21 / 21
第21話:緊張の瞬間
しおりを挟む
「おい、本当にあのカナタダンジョンのランクアップ試験なのか!?」
「はい、もちろんですよ?」
「よしわかった、俺が行く!」
「ちょっと待って下さい! これを受けたのは私ですよ? 当然ダンジョンに行くのは私じゃないですか?」
奏が出て行った後の冒険者組合では、誰がランクアップ試験の試験官として、ダンジョンへ行くか争っていた。
カナタダンジョンと言えば、低ランク最高効率のダンジョン。
数日潜るだけでレベルを上げることのできる、信じられないところだった。
だからこそ、職員の皆が行きたがるのは仕方がない。
冒険者組合の職員とはいえ、ダンジョン内で手に入れたからは自分のもの、経験値も自分のもの。
そして、レベルが高い人ほど上の待遇を約束されるのは、職員間であっても、当然のことだった。
しかし、冒険者組合の仕事もあるので、なかなかレベルを上げる暇がない。
そんな時に舞い込んできたカナタダンジョン、ランクアップ試験。
職員がこぞっていきたがるのは。何もおかしいことではなかった。
「私が直々にランクアップ試験の申し込みを受けたのですよ? なら私は行く権利があるはずです!」
「お前は魔法使いだろう? それなら盾となる戦士は必要じゃないか? つまり俺も行ったほうが良いわけだ」
「あのダンジョンはFランクとは思えない強さの魔物がいます。それなら回復職のヒーラーもいた方がいいはずですよ?」
「スラ妖精は魔法が効きにくいだろう? それならアタッカーも必須だろう?」
「はぁ……、分かりました。Fランクダンジョンには過剰すぎますけれども、みんなで行きましょう。そもそも、あのダンジョンを通常のFランクダンジョンと考えるのがおかしいですもんね」
女性は諦めにも似た表情を浮かべながら、渋々頷いていた。
◆◆◆
いよいよ冒険者組合の人たちが来る日が来てしまった。
朝から僕はそわそわしながらマスタールームの中をいったりきたりしていた。
「今から焦っていてもしょうがないでしょう。奏さんはどっしり構えていてください」
「そうは言っても、やっぱり緊張するよ。こういったことはしたことがないから……」
「初めてのランクアップ試験ですもんね。 ただ F ランクダンジョンって考えると普通に強い魔物が入っているかどうか、ぐらいの試験ですよ? 私も昔職員の人に頼まれてランクアップ試験の調査に行ったことがありますけれども……」
「それでもしEランクダンジョンにはまだなれない、と言われたどうしようかなって思ってね」
「このダンジョンがEランクダンジョンになれないなら、この世にEランクダンジョンなんて存在しませんよ」
遥は呆れ顔を浮かべながら、きっぱりと言い切ってくる。
「むしろ既に魔物だけ見るとこのダンジョンは C ランク……、いえ B ランクでもおかしくないです」
「まあ、2階層のボスが S ランクモンスターだもんね」
「ダイヤスラ妖精は突破されない前提ですからね……。走破しようと考えたら、 S ランクが必須ですよ。ダイヤスラ妖精は特定の条件を除いて、そう倒せる魔物ではないですから……」
「まあそうだよね……。今日も冒険者をたくさん倒してたもんね……」
そのおかげで、今もなおDPは増え続け、ダンジョンは3階層に広げることができ、魔物もどんどん増やしていくことができていた。
そして、暇があれば僕たちもレベル上げをしている。
ただ、最近は忙しすぎて、 レベルは30のままだけど。
多少割高になるか、魔物たちは自動復活にしてあるけど、それでも再生が追いつかないほどに……。
「僕はこれから何をしたらいいのかな? 組合の人が来るって事は出迎えないといけないのかな。えっと、お茶お茶……」
「別に挨拶をしに来るわけじゃないですから、いいですよ。むしろ、それいっぱい魔物を召喚していて迎えてあげた方が喜んでいただけるかと……」
「そっか……。 ならスラ妖精の数を増やしておくかな……」
「それがいいですね。職員の人もレベル上げはしたいですから、 喜んでくれると思いますよ 」
「えっ? 職員の人がレベル上げをするの?」
「もちろんですよ。 今回みたいにダンジョンの視察がありますからね。高い人だと私に匹敵するほどですよ」
Aランク冒険者である遥に匹敵するのか。それはかなりの能力を持っているようだ……。
これは本当に冒険者組合で暴れるのは、命取りだとわかるな……。
嫌な想像をしてしまい、僕は冷や汗を流してしまう。
「そんなに強い人が来たら僕のダンジョンなんて簡単に突破されるよ……」
「いえ、ここは Fランクダンションのつもりで来られると思いますので、多分冒険者が一人とか二人と同レベルの人だと思いますよ」
まあ、そうなるよね。
いきなり高ランク冒険者が多数現れる…… なんておかしいことはないよね。
僕はどこか安心していた。
しかしそれがすぐに裏切られることになるとは思ってもいなかった。
