倉にも聞いていたようで結衣も隣で驚いていた。


「えっ、うそ!? 絶対二人は付き合っていると思ったよ?」
「ないない、だって相手は相場だよ?」
「そうだな、俺たちが付き合うなんて考えられないよな」


 二人して笑い合う相場と佐倉。
 それを見て俺と結衣は視線を合わせる。

 その目はこの二人、相性が良いんだから何かきっかけがあったら付き合うんじゃないか?って訴えかけてきているようだった。

 だからこそ俺も結衣の耳元でコソコソと話しかける。


「それなら二人を良い関係にすると良いんじゃないか? せっかく遊園地に行くんだから――」
「そうだね、それがいいよね」


 俺たちはお互い頷いていた。



 遊園地にたどり着くと早速佐倉が絶叫マシーンを指さしてくる。


「まずここに来たらあれだよね?」
「えっと、その……、有紗ちゃん? 私はその――」
「そうだよな、遊園地に来たらあれを乗るしかないよな」


 結衣が怖そうな表情をしていたが、そんなときに佐倉が小声で何かを話す。


「あぁいう絶叫系なら三島と手を繋いでても大丈夫でしょ? なんだったら抱きついてもいいんだよ?」
「そ、そんなことしないよ……。それに手は……」


 既に俺と結衣の手は繋がれている。
 それを見て佐倉は驚いた様子だった。


「へぇ……、もう人前で手を繋いでいても大丈夫なんだね。安心したよ」
「えっ、うん。なんだがずっと手を繋いでいたら慣れてきたの」
「まぁ、無理に離す方が逆に意識してしまって恥ずかしいな……」
「うんうん、良い兆候だね。これならお赤飯が必要になる日も近いね」


 うんうんと嬉しそうに頷く佐倉。
 そして、そんな話をしながらさりげなく絶叫マシーンの列に並んでいたようで気がつくと俺たちの出番になっていた。


「そ、その……、卓人くん……」
「あぁ、結衣は俺にしっかりしがみついておけ」
「うん、ありがとう……」


 結衣は俺の腕にしがみついてくる。
 そのさいに手に感じた柔らかい感触で俺の頬は赤く染まるが、とりあえず平然を装う。


「そ、それよりもしっかり目を閉じておけ。始まったら一瞬で終わるから……」
「うん、わかったよ」


 言うとおりに目をギュッと閉じる結衣。
 そして、ゆっくり動き出す絶叫マシーン。
 初めは大丈夫そうだったが落ち始めた瞬間に結衣が悲鳴を上げる。そして、それは最後まで止むことはなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

雨の日にやさぐれお姉さんを拾ったと思ったら胃袋も心も掴んでくるスーパーお姉さんだった

九戸政景
恋愛
新人小説家の由利美音は、ある日の夜に一人の女性を拾う。太刀川凛莉と名乗る女性との共同生活が始まる中、様々な出会いを果たしながら美音は自身の過去とも向き合っていく。

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

ストーカーに狙われたので歳上騎士様に護衛をお願いしました。

ねーさん
恋愛
 「氷の彫刻」と呼ばれる美貌の兄を持つ公爵令嬢のクラリッサは不審な視線に悩まされていた。  卒業を二日後に控えた朝、教室のクラリッサの机に置かれた一通の偏執狂者からの手紙。  親友イブを通じてイブの婚約者、近衛騎士団第四分団員のジョーンズに相談すると、第四分団長ネイトがクラリッサのパートナーとして卒業パーティーに出席してくれる事になって─── 〈注〉 このお話は「婚約者が記憶喪失になりました。」と「元騎士の歳上公爵様がまさかの××でした!?」の続編になります。

ホストと女医は診察室で

星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

ゼロから千まで

三旨加泉
恋愛
病院で目覚めた千歳。隣には友人の彼氏がいて…?執着の強い相手に振り回される千歳の運命はいかにー

処理中です...