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3 騒がしく始まり、静かに終わる
(幽霊少女語る)才能
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とんでもない。
私たち女神が、使えないとして破棄したスキルでこの威力を出す。
それはすなわち、私たち集団の思考や発想が、目の前のこの少年一人に敗北したということでもある。
今、カナメは睡眠中だ。
ソファに横になって寝息を立てている。
出会いは偶然だった。
自分一人の弱い魔力で、何とか支配可能なダンジョンを、過去封印作業をした時の記憶をもとに訪ね回っていた。
彼の家の裏、後でわかった彼の家系の墓地跡にできたアンデッド系ダンジョンで見かけたとき、ダンジョン攻略を彼に任せて、倒されたダンジョンマスターをこっそり支配してしまえばいいと考えた。
もしかしてすぐにダンジョン探索をしてくれないかもしれないが、今までで一番可能性があるシチュエーションだったから、何か月か待つのでも構わない、と思っていた。
ダンジョンに興味を持たずにそのまま帰宅し、だけど家は思ったより近くにあったので、生活をいろいろ観察した。
人間社会の常識に当てはめて、彼のような年齢の少年がこんな場所に一人暮らししているのはおかしいと思ったが、その事情が分からないまま彼は就寝してしまった。
寝顔を見ていると、なんかとってもかわいいと思った。
自分が幽霊でなければ手を出していたかもしれない。
いやいや、そんな人間的な感情に流されるわけにはいかない。
だって、私たちには使命があるのだから。
それにしても、仲間と袂を分かってこの世界にやってきて、そして異世界のかけらの処理の件でさらに何人かの仲間が離れ、そして今、私を殺すような分裂が残った23人の間に存在するということになる。
これからの動き方は慎重にしなくてはいけない。
そのような、難問に思考力を使っていたせいか、いつしか私は眠る彼に呼びかけていた。届くはずないのに……
驚くことに、その声が届いてしまった。
今まで何人にも声をかけてきたのに、やはり神秘の薄いこの世界では誰も耳を傾けてくれる人はいなかった。
それがこのタイミング。
果たしてこの世界には偶然を操作する本物の神が存在するというのだろうか?
そんなことを信じてしまいそうになる僥倖だった。
言葉が通じるのなら、この自分好みの……違った、都合の良い相手を仲間に引き込み、自分なりに世界の存続のための共闘関係を結びたい。
*****
カナメはなかなか頑張ってくれている。
いくつかのダンジョンをたちまちクリアしてくれた。
彼自身の問題、それはひょっとしてスキルの不備だろうか? あるいはダンジョン開放直前にいくつか行われた変更点の影響だろうか?
今の自分には情報を手に入れるつてもない。
事情を知っていそうないくつかの名前は浮かぶが、今の状態で他の22人に接触するのは避けたい。
誰が味方で誰が敵なのかもわからないのだから。
ファーストスキルの発展もしっかりできている。
ファーストスキルはチップから手に入れるスキルと違って発展性がある。
本人の習熟度合いによって様々なバリエーションを作ることができるのだ。
例えば『火炎』であれば火の玉を飛ばすことも、剣に火をまとわせることも、火炎竜巻を作ることも、あたり一面を炎の海にすることもできる。
チップスキルなら、火の玉は火の玉、火炎武器なら火炎武器と決まった形での発動だ。
それぞれの属性は基本の玉、矢、武器属性化、壁ぐらいは共通に存在するが、それ以外のバリエーションはほとんどない。
だから、結局強い探索者はファーストスキルのバリエーションをたくさん開発したものが多いのだ。
IHというのは、おそらくスキル開発担当のメイヤ・プローンでも意外なバリエーションだろう。彼女の発言を思い出してみると『電波』はあくまでも遠距離での使用を想定していたはずだ。
カナメは私にとっての勇者になりうる存在だと思う。
……決して、私情が混じっているわけではない……そのはずだ。
*****
「飛ぶ氷玉」
それは、私には大いにショックなものだ。
無理だったはずだ。
たとえカナメが非凡だと思っていても、私たちが不可能だと思ったことを実現するとは思わなかった。
説明を聞いてようやく納得したが、これは相当に科学的素養が無ければわからなかっただろう。
熱エネルギーが分子の振動エネルギーと同じだ。だから、玉を打ち出す運動エネルギーは玉の熱エネルギーの一部を分けてひねり出している。
だから、もともとの熱エネルギーが低い氷玉は、常温からさらに離れた方向に温度を下げるというのが、物理的にコストが高くなってしまう。
結果として他の玉と違って熱エネルギーを分けて推進力にすることが低温すぎる氷玉でだけ失敗するというのが彼の推測だった。
そこで、彼は電波を使って氷玉を温めて熱エネルギーを与えながら氷玉を発動することで、氷玉を飛ばすということに成功したのだ。
あの後何回か試してみて、その成功率はそれほど高くなかった。
氷玉を熱しすぎて水になってしまったり、1mぐらいしか飛ばなかったり何回か失敗が続き、「疲れたからもう寝る」と言ってやめてしまったが、きっと練習すれば最初のように充分威力のある氷玉攻撃ができるようになるだろう。
これで、カナメは生物系の体内を破壊するマイクロウェーブ、金属に対する高威力の近距離攻撃のインダクション、それに安定して打撃を与えられる氷玉と、併用すればいろいろな状況に対応できる武器を手に入れたことになる。
「ふふっ、本当にあなたは……」
私の勇者様なのかもしれないわね。
彼の愛しい寝顔……そう、ごまかしはいらない。私は彼を愛しく思って、自分のものにしたいと思っている。
そのためにも、ぜひ彼の好みドンピシャの肉体を手に入れよう……そんな浮かれたことを考えていた時、
「ずいぶんその子にご執心ですね」
背後から聞きたくない声が聞こえてきた。
私たち女神が、使えないとして破棄したスキルでこの威力を出す。
それはすなわち、私たち集団の思考や発想が、目の前のこの少年一人に敗北したということでもある。
今、カナメは睡眠中だ。
ソファに横になって寝息を立てている。
出会いは偶然だった。
自分一人の弱い魔力で、何とか支配可能なダンジョンを、過去封印作業をした時の記憶をもとに訪ね回っていた。
彼の家の裏、後でわかった彼の家系の墓地跡にできたアンデッド系ダンジョンで見かけたとき、ダンジョン攻略を彼に任せて、倒されたダンジョンマスターをこっそり支配してしまえばいいと考えた。
もしかしてすぐにダンジョン探索をしてくれないかもしれないが、今までで一番可能性があるシチュエーションだったから、何か月か待つのでも構わない、と思っていた。
ダンジョンに興味を持たずにそのまま帰宅し、だけど家は思ったより近くにあったので、生活をいろいろ観察した。
人間社会の常識に当てはめて、彼のような年齢の少年がこんな場所に一人暮らししているのはおかしいと思ったが、その事情が分からないまま彼は就寝してしまった。
寝顔を見ていると、なんかとってもかわいいと思った。
自分が幽霊でなければ手を出していたかもしれない。
いやいや、そんな人間的な感情に流されるわけにはいかない。
だって、私たちには使命があるのだから。
それにしても、仲間と袂を分かってこの世界にやってきて、そして異世界のかけらの処理の件でさらに何人かの仲間が離れ、そして今、私を殺すような分裂が残った23人の間に存在するということになる。
これからの動き方は慎重にしなくてはいけない。
そのような、難問に思考力を使っていたせいか、いつしか私は眠る彼に呼びかけていた。届くはずないのに……
驚くことに、その声が届いてしまった。
今まで何人にも声をかけてきたのに、やはり神秘の薄いこの世界では誰も耳を傾けてくれる人はいなかった。
それがこのタイミング。
果たしてこの世界には偶然を操作する本物の神が存在するというのだろうか?
そんなことを信じてしまいそうになる僥倖だった。
言葉が通じるのなら、この自分好みの……違った、都合の良い相手を仲間に引き込み、自分なりに世界の存続のための共闘関係を結びたい。
*****
カナメはなかなか頑張ってくれている。
いくつかのダンジョンをたちまちクリアしてくれた。
彼自身の問題、それはひょっとしてスキルの不備だろうか? あるいはダンジョン開放直前にいくつか行われた変更点の影響だろうか?
今の自分には情報を手に入れるつてもない。
事情を知っていそうないくつかの名前は浮かぶが、今の状態で他の22人に接触するのは避けたい。
誰が味方で誰が敵なのかもわからないのだから。
ファーストスキルの発展もしっかりできている。
ファーストスキルはチップから手に入れるスキルと違って発展性がある。
本人の習熟度合いによって様々なバリエーションを作ることができるのだ。
例えば『火炎』であれば火の玉を飛ばすことも、剣に火をまとわせることも、火炎竜巻を作ることも、あたり一面を炎の海にすることもできる。
チップスキルなら、火の玉は火の玉、火炎武器なら火炎武器と決まった形での発動だ。
それぞれの属性は基本の玉、矢、武器属性化、壁ぐらいは共通に存在するが、それ以外のバリエーションはほとんどない。
だから、結局強い探索者はファーストスキルのバリエーションをたくさん開発したものが多いのだ。
IHというのは、おそらくスキル開発担当のメイヤ・プローンでも意外なバリエーションだろう。彼女の発言を思い出してみると『電波』はあくまでも遠距離での使用を想定していたはずだ。
カナメは私にとっての勇者になりうる存在だと思う。
……決して、私情が混じっているわけではない……そのはずだ。
*****
「飛ぶ氷玉」
それは、私には大いにショックなものだ。
無理だったはずだ。
たとえカナメが非凡だと思っていても、私たちが不可能だと思ったことを実現するとは思わなかった。
説明を聞いてようやく納得したが、これは相当に科学的素養が無ければわからなかっただろう。
熱エネルギーが分子の振動エネルギーと同じだ。だから、玉を打ち出す運動エネルギーは玉の熱エネルギーの一部を分けてひねり出している。
だから、もともとの熱エネルギーが低い氷玉は、常温からさらに離れた方向に温度を下げるというのが、物理的にコストが高くなってしまう。
結果として他の玉と違って熱エネルギーを分けて推進力にすることが低温すぎる氷玉でだけ失敗するというのが彼の推測だった。
そこで、彼は電波を使って氷玉を温めて熱エネルギーを与えながら氷玉を発動することで、氷玉を飛ばすということに成功したのだ。
あの後何回か試してみて、その成功率はそれほど高くなかった。
氷玉を熱しすぎて水になってしまったり、1mぐらいしか飛ばなかったり何回か失敗が続き、「疲れたからもう寝る」と言ってやめてしまったが、きっと練習すれば最初のように充分威力のある氷玉攻撃ができるようになるだろう。
これで、カナメは生物系の体内を破壊するマイクロウェーブ、金属に対する高威力の近距離攻撃のインダクション、それに安定して打撃を与えられる氷玉と、併用すればいろいろな状況に対応できる武器を手に入れたことになる。
「ふふっ、本当にあなたは……」
私の勇者様なのかもしれないわね。
彼の愛しい寝顔……そう、ごまかしはいらない。私は彼を愛しく思って、自分のものにしたいと思っている。
そのためにも、ぜひ彼の好みドンピシャの肉体を手に入れよう……そんな浮かれたことを考えていた時、
「ずいぶんその子にご執心ですね」
背後から聞きたくない声が聞こえてきた。
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