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5 隣人は仲間になりたそうにこちらを見ている
神社の娘
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ミルクティーに口をつけ、カップを戻した彼女に、僕は本題を聞いてみる。
「それで……八城さんは幽霊と話したいってことで訪ねてきたの?」
「えっと……そうですね。ちゃんと最初からお話しします。実は、私の両親、別居していまして……」
いきなり重い話だ。とはいえ、ここでそのことを突っ込むのもためらわれたので、僕は沈黙を保つ。
ちょっとうなずき、続きを催促する。
「……今は父や祖父母と神社に住んでいるのですが、父が母のところに引っ越すって言うんです。それで私も連れていかれることに……」
「ん? 仲が悪いわけではないの?」
「両親ですか? ええ、ずっと仲がいいですよ……ああ、そういう意味の別居じゃなくて……言い方が悪かったですね。母が単身赴任している状態なのです」
「そう……それじゃお母さん寂しそうだから、良かったじゃない」
「そう聞こえますよね……でも、私は嫌なんです」
「どうして?」
「父が引っ越すのは、神社がずっと赤字で、神主では生活できないからなんですよ」
「ああ、そういう……」
彼女の神社が経営難という話を聞いて、それもそうかなと思う。
山奥の神社だと参拝客も少なく、お賽銭もお札も収入源としては心もとないだろう。
「じゃあ神社を閉めるの?」
「そういうわけにはいかないんですよ……先ほど退魔と言いましたが、山返神社は強力な妖怪を封印していて、誰かがその役目を引き継がないといけないんです」
「おおう、なるほど……」
作りごとと笑うことはできない。
世の中ダンジョンとか出てきて意外とファンタジーだったのだ。
スキルなしで幽霊を見てしまう少女の実家なら充分ありうると思う。
彼女は話を続ける。
「今はまだ祖父母が代わりになれます……ですが、封印の多くはすでに父が担っています。祖父母の負担が大きくなりますし、私の方も修行中なので離れたくなくて……」
「えっと……今まで通りっていうのはダメなの」
確かに単身赴任は気の毒だけど……
「それは……母がその……妖怪とか封印とかそういうのを全然信じてないので……」
つまり僕とは違い、神社の役目を作り事と笑うような人だということだろう。
「参考までに、お母さんのお仕事は?」
「IT関係の、業務システムを作る会社の社長です」
「それはなかなか……」
お父さんの肩身が狭そうだ。
自分は田舎の破綻寸前の神社の跡取り、相手は社長で金持ち。
仮に相手の理解があれば神社の役目を続けることができただろうが、相手が信じてくれないというのであればどうしようもない。
「それで、宗崎さんが幽霊と話をしているのを見て、霊感があるなら神社を手伝ってくれないかなと思って声をかけたんです」
「なるほど……」
そういう事情か……だけど……
「ごめんね、僕は霊感があるわけじゃなくてダンジョンスキルの関係で幽霊が見えるだけだから……」
「ええ、お話を聞いてわかりました。そちらは諦めます。ですが……」
そこで彼女は僕の方を見つめてこう言った。
「あそこで何をしていたか教えてもらっていいですか?」
「……っ」『ぎくっ』
こら、そこの幽霊、わかりやすい反応するんじゃない。
「……えっと、あの、その……」
「もちろん私もダンジョンで稼ごうとしているからにはいろいろ調べています。見向きもされない野良ダンジョンの場所は地元民でも気づかないことが珍しくないですが、あんな所には無かったはず……」
「昆虫採集をしていたということには……」
「なりません。だって、わざわざあんなところまで足を延ばす必要ないでしょう? 霊感が無く、ダンジョンスキルはある。そしてこそこそと幽霊と夜中に怪しい場所にいるとなれば、あのあたりに隠されたダンジョンがあるのは明白。このミノリのジンジャ超推理はごまかせませんよ」
なんだその忍者を全部神社に言い換えたような怪しい用語は……と思ったものの、言っていることに間違いはない。
(どうする?)
僕は目でエリスに伺いを立てる。
『はあ……しょうがないわね。多分背後関係はないからちゃんと説明してあげるわ。できればこの子も仲間に引き入れましょう』
「やった、これでジンジャスレイヤー結成です」
それだと神社が殺されてしまうのではないだろうか?
どうやら彼女は某忍者が出て殺す話の大ファンらしく、僕らにも購読を進めてきた。
それはともかく……
彼女にこっちの事情を一通り説明した。
エリスは女神で、他の女神に殺されたので隠れていること。
ダンジョンにはDランクがあって封印されていること。
Dランクダンジョンでは成長はできるけど儲からないこと。
僕たちの秘密のうちで重要なものは伏せてある。
ダンジョンマネージャー権限、電波スキルの瞬間移動、ヴィクトワール号などのことだ。
今は確かに彼女に背後関係はないとしても、今後はわからない。
一時的に仲間になっても、僕たちと縁が切れた後に秘密を洩らされる可能性がある。
そんなわけで今のところ与えていい情報は2つ。
「封印されたDランクダンジョンには女神がいれば入れる」という、僕たちがあそこにいた説明になるもの。
「女神間の争いで負けたエリスが幽霊になっている」という、女神が田舎の高校生にくっついて行動している理由になるもの。
この2つで、とりあえずは僕たちの事情に説明がつくはずだが……
「なるほど、わかりました」
「ああ、わかってもらえてよかった……」
「なんかまだ隠していることがわかりました」
『ぎくっ』
「こら、だから声に出すなよ」
「ふふ、やはり私のジンジャ超感覚はごまかせません。ですが……初対面で信用しろというのも難しいでしょうから、今日のところは引き揚げます」
彼女が外に目をやったのにつられて見ると、外も暗くなってきている。
「ですが、また来させてもらっていいですか? ダンジョンのことや女神さまのお話、いろいろお聞きしたいので……」
「まあ、それぐらいなら……」
『私もいいわよ』
そして彼女は紅茶とポテトチップスのお礼を言って席を立った。
歩いて帰るのかと思ったら外の道路わきに電動アシスト自転車が停まっていた。
防犯は? と思ったがこんなところにわざわざ泥棒が来るはずがないと返されたので、地元の感覚としてはそうなのだろう。
ともかく、こうして突然の来客は帰っていった……疲れた。
「それで……八城さんは幽霊と話したいってことで訪ねてきたの?」
「えっと……そうですね。ちゃんと最初からお話しします。実は、私の両親、別居していまして……」
いきなり重い話だ。とはいえ、ここでそのことを突っ込むのもためらわれたので、僕は沈黙を保つ。
ちょっとうなずき、続きを催促する。
「……今は父や祖父母と神社に住んでいるのですが、父が母のところに引っ越すって言うんです。それで私も連れていかれることに……」
「ん? 仲が悪いわけではないの?」
「両親ですか? ええ、ずっと仲がいいですよ……ああ、そういう意味の別居じゃなくて……言い方が悪かったですね。母が単身赴任している状態なのです」
「そう……それじゃお母さん寂しそうだから、良かったじゃない」
「そう聞こえますよね……でも、私は嫌なんです」
「どうして?」
「父が引っ越すのは、神社がずっと赤字で、神主では生活できないからなんですよ」
「ああ、そういう……」
彼女の神社が経営難という話を聞いて、それもそうかなと思う。
山奥の神社だと参拝客も少なく、お賽銭もお札も収入源としては心もとないだろう。
「じゃあ神社を閉めるの?」
「そういうわけにはいかないんですよ……先ほど退魔と言いましたが、山返神社は強力な妖怪を封印していて、誰かがその役目を引き継がないといけないんです」
「おおう、なるほど……」
作りごとと笑うことはできない。
世の中ダンジョンとか出てきて意外とファンタジーだったのだ。
スキルなしで幽霊を見てしまう少女の実家なら充分ありうると思う。
彼女は話を続ける。
「今はまだ祖父母が代わりになれます……ですが、封印の多くはすでに父が担っています。祖父母の負担が大きくなりますし、私の方も修行中なので離れたくなくて……」
「えっと……今まで通りっていうのはダメなの」
確かに単身赴任は気の毒だけど……
「それは……母がその……妖怪とか封印とかそういうのを全然信じてないので……」
つまり僕とは違い、神社の役目を作り事と笑うような人だということだろう。
「参考までに、お母さんのお仕事は?」
「IT関係の、業務システムを作る会社の社長です」
「それはなかなか……」
お父さんの肩身が狭そうだ。
自分は田舎の破綻寸前の神社の跡取り、相手は社長で金持ち。
仮に相手の理解があれば神社の役目を続けることができただろうが、相手が信じてくれないというのであればどうしようもない。
「それで、宗崎さんが幽霊と話をしているのを見て、霊感があるなら神社を手伝ってくれないかなと思って声をかけたんです」
「なるほど……」
そういう事情か……だけど……
「ごめんね、僕は霊感があるわけじゃなくてダンジョンスキルの関係で幽霊が見えるだけだから……」
「ええ、お話を聞いてわかりました。そちらは諦めます。ですが……」
そこで彼女は僕の方を見つめてこう言った。
「あそこで何をしていたか教えてもらっていいですか?」
「……っ」『ぎくっ』
こら、そこの幽霊、わかりやすい反応するんじゃない。
「……えっと、あの、その……」
「もちろん私もダンジョンで稼ごうとしているからにはいろいろ調べています。見向きもされない野良ダンジョンの場所は地元民でも気づかないことが珍しくないですが、あんな所には無かったはず……」
「昆虫採集をしていたということには……」
「なりません。だって、わざわざあんなところまで足を延ばす必要ないでしょう? 霊感が無く、ダンジョンスキルはある。そしてこそこそと幽霊と夜中に怪しい場所にいるとなれば、あのあたりに隠されたダンジョンがあるのは明白。このミノリのジンジャ超推理はごまかせませんよ」
なんだその忍者を全部神社に言い換えたような怪しい用語は……と思ったものの、言っていることに間違いはない。
(どうする?)
僕は目でエリスに伺いを立てる。
『はあ……しょうがないわね。多分背後関係はないからちゃんと説明してあげるわ。できればこの子も仲間に引き入れましょう』
「やった、これでジンジャスレイヤー結成です」
それだと神社が殺されてしまうのではないだろうか?
どうやら彼女は某忍者が出て殺す話の大ファンらしく、僕らにも購読を進めてきた。
それはともかく……
彼女にこっちの事情を一通り説明した。
エリスは女神で、他の女神に殺されたので隠れていること。
ダンジョンにはDランクがあって封印されていること。
Dランクダンジョンでは成長はできるけど儲からないこと。
僕たちの秘密のうちで重要なものは伏せてある。
ダンジョンマネージャー権限、電波スキルの瞬間移動、ヴィクトワール号などのことだ。
今は確かに彼女に背後関係はないとしても、今後はわからない。
一時的に仲間になっても、僕たちと縁が切れた後に秘密を洩らされる可能性がある。
そんなわけで今のところ与えていい情報は2つ。
「封印されたDランクダンジョンには女神がいれば入れる」という、僕たちがあそこにいた説明になるもの。
「女神間の争いで負けたエリスが幽霊になっている」という、女神が田舎の高校生にくっついて行動している理由になるもの。
この2つで、とりあえずは僕たちの事情に説明がつくはずだが……
「なるほど、わかりました」
「ああ、わかってもらえてよかった……」
「なんかまだ隠していることがわかりました」
『ぎくっ』
「こら、だから声に出すなよ」
「ふふ、やはり私のジンジャ超感覚はごまかせません。ですが……初対面で信用しろというのも難しいでしょうから、今日のところは引き揚げます」
彼女が外に目をやったのにつられて見ると、外も暗くなってきている。
「ですが、また来させてもらっていいですか? ダンジョンのことや女神さまのお話、いろいろお聞きしたいので……」
「まあ、それぐらいなら……」
『私もいいわよ』
そして彼女は紅茶とポテトチップスのお礼を言って席を立った。
歩いて帰るのかと思ったら外の道路わきに電動アシスト自転車が停まっていた。
防犯は? と思ったがこんなところにわざわざ泥棒が来るはずがないと返されたので、地元の感覚としてはそうなのだろう。
ともかく、こうして突然の来客は帰っていった……疲れた。
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