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カイ達はアウストラメーグ王国へと向かって乗り合いの馬車で出発する。
少し嬉しそうなチルを一緒に連れていくのはカイにとってもプラスだった。
一人の旅より誰か連れがいた方が入国の際に疑われにくい。
カイとチルのペアならなおさらだった。
どこをどう見ても一般人。
恋人に見られるか兄弟に見られるか……、その違いはあるもののおおよそ警戒する相手には思われない。
国にさえ入ってしまえばカイ自身が疑われることはない。
「カイさん、アウストラメーグ王国ってどんなところなんですか?」
「あまり治安の良い国とは言えないな。チルもあまり一人で出歩いたりするなよ」
「は、はい……、わかりました」
怯えさせてしまったようでチルは少しだけカイに近付いてくる。
「まぁ、今は大丈夫だぞ。まだ国を出たところだからな。このあたりで出るとしたら盗賊とか魔物くらいだぞ」
チルの様子にカイは苦笑を浮かべる。
「で、でも、町の外には魔物がたくさんいるって聞いたことがありますから……」
「数は多くても襲ってくる魔物はそれほど多くないからな。それにこの馬車には護衛の人も乗っているから――」
「あっ、それにカイさんもいますもんね」
「いや、俺に魔物の相手は……」
「ま、魔物が出たぞ!」
チルと話していると御者をしている人が騒ぎ出していた。
「か、カイさん……」
チルがギュッとカイの服を掴む。
恐怖のあまりの行動だろうな。
カイは苦笑しつつ現れたという魔物を見る。
狼型の魔物だ。
動きが素早くてカイの目ではとても追うことができない。
ただ、簡単に倒す方法はある。狼型の魔物は基本的に匂いで相手を索敵している。
つまり鼻さえ潰してしまえば後は容易に倒せる。
それでも今は動くべきではないだろう。
下手に戦えることを見せて余計な情報を与える必要もない。それに――。
馬車の中から鎧服姿の男達が数人現れ、ウルフに対して剣を向けていた。
それを見た段階でカイの興味はウルフから別のものへと移っていた。
「あいつ、人ではないな……」
護衛の一人――、ウルフに立ち向かっている鎧服姿の一人が人間とは違う気配を感じていた。
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと面白いやつがいたからな」
獣人などは比較的よく町の中を歩いている。ただ、カイが興味を持った相手の気配は魔族特有のものだった。
その昔、人族と対峙していたという魔族。
数が減ってからはめっぽう見なくなったが、どうやらまだ存命しているようだった。
人よりも力も魔力も高いけど、その個体数は少ない。
(あとは魔族の国を統治している魔王というすごく能力が高い相手がいるらしいな。まぁいくら能力が強くてもな……。急所さえ付けば能力は関係ない。だからこそ誰にも気づかれない能力こそが重要だ)
そんなことを思いながら、それでも初めて見る魔族には興味津々に眺めていた。
ただ、護衛にいた人は普通の人間とほとんど変わらなかった。
(まぁ能力の高いやつはいくらでも見たことがあるからな……)
カイがため息を吐いた後、馬車は王国に向けて進んでいく。
◇
それから数日経ち、ようやく王国へとたどり着く。
「カイさん、カイさん、すっごいですよ。お城があんなに大きいですよ!」
となりでチルが大騒ぎしていて周りの人から温かい視線を送らせていた。
ただ、これこそがカイの狙っていたもので、どうみても観光客にしか見えないだろう。
「とりあえず、落ち着け。まずは宿を取りに行くぞ」
「そ、そうだね」
チルを連れてカイは門付近にある宿へと向かっていった。
「いらっしゃい、おや、観光かい? 今なら一部屋銀貨一枚だよ」
宿に入ると恰幅の良い女将が笑みを浮かべてくる。
「それなら二部屋だな……」
「いえ、勿体ないですよ。私はカイさんなら一緒の部屋でも良いですよ」
「おやおや、兄弟かなと思ったら恋人同士だったのかい。それなら少し大きい部屋も同じ値段で準備できるがどうだい? 今回はサービスだよ」
「チルがいいなら同じ部屋でも良いが……」
「う、うん、大丈夫です……」
チルが少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら答える。
それを宿の女将は微笑ましい様子で見守っていた。
「では少し大きな部屋に案内しますね」
女将に言われてカイ達は宿の部屋に案内される。
少し嬉しそうなチルを一緒に連れていくのはカイにとってもプラスだった。
一人の旅より誰か連れがいた方が入国の際に疑われにくい。
カイとチルのペアならなおさらだった。
どこをどう見ても一般人。
恋人に見られるか兄弟に見られるか……、その違いはあるもののおおよそ警戒する相手には思われない。
国にさえ入ってしまえばカイ自身が疑われることはない。
「カイさん、アウストラメーグ王国ってどんなところなんですか?」
「あまり治安の良い国とは言えないな。チルもあまり一人で出歩いたりするなよ」
「は、はい……、わかりました」
怯えさせてしまったようでチルは少しだけカイに近付いてくる。
「まぁ、今は大丈夫だぞ。まだ国を出たところだからな。このあたりで出るとしたら盗賊とか魔物くらいだぞ」
チルの様子にカイは苦笑を浮かべる。
「で、でも、町の外には魔物がたくさんいるって聞いたことがありますから……」
「数は多くても襲ってくる魔物はそれほど多くないからな。それにこの馬車には護衛の人も乗っているから――」
「あっ、それにカイさんもいますもんね」
「いや、俺に魔物の相手は……」
「ま、魔物が出たぞ!」
チルと話していると御者をしている人が騒ぎ出していた。
「か、カイさん……」
チルがギュッとカイの服を掴む。
恐怖のあまりの行動だろうな。
カイは苦笑しつつ現れたという魔物を見る。
狼型の魔物だ。
動きが素早くてカイの目ではとても追うことができない。
ただ、簡単に倒す方法はある。狼型の魔物は基本的に匂いで相手を索敵している。
つまり鼻さえ潰してしまえば後は容易に倒せる。
それでも今は動くべきではないだろう。
下手に戦えることを見せて余計な情報を与える必要もない。それに――。
馬車の中から鎧服姿の男達が数人現れ、ウルフに対して剣を向けていた。
それを見た段階でカイの興味はウルフから別のものへと移っていた。
「あいつ、人ではないな……」
護衛の一人――、ウルフに立ち向かっている鎧服姿の一人が人間とは違う気配を感じていた。
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと面白いやつがいたからな」
獣人などは比較的よく町の中を歩いている。ただ、カイが興味を持った相手の気配は魔族特有のものだった。
その昔、人族と対峙していたという魔族。
数が減ってからはめっぽう見なくなったが、どうやらまだ存命しているようだった。
人よりも力も魔力も高いけど、その個体数は少ない。
(あとは魔族の国を統治している魔王というすごく能力が高い相手がいるらしいな。まぁいくら能力が強くてもな……。急所さえ付けば能力は関係ない。だからこそ誰にも気づかれない能力こそが重要だ)
そんなことを思いながら、それでも初めて見る魔族には興味津々に眺めていた。
ただ、護衛にいた人は普通の人間とほとんど変わらなかった。
(まぁ能力の高いやつはいくらでも見たことがあるからな……)
カイがため息を吐いた後、馬車は王国に向けて進んでいく。
◇
それから数日経ち、ようやく王国へとたどり着く。
「カイさん、カイさん、すっごいですよ。お城があんなに大きいですよ!」
となりでチルが大騒ぎしていて周りの人から温かい視線を送らせていた。
ただ、これこそがカイの狙っていたもので、どうみても観光客にしか見えないだろう。
「とりあえず、落ち着け。まずは宿を取りに行くぞ」
「そ、そうだね」
チルを連れてカイは門付近にある宿へと向かっていった。
「いらっしゃい、おや、観光かい? 今なら一部屋銀貨一枚だよ」
宿に入ると恰幅の良い女将が笑みを浮かべてくる。
「それなら二部屋だな……」
「いえ、勿体ないですよ。私はカイさんなら一緒の部屋でも良いですよ」
「おやおや、兄弟かなと思ったら恋人同士だったのかい。それなら少し大きい部屋も同じ値段で準備できるがどうだい? 今回はサービスだよ」
「チルがいいなら同じ部屋でも良いが……」
「う、うん、大丈夫です……」
チルが少し恥ずかしそうに顔を赤くしながら答える。
それを宿の女将は微笑ましい様子で見守っていた。
「では少し大きな部屋に案内しますね」
女将に言われてカイ達は宿の部屋に案内される。
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