ダンジョンマスター配信中!~投げ銭(スパチャ)で楽々ダンジョン強化〜

空野進

文字の大きさ
1 / 21

第1話:マスター、配信する

しおりを挟む
「――今日も冒険者ゼロか……」



 Fランクダンジョンのマスターである如月奏きさらぎかなたは空中に浮かび上がったモニターを見て、ため息を吐いていた。



「残りDPも10……。何か手を打たないとまずいよね……」



 ダンジョンは冒険者が来てくれないと成り立たない。
 その理由はダンジョン内で生活をするためには、DPダンジョンポイントを稼がないといけないことにあった。

 何をするにもDPが消費される。
 日常品を出すことから、ダンジョンを強化することまで……。

 そして、DPを取得する方法は主に冒険者に依存していた。


●ダンジョンに入った冒険者数(一人あたり1DP)
●冒険者の滞在時間(レベル×時間×1DP)
●冒険者を倒す(レベル×10DP)
●金と交換する(200円で1DP)


 ダンジョンマスターが金を得る方法は、基本的に倒した冒険者の装備売却費用だった。
 つまり、冒険者が来てくれないと話にもならないのだ。



「何とかする方法はないかな……」



 でも、思いつくことは全て行っていた。


 ダンジョン前で呼び込み → そもそも、人が来なくて撃沈。
 町へ呼び込み → Fランクといった瞬間に聞いてくれる人がいなくて撃沈。


 結果は全てにおいて惨敗。


 一体他のダンジョンではどうしているのだろう……、と調べてみる。
 すると、Sランクダンジョン攻略配信、というものが始まるところだった。



「ダンジョン配信か……」



 現代にダンジョンが現れ、人々が魔法やスキルを使えるようになってから早百年。
 ダンジョンは冒険者が一攫千金を狙う場所であるとともに、人々の娯楽施設としても広まっていった。

 そして、今では配信のためにダンジョンに潜る、配信系冒険者がいるほどだった。
 その広告収益や投げ銭は時として、ダンジョン攻略での収入を上回る、といわれるほど。



「確かにダンジョンマスターをやりながらでも配信は行える……。それにマスターで配信をしてる人って少なくないかな?」



 モニターを新しく出して、『ダンジョンマスター 配信者』で検索してみる。
 すると、検索にヒットした人物は一人だけ。
 その人物もほとんど配信を行っていないようだった。


 生存を賭けて勝負するにはここしかない。



「でも、人前に出ないといけないのか……」



 お世辞にも僕は人付き合いが得意ではない。
 知らない人を前にすると、緊張して言葉が出なくなるほどだった。


 でも、配信だとあくまでも向かい合っているのはカメラ。

 ……いや、ダンジョンスキルを使えば、カメラすら必要ない。
 ダンジョン内だと、好きなところを録画配信できるという、ダンジョンマスターの特権。
 これを利用して、配信動画を作れば――。



「……いけるかもしれない。失敗してもDPは減らないし――」



 覚悟を決めると両手を握りしめて気合いを入れる。


 少しでも収入の足しになってくれたら……。
 あわよくば冒険者が来てくれるようになったら……。



◇◇◇



 配信の準備はつつがなく進んでいた。
 まずは魔物一匹すらいなかったダンジョンには、スライムを召喚しておいた。



―――――――――――――――――――――
レベル:1 種族:スライム(ランク:F)
HP:5/5 MP:0/0
筋力:1 耐久:1 魔力:1 精神:1 速度:1
スキル:なし
経験値:1 お金:100円
―――――――――――――――――――――



 召喚時にモニターに現れたステータスはこんな感じだった。

 初心者冒険者でも一撃で倒せるレベル……。
 しかし、なんといっても召喚DPが格安。

 全て込み込みでなんと、消費DPが1で済んでしまうのだ。
 弱小ダンジョンの頼れる味方。
 ある程度、魔物の数がいないとやはりダンジョンとして映えないので、DPが少ないマスターはこうやって、スライムを召喚して、頭数を増やすのだった。

 もちろん、スライムで冒険者討伐なんてことは絶対にできない。
 だから、本当に数稼ぎでしかなかったのだ。



「魔物がいて、配信準備もできて……、これで大丈夫だよね?」



 僕自身も服装をそれらしい格好にしている。
 普段着の上から黒のコート。武器は木の杖。



―――――――――――――――――――――
如月奏きさらぎかなた
レベル:1 性別:男 職業:ダンジョンマスター(ランク:F)
HP:10/10 MP:20/20
筋力:1 耐久:1 魔力:3 精神:2 速度:2
スキル:【ダンジョンステータス(レベル:1)】【ダンジョン創造(レベル:1)】【ダンジョン把握(レベル:1)】【初級魔法(レベル:1)】
所持金:0円 所持DP:9
―――――――――――――――――――――



 僕自身のステータスもスライムのそれとほとんど大差なかった。
 ダンジョンマスターとしては最弱、といっても過言ではないだろう。

 違う点といえば、初級の魔法が使えること。
 あとはマスタースキルが使える程度だった。



「とにかく準備は整ったよね。よし、配信を始めよう」



 もう一度大きく深呼吸をすると、ダンジョン紹介の配信を始めていた。



◇◇◇



「つ、疲れた……」



 配信を終えた僕は、迷うことなくベッドに飛び込んでいた。

 このまま、眠りについてしまいたい欲望に駆られる。
 でも、辛うじて踏みとどまっていた。



「視聴者はどうなってるかな……?」



 仰向けになり、空中に浮かぶモニターを操作して、配信の視聴者を見る。


 視聴者数:1


 うん、最初はこんなものだよね?


 収益化ができるようになるにはお気に入り数と視聴時間、という制約がある。
 先は長いけどまだまだ頑張ろう!

 大きくあくびをすると、モニターを消してそのまま眠りについていた。

 だからこそ僕は気づかなかった。
 深夜にちょっとずつ動画は拡散されていき、朝にはとんでもない視聴者数になっていることを――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

処理中です...