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第21話:緊張の瞬間
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「おい、本当にあのカナタダンジョンのランクアップ試験なのか!?」
「はい、もちろんですよ?」
「よしわかった、俺が行く!」
「ちょっと待って下さい! これを受けたのは私ですよ? 当然ダンジョンに行くのは私じゃないですか?」
奏が出て行った後の冒険者組合では、誰がランクアップ試験の試験官として、ダンジョンへ行くか争っていた。
カナタダンジョンと言えば、低ランク最高効率のダンジョン。
数日潜るだけでレベルを上げることのできる、信じられないところだった。
だからこそ、職員の皆が行きたがるのは仕方がない。
冒険者組合の職員とはいえ、ダンジョン内で手に入れたからは自分のもの、経験値も自分のもの。
そして、レベルが高い人ほど上の待遇を約束されるのは、職員間であっても、当然のことだった。
しかし、冒険者組合の仕事もあるので、なかなかレベルを上げる暇がない。
そんな時に舞い込んできたカナタダンジョン、ランクアップ試験。
職員がこぞっていきたがるのは。何もおかしいことではなかった。
「私が直々にランクアップ試験の申し込みを受けたのですよ? なら私は行く権利があるはずです!」
「お前は魔法使いだろう? それなら盾となる戦士は必要じゃないか? つまり俺も行ったほうが良いわけだ」
「あのダンジョンはFランクとは思えない強さの魔物がいます。それなら回復職のヒーラーもいた方がいいはずですよ?」
「スラ妖精は魔法が効きにくいだろう? それならアタッカーも必須だろう?」
「はぁ……、分かりました。Fランクダンジョンには過剰すぎますけれども、みんなで行きましょう。そもそも、あのダンジョンを通常のFランクダンジョンと考えるのがおかしいですもんね」
女性は諦めにも似た表情を浮かべながら、渋々頷いていた。
◆◆◆
いよいよ冒険者組合の人たちが来る日が来てしまった。
朝から僕はそわそわしながらマスタールームの中をいったりきたりしていた。
「今から焦っていてもしょうがないでしょう。奏さんはどっしり構えていてください」
「そうは言っても、やっぱり緊張するよ。こういったことはしたことがないから……」
「初めてのランクアップ試験ですもんね。 ただ F ランクダンジョンって考えると普通に強い魔物が入っているかどうか、ぐらいの試験ですよ? 私も昔職員の人に頼まれてランクアップ試験の調査に行ったことがありますけれども……」
「それでもしEランクダンジョンにはまだなれない、と言われたどうしようかなって思ってね」
「このダンジョンがEランクダンジョンになれないなら、この世にEランクダンジョンなんて存在しませんよ」
遥は呆れ顔を浮かべながら、きっぱりと言い切ってくる。
「むしろ既に魔物だけ見るとこのダンジョンは C ランク……、いえ B ランクでもおかしくないです」
「まあ、2階層のボスが S ランクモンスターだもんね」
「ダイヤスラ妖精は突破されない前提ですからね……。走破しようと考えたら、 S ランクが必須ですよ。ダイヤスラ妖精は特定の条件を除いて、そう倒せる魔物ではないですから……」
「まあそうだよね……。今日も冒険者をたくさん倒してたもんね……」
そのおかげで、今もなおDPは増え続け、ダンジョンは3階層に広げることができ、魔物もどんどん増やしていくことができていた。
そして、暇があれば僕たちもレベル上げをしている。
ただ、最近は忙しすぎて、 レベルは30のままだけど。
多少割高になるか、魔物たちは自動復活にしてあるけど、それでも再生が追いつかないほどに……。
「僕はこれから何をしたらいいのかな? 組合の人が来るって事は出迎えないといけないのかな。えっと、お茶お茶……」
「別に挨拶をしに来るわけじゃないですから、いいですよ。むしろ、それいっぱい魔物を召喚していて迎えてあげた方が喜んでいただけるかと……」
「そっか……。 ならスラ妖精の数を増やしておくかな……」
「それがいいですね。職員の人もレベル上げはしたいですから、 喜んでくれると思いますよ 」
「えっ? 職員の人がレベル上げをするの?」
「もちろんですよ。 今回みたいにダンジョンの視察がありますからね。高い人だと私に匹敵するほどですよ」
Aランク冒険者である遥に匹敵するのか。それはかなりの能力を持っているようだ……。
これは本当に冒険者組合で暴れるのは、命取りだとわかるな……。
嫌な想像をしてしまい、僕は冷や汗を流してしまう。
「そんなに強い人が来たら僕のダンジョンなんて簡単に突破されるよ……」
「いえ、ここは Fランクダンションのつもりで来られると思いますので、多分冒険者が一人とか二人と同レベルの人だと思いますよ」
まあ、そうなるよね。
いきなり高ランク冒険者が多数現れる…… なんておかしいことはないよね。
僕はどこか安心していた。
しかしそれがすぐに裏切られることになるとは思ってもいなかった。
「はい、もちろんですよ?」
「よしわかった、俺が行く!」
「ちょっと待って下さい! これを受けたのは私ですよ? 当然ダンジョンに行くのは私じゃないですか?」
奏が出て行った後の冒険者組合では、誰がランクアップ試験の試験官として、ダンジョンへ行くか争っていた。
カナタダンジョンと言えば、低ランク最高効率のダンジョン。
数日潜るだけでレベルを上げることのできる、信じられないところだった。
だからこそ、職員の皆が行きたがるのは仕方がない。
冒険者組合の職員とはいえ、ダンジョン内で手に入れたからは自分のもの、経験値も自分のもの。
そして、レベルが高い人ほど上の待遇を約束されるのは、職員間であっても、当然のことだった。
しかし、冒険者組合の仕事もあるので、なかなかレベルを上げる暇がない。
そんな時に舞い込んできたカナタダンジョン、ランクアップ試験。
職員がこぞっていきたがるのは。何もおかしいことではなかった。
「私が直々にランクアップ試験の申し込みを受けたのですよ? なら私は行く権利があるはずです!」
「お前は魔法使いだろう? それなら盾となる戦士は必要じゃないか? つまり俺も行ったほうが良いわけだ」
「あのダンジョンはFランクとは思えない強さの魔物がいます。それなら回復職のヒーラーもいた方がいいはずですよ?」
「スラ妖精は魔法が効きにくいだろう? それならアタッカーも必須だろう?」
「はぁ……、分かりました。Fランクダンジョンには過剰すぎますけれども、みんなで行きましょう。そもそも、あのダンジョンを通常のFランクダンジョンと考えるのがおかしいですもんね」
女性は諦めにも似た表情を浮かべながら、渋々頷いていた。
◆◆◆
いよいよ冒険者組合の人たちが来る日が来てしまった。
朝から僕はそわそわしながらマスタールームの中をいったりきたりしていた。
「今から焦っていてもしょうがないでしょう。奏さんはどっしり構えていてください」
「そうは言っても、やっぱり緊張するよ。こういったことはしたことがないから……」
「初めてのランクアップ試験ですもんね。 ただ F ランクダンジョンって考えると普通に強い魔物が入っているかどうか、ぐらいの試験ですよ? 私も昔職員の人に頼まれてランクアップ試験の調査に行ったことがありますけれども……」
「それでもしEランクダンジョンにはまだなれない、と言われたどうしようかなって思ってね」
「このダンジョンがEランクダンジョンになれないなら、この世にEランクダンジョンなんて存在しませんよ」
遥は呆れ顔を浮かべながら、きっぱりと言い切ってくる。
「むしろ既に魔物だけ見るとこのダンジョンは C ランク……、いえ B ランクでもおかしくないです」
「まあ、2階層のボスが S ランクモンスターだもんね」
「ダイヤスラ妖精は突破されない前提ですからね……。走破しようと考えたら、 S ランクが必須ですよ。ダイヤスラ妖精は特定の条件を除いて、そう倒せる魔物ではないですから……」
「まあそうだよね……。今日も冒険者をたくさん倒してたもんね……」
そのおかげで、今もなおDPは増え続け、ダンジョンは3階層に広げることができ、魔物もどんどん増やしていくことができていた。
そして、暇があれば僕たちもレベル上げをしている。
ただ、最近は忙しすぎて、 レベルは30のままだけど。
多少割高になるか、魔物たちは自動復活にしてあるけど、それでも再生が追いつかないほどに……。
「僕はこれから何をしたらいいのかな? 組合の人が来るって事は出迎えないといけないのかな。えっと、お茶お茶……」
「別に挨拶をしに来るわけじゃないですから、いいですよ。むしろ、それいっぱい魔物を召喚していて迎えてあげた方が喜んでいただけるかと……」
「そっか……。 ならスラ妖精の数を増やしておくかな……」
「それがいいですね。職員の人もレベル上げはしたいですから、 喜んでくれると思いますよ 」
「えっ? 職員の人がレベル上げをするの?」
「もちろんですよ。 今回みたいにダンジョンの視察がありますからね。高い人だと私に匹敵するほどですよ」
Aランク冒険者である遥に匹敵するのか。それはかなりの能力を持っているようだ……。
これは本当に冒険者組合で暴れるのは、命取りだとわかるな……。
嫌な想像をしてしまい、僕は冷や汗を流してしまう。
「そんなに強い人が来たら僕のダンジョンなんて簡単に突破されるよ……」
「いえ、ここは Fランクダンションのつもりで来られると思いますので、多分冒険者が一人とか二人と同レベルの人だと思いますよ」
まあ、そうなるよね。
いきなり高ランク冒険者が多数現れる…… なんておかしいことはないよね。
僕はどこか安心していた。
しかしそれがすぐに裏切られることになるとは思ってもいなかった。
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