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◆◆◆
しおりを挟む十五夜が終わって、年末までしばらく仕事が落ち着くわ。今年は晴れて綺麗なお月さんだったから、月見饅頭もよく売れたんだよ。
ほら、これ。残り物で悪いけど食べるでしょ。
え、芋きんつばが良かった?
じゃあ今度はそっちを用意しようかね。
それにしても、ようやく夏も完全に終わったって感じだよ。
いや、本当に暑かったねえ。
あの夏の暑さに、ぶっ倒れそうになったけど、何とか乗り越えられたわ。
いやだ、まだ元気よお。
とはいっても、もう完全におじいさん、おばあさんだけどねえ。
でもね、身体が弱かった私がここまで生きられるとは思わなかった。正直ね。
アンタはまるで手伝いなんかしやしなかったけど、菓子屋も結構大変な仕事なんだよ?
朝は早いしさ。立ちっぱなしだしさ。腰も痛いしさ。
でも、逆にそれが私を鍛え上げたんだね、きっと。
今じゃ町内で一番若く見られるよ。
やだ、何を笑っているのさ。うるさいね、どうせ六十八歳のばあさんだよ。
でもね、本当に笑うしかないよ。いつ死ぬかわからないじゃない。人間、笑いながら死ぬためには笑って生きていかなきゃね。
最近じゃ、もう葬式ばかりだよ。
それがさ、こないだなんか、年寄りじゃなくて若い人だっていうよ。
五年くらい前に引っ越してきた、三軒先の清田さん。若くたってポックリ行っちゃうことがあるんだよ。理由は知らないけどね。
イヤだねえ。年寄りばっかり生きていたってさあ。ねえ?
こうやって天気が良い日に饅頭食べられる幸せって、当たり前に思っていたらいけないね。
これから一気に寒くなるし、風邪を引かないようにしないとね。
私は大丈夫だよ。お父さんやアンタがいるからね。
やだ、アンタ、少し痩せたんじゃない?もともと、細い方だったけど。
これから食欲の秋っていうから、甘いもの食べて、太らなきゃダメだよ。
何、私は控えろって?
いいんだよ、年寄りは何を食べたって。
老い先短いんだから、好きに生きさせとくれ。
しかし、好きに生きているといえば、あの人を置いて右に出るのはいないね。
え、いやいや、もちろん好きでああなったわけじゃないからね。
わかっているよ。
でもさ、こっちが苦労してることを少しでもわかってくれたらって思うよ。
無理な話なのは重々承知だよ。
けどさあ、さすがに『お姉さん』はないわあ。
そりゃ、私の母親のことでしょうよ。
私は、姪だっての。
いや、話には聞いたことあるけど、ショックだわ。
うんうん、わかっているよ。愚痴とため息は、幸せが逃げるってね。
だったら、アンタが私を幸せな気持ちにさせとくれ。
今年で四十歳じゃないのさ!
いつ、お嫁に行くんだい!
え?
そう、パーマ当てたの。綺麗でしょ。
え、ああ、うん。明日ね、実はお客さんが来るんだよ。だから美容室行ったの。
何でも、ミっちゃんとこの子らしいんだけど。
それが、でも……。
どうしてかしらね……。
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