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翌日、カイはいつもと同じようにプラークのカフェへと出向いた。
「い、いらっしゃいませ……。お、お一人様でしょうか?」
たどたどしい口調で小さな少女に出迎えられる。
(あれっ、違う店に来てしまったか?)
思わず首を傾げていたが、店は間違えていなかった。
よく見ると奥にはプラークがいる。
(そうか、人を雇ったって言っていたな。でも、この子……)
見覚えのあるその姿にカイは首を傾げる。
そこでハッと思い出す。
「そうか、君はあの冒険者ギルドの――」
「は、はい、元々冒険者ギルドで受付をしていました。そういえばカイさんは冒険者ギルドに来られていましたね」
ようやく少女の方もカイのことを思い出す。
「がははっ、どうだ。本当に俺の店に新しい従業員が来ただろう?」
プラークが嬉しそうに話しかけてくる。
「本当だな。で、どこで誘拐してきたんだ?」
「そんなわけないだろう! 一応借金の形に働いて貰うことになってるだけだ」
「借金……?」
「あっ、はい……。実は以前にその……」
言いにくそうにする少女。
その態度でおおよそ何があったか判断がついた。
Sランク冒険者、マーグ。
彼の暗殺を依頼したのは冒険者ギルドの誰かだと思ったが、ギルド長ではなさそうだった。
ただ、職員の誰かだと報酬が払えないと思ったが、なるほど、こういった方法をとっていたのか。
「何か変なことをされたらいつでも言えよ」
「だ、大丈夫ですよ。とても良くしていただいておりますし……。それに――」
少女はカイの顔をジッと見てくる。
「そいつはお前の奴隷としても登録してあるぞ?」
「はあっ!? どうしてそんなことになってるんだ?」
突然のプラークの報告にカイは思わず声をあげる。
よく見ると少女の首には奴隷の証たる首輪がつけられていた。
「だから、金じゃない報酬って言っただろう? お前も身の回りのことをしてくれる子がいた方が動きやすくなるだろうし……」
「いやいや、ただでさえ、正体がばれたら大変なことになるんだぞ!? なんでバレる可能性を広げていくんだ!」
プラークの考えが読めずに思わず声を荒げてしまう。
すると少女がピクッと肩を振るわせる。
「まぁ、それも考えたんだ。だからこその奴隷だ。借金の形に……なら、奴隷になる理由も充分だし、それなら口を割ることはない。どうだ?」
「どうだ、と言われても……」
「あ、あの、やっぱりご迷惑だったでしょうか? わ、私に取り柄なんてありませんので……、その……。やっぱりあのままあのときに死んでおけば――」
それを聞き、カイは少女がただならぬ理由を持っていることに気がついた。
(そうだよな。ただの少女がこんな怪しげなプラークに暗殺の依頼を出すはずがないよな)
「一体何があったんだ?」
「いや、この子は両親があのマーグに殺されたんだ。しかも、理由が動きが遅い……とかいう理由でな」
「なんだ、それ……」
おおよそ人を殺す理由になっていない。
ただ、そんな理不尽さをカイも経験してきた。
だからこそ少女に親近感を覚える。
「相手はSランク冒険者だからな。やつに取ったら少し払っただけなんだろうな。ただ、その強い衝撃で壁にたたきつけられたその子の両親は――」
「なるほどな。それで絶望のあまり死のうとしていたときに死神の声に耳を貸してしまったと……」
「誰が死神だ!!」
プラークが思わず声をあげてくる。
そんなやりとりを見て少女が小さく微笑んでいた。
「それで、こんな寂れたカフェの従業員として働く代わりに俺への依頼を出した訳か……」
「そういうことだ。ただ、依頼自体もいつ行われるかわからないから、それまでに充分金を稼いでおけ……と言ったんだ。少しでも金を稼げばその分だけ、従業員としている時間を減らすという約束でな。まさか、一日で終えてくるのは予想外だったが」