「はい、もちろんですよ?」
「よしわかった、俺が行く!」
「ちょっと待って下さい! これを受けたのは私ですよ? 当然ダンジョンに行くのは私じゃないですか?」
奏が出て行った後の冒険者組合では、誰がランクアップ試験の試験官として、ダンジョンへ行くか争っていた。
カナタダンジョンと言えば、低ランク最高効率のダンジョン。
数日潜るだけでレベルを上げることのできる、信じられないところだった。
だからこそ、職員の皆が行きたがるのは仕方がない。
冒険者組合の職員とはいえ、ダンジョン内で手に入れたからは自分のもの、経験値も自分のもの。
そして、レベルが高い人ほど上の待遇を約束されるのは、職員間であっても、当然のことだった。
しかし、冒険者組合の仕事もあるので、なかなかレベルを上げる暇がない。
そんな時に舞い込んできたカナタダンジョン、ランクアップ試験。
職員がこぞっていきたがるのは。何もおかしいことではなかった。
「私が直々にランクアップ試験の申し込みを受けたのですよ? なら私は行く権利があるはずです!」
「お前は魔法使いだろう? それなら盾となる戦士は必要じゃないか? つまり俺も行ったほうが良いわけだ」
「あのダンジョンはFランクとは思えない強さの魔物がいます。それなら回復職のヒーラーもいた方がいいはずですよ?」
「スラ妖精は魔法が効きにくいだろう? それならアタッカーも必須だろう?」
「はぁ……、分かりました。Fランクダンジョンには過剰すぎますけれども、みんなで行きましょう。そもそも、あのダンジョンを通常のFランクダンジョンと考えるのがおかしいですもんね」
女性は諦めにも似た表情を浮かべながら、渋々頷いていた。
◆◆◆
いよいよ冒険者組合の人たちが来る日が来てしまった。
朝から僕はそわそわしながらマスタールームの中をいったりきたりしていた。
「今から焦っていてもしょうがないでしょう。奏さんはどっしり構えていてください」
「そうは言っても、やっぱり緊張するよ。こういったことはしたことがないから……」
「初めてのランクアップ試験ですもんね。 ただ F ランクダンジョンって考えると普通に強い魔物が入っているかどうか、ぐらいの試験ですよ? 私も昔職員の人に頼まれてランクアップ試験の調査に行ったことがありますけれども……」
「それでもしEランクダンジョンにはまだなれない、と言われたどうしようかなって思ってね」
「このダンジョンがEランクダンジョンになれないなら、この世にEランクダンジョンなんて存在しませんよ」
遥は呆れ顔を浮かべながら、きっぱりと言い切ってくる。
「むしろ既に魔物だけ見るとこのダンジョンは C ランク……、いえ B ランクでもおかしくないです」
「まあ、2階層のボスが S ランクモンスターだもんね」
「ダイヤスラ妖精は突破されない前提ですからね……。走破しようと考えたら、 S ランクが必須ですよ。ダイヤスラ妖精は特定の条件を除いて、そう倒せる魔物ではないですから……」
「まあそうだよね……。今日も冒険者をたくさん倒してたもんね……」
そのおかげで、今もなおDPは増え続け、ダンジョンは3階層に広げることができ、魔物もどんどん増やしていくことができていた。
そして、暇があれば僕たちもレベル上げをしている。
ただ、最近は忙しすぎて、 レベルは30のままだけど。
多少割高になるか、魔物たちは自動復活にしてあるけど、それでも再生が追いつかないほどに……。
「僕はこれから何をしたらいいのかな? 組合の人が来るって事は出迎えないといけないのかな。えっと、お茶お茶……」
「別に挨拶をしに来るわけじゃないですから、いいですよ。むしろ、それいっぱい魔物を召喚していて迎えてあげた方が喜んでいただけるかと……」
「そっか……。 ならスラ妖精の数を増やしておくかな……」
「それがいいですね。職員の人もレベル上げはしたいですから、 喜んでくれると思いますよ 」
「えっ? 職員の人がレベル上げをするの?」
「もちろんですよ。 今回みたいにダンジョンの視察がありますからね。高い人だと私に匹敵するほどですよ」
Aランク冒険者である遥に匹敵するのか。それはかなりの能力を持っているようだ……。
これは本当に冒険者組合で暴れるのは、命取りだとわかるな……。
嫌な想像をしてしまい、僕は冷や汗を流してしまう。
「そんなに強い人が来たら僕のダンジョンなんて簡単に突破されるよ……」
「いえ、ここは Fランクダンションのつもりで来られると思いますので、多分冒険者が一人とか二人と同レベルの人だと思いますよ」
まあ、そうなるよね。
いきなり高ランク冒険者が多数現れる…… なんておかしいことはないよね。
僕はどこか安心していた。
しかしそれがすぐに裏切られることになるとは思ってもいなかった。
1
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる