君よ、土中の夢を詠え

ヒロヤ

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 桜の季節が疎ましくなったのはいつ頃だったろう。

 可憐な花、散り際の儚さ、季節の移ろい。

 嫌いという強い感情ではない。
 しかし、好きではない。
 私と違い、この国の人は古来よりこの桜の花を愛してきたようだ。

 姉もそういう人だ。

 冬の寒いうちから春を待ち望み、
 桜が咲けば散らぬよう風雨を気にして、
 姿見の前で新しい春用の着物を得意げに合わせて。

 私に色違いの生地を見せながら姉が笑う。
 

 ――あなたも早く良くなって、一緒に河原までお花見にいきましょうね。

 
 そして、姉は楽しそうに一日の出来事を私に伝える。

 それはとても楽しかったけれども。
 
 私は春の、あの急くような空気そのものに触れたくないのだ。
 時の巡りが早まって、山も人も変わっていってしまう。

 だから、この灰色の壁に囲まれた部屋は、その空気から逃れるのに最適で、私は安心していられる。
 陰鬱で誰も入りたがらない部屋であっても、私はこの冷たい壁の中で一人安らかな時間を送ることができた。

 朝も昼も暗い部屋。
 見えない時間。

 外は淡い桃色の風が吹いているのでしょう。


 あなたを連れ去った悲風が吹いているのでしょう。


「ひぅううう」


 また咳が――。
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