「なるほど。そういえば今まではギルド前に来ても強引な勧誘はされたことはないのだが、あのときだけはされたのにはそういった事情があった訳か」
「す、すみません。」
少女が申し訳なさそうに謝ってくる。
「いや、事情もわかったし、もう済んだことだ。気にするな。それよりも――」
これからこの少女をどうするか……。
さすがにSランク冒険者暗殺の依頼主ともなると冒険者ギルドの連中に狙われかねない。
「はぁ……、そうだな。わかったよ。ただ……」
カイはさっとナイフで首輪を切り取る。
「奴隷というのはなしだ。昼間はプラークの店で。残りの時間は俺の家事をしてもらう。それでいいか?」
「い、いいのですか? だって私の借金はすごい額で……」
「その支払い相手が俺だからな。気にするな。プラークもそれでいいか?」
「俺は元々従業員が欲しかっただけだからな」
「ということだ。これからよろしく頼むな。……えっと」
「あっ、私はチルといいます。チル・リーヴァです」
チルが頭を下げてくる。
「あぁ、よろしく頼む。俺はカイだ。で、こっちがプラーク」
「俺はもう自己紹介を済ませてるぞ」
「ふふっ……」
チルが小さく微笑む。
ただ、それとは別にプラークが耳元で聞いてくる。
「もしこの子からお前の情報が漏れたらどうするんだ?」
「そのときは名前を捨てるだけだな。どうせいくつもあるうちの一つだ」
「まぁ、それもそうだな。それにしても絶対に越えられないと言われている暗殺者ランク一位から三位が全員お前だとは誰も思わないよな」
「……まぁな」
(実際は他にもあるんだけどな……)
ただ、プラークに仲介をしてもらってるのはその三人だけであとはカイ自身が直接やりとりをしている。
だからプラーク自身が知らないのも何人かいた。
これも、情報を漏れたときのためで、いざという時に捨てて別の名前にいけるように……ということだった。
「と、とにかく、これからよろしくお願いします」
チルが頭を下げてくる。
「そうだな、こっちこそよろしく頼む」
「い、いらっしゃいませ……。お、お一人様でしょうか?」
たどたどしい口調で小さな少女に出迎えられる。
(あれっ、違う店に来てしまったか?)
思わず首を傾げていたが、店は間違えていなかった。
よく見ると奥にはプラークがいる。
(そうか、人を雇ったって言っていたな。でも、この子……)
見覚えのあるその姿にカイは首を傾げる。
そこでハッと思い出す。
「そうか、君はあの冒険者ギルドの――」
「は、はい、元々冒険者ギルドで受付をしていました。そういえばカイさんは冒険者ギルドに来られていましたね」
ようやく少女の方もカイのことを思い出す。
「がははっ、どうだ。本当に俺の店に新しい従業員が来ただろう?」
プラークが嬉しそうに話しかけてくる。
「本当だな。で、どこで誘拐してきたんだ?」
「そんなわけないだろう! 一応借金の形に働いて貰うことになってるだけだ」
「借金……?」
「あっ、はい……。実は以前にその……」
言いにくそうにする少女。
その態度でおおよそ何があったか判断がついた。
Sランク冒険者、マーグ。
彼の暗殺を依頼したのは冒険者ギルドの誰かだと思ったが、ギルド長ではなさそうだった。
ただ、職員の誰かだと報酬が払えないと思ったが、なるほど、こういった方法をとっていたのか。
「何か変なことをされたらいつでも言えよ」
「だ、大丈夫ですよ。とても良くしていただいておりますし……。それに――」
少女はカイの顔をジッと見てくる。
「そいつはお前の奴隷としても登録してあるぞ?」
「はあっ!? どうしてそんなことになってるんだ?」
突然のプラークの報告にカイは思わず声をあげる。
よく見ると少女の首には奴隷の証たる首輪がつけられていた。
「だから、金じゃない報酬って言っただろう? お前も身の回りのことをしてくれる子がいた方が動きやすくなるだろうし……」
「いやいや、ただでさえ、正体がばれたら大変なことになるんだぞ!? なんでバレる可能性を広げていくんだ!」
プラークの考えが読めずに思わず声を荒げてしまう。
すると少女がピクッと肩を振るわせる。
「まぁ、それも考えたんだ。だからこその奴隷だ。借金の形に……なら、奴隷になる理由も充分だし、それなら口を割ることはない。どうだ?」
「どうだ、と言われても……」
「あ、あの、やっぱりご迷惑だったでしょうか? わ、私に取り柄なんてありませんので……、その……。やっぱりあのままあのときに死んでおけば――」
それを聞き、カイは少女がただならぬ理由を持っていることに気がついた。
(そうだよな。ただの少女がこんな怪しげなプラークに暗殺の依頼を出すはずがないよな)
「一体何があったんだ?」
「いや、この子は両親があのマーグに殺されたんだ。しかも、理由が動きが遅い……とかいう理由でな」
「なんだ、それ……」
おおよそ人を殺す理由になっていない。
ただ、そんな理不尽さをカイも経験してきた。
だからこそ少女に親近感を覚える。
「相手はSランク冒険者だからな。やつに取ったら少し払っただけなんだろうな。ただ、その強い衝撃で壁にたたきつけられたその子の両親は――」
「なるほどな。それで絶望のあまり死のうとしていたときに死神の声に耳を貸してしまったと……」
「誰が死神だ!!」
プラークが思わず声をあげてくる。
そんなやりとりを見て少女が小さく微笑んでいた。
「それで、こんな寂れたカフェの従業員として働く代わりに俺への依頼を出した訳か……」
「そういうことだ。ただ、依頼自体もいつ行われるかわからないから、それまでに充分金を稼いでおけ……と言ったんだ。少しでも金を稼げばその分だけ、従業員としている時間を減らすという約束でな。まさか、一日で終えてくるのは予想外だったが」
「なるほど。そういえば今まではギルド前に来ても強引な勧誘はされたことはないのだが、あのときだけはされたのにはそういった事情があった訳か」
「す、すみません。」
少女が申し訳なさそうに謝ってくる。
「いや、事情もわかったし、もう済んだことだ。気にするな。それよりも――」
これからこの少女をどうするか……。
さすがにSランク冒険者暗殺の依頼主ともなると冒険者ギルドの連中に狙われかねない。
「はぁ……、そうだな。わかったよ。ただ……」
カイはさっとナイフで首輪を切り取る。
「奴隷というのはなしだ。昼間はプラークの店で。残りの時間は俺の家事をしてもらう。それでいいか?」
「い、いいのですか? だって私の借金はすごい額で……」
「その支払い相手が俺だからな。気にするな。プラークもそれでいいか?」
「俺は元々従業員が欲しかっただけだからな」
「ということだ。これからよろしく頼むな。……えっと」
「あっ、私はチルといいます。チル・リーヴァです」
チルが頭を下げてくる。
「あぁ、よろしく頼む。俺はカイだ。で、こっちがプラーク」
「俺はもう自己紹介を済ませてるぞ」
「ふふっ……」
チルが小さく微笑む。
ただ、それとは別にプラークが耳元で聞いてくる。
「もしこの子からお前の情報が漏れたらどうするんだ?」
「そのときは名前を捨てるだけだな。どうせいくつもあるうちの一つだ」
「まぁ、それもそうだな。それにしても絶対に越えられないと言われている暗殺者ランク一位から三位が全員お前だとは誰も思わないよな」
「……まぁな」
(実際は他にもあるんだけどな……)
ただ、プラークに仲介をしてもらってるのはその三人だけであとはカイ自身が直接やりとりをしている。
だからプラーク自身が知らないのも何人かいた。
これも、情報を漏れたときのためで、いざという時に捨てて別の名前にいけるように……ということだった。
「と、とにかく、これからよろしくお願いします」
チルが頭を下げてくる。
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