電波少年と幽霊マネージャーの迷宮探索裏街道

春池 カイト

文字の大きさ
48 / 57
5 隣人は仲間になりたそうにこちらを見ている

馴染んでしまう

しおりを挟む
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい」
「あ、これうちの祖父母からです」
「あら、悪いわね、ありがたくいただくわ」

「そのやり取りに、僕が含まれていないのは何か問題では?」

「そういえば……」
「そうですね」

 顔を見合わせるエリスとミノリだった。

 さて、なぜこんなに馴染んでいるのかというと、ミノリがエリスと契約することで、完全に身内になったからだ。
 例の「しもべがなんとかかんとか」という儀式で、これでミノリはエリスを裏切れなくなったらしい。
 というか、僕もエリスを裏切れないのか……まあ、その気もないけどね。

 最初に訪れた時からミノリは何度か訪ねてきた。
 その結果として、徐々に互いの人柄や事情の共有が進み、最終的には仲間となることになったのだ。
 もちろんそれには彼女の押しの強さも影響しているに違いない。
 2回目から名字ではなくミノリ呼びを求めるのは、ちょっと距離感がおかしい気がする。

 ともかく、こうしてエリスも二人目の仲間ができたわけで、今も天狗少女の姿をさらしてミノリと楽しく話をしている。

「あ、お茶は任せて」

 僕は一応おもてなしをする側なので、一同のお茶を用意する。
 こちらに来てからの生活で、飲み物はお茶が多くなった。
 もともと実家にいるときもジュースはあまり飲まなかったが……

 そしていただいた神社のお供えのお下がりを皿に乗せ、お茶と共に居間のこたつに持っていく。

「ありがとうございます」
「ありがとう」
「何を話してたの?」
「今後のミノリの育成方針」
「すいません、自分のことばかりで……」
「いや、そりゃスキル手に入ったんだから当然だよ」

 ミノリは11月の体験会で善光寺ダンジョンに入り、無事にファーストスキルを手に入れた。
 もともと霊感を持ち、先祖伝来の術も使えるミノリだからファーストスキルはそっち方面かと思ったが、そんなことはなく、〈引力〉〈斥力〉のスキルを手に入れた。
 そう、なんとファーストスキルなのに2つあるのだ。
 とはいえ、実際にはこれらを総称する名前が無いからそうなっているだけで、要は引っ張ったり遠ざけたりする力のことだ。

「やっぱり、吹き飛ばしが有効かな」

 僕は自分の意見を述べる。
 初めの方に戦うモンスターはほとんど接近戦を挑んでくるので、〈斥力〉で弾き飛ばすのは安全で有効に思える。

「それもそうだけど、こっちが突っ込むのも捨てがたいわよ」

 エリスの意見は、攻撃の補助に使うというものだった。
 確かに、足と地面を〈斥力〉で反発させれば素早い移動ができるかもしれない。

「だけど、地面と足で使っても上に跳び上がるだけじゃないの?」
「そうなのよね。だから何か道具を作らないといけないのよ」

 例えば陸上のスタートブロックみたいに、横に力を駆けることができるものだろうか?
 ただ、スキルの作用だからもっと垂直に立ったものの方がいいだろうし、道具を作ったとしても設置が難しい。

「そうなのよね。だから、ちょっとすぐには実現しないという結論になったのよ」
「私としてはもう片方の〈引力〉の使い道が思いつかなくて……」

 ミノリの疑問はもっともだ。
 敵を倒すことができるファーストスキルの効果としては、〈引力〉は使い道が見当たらない。
 そういう意味でも〈引力〉〈斥力〉は本質的に1つのスキルということなのだろう。

「あ、でもうまく使えば壁歩きとかできそう」
「おおっ、ついに私も忍者になれるんですね。ボウズコロスベシ」

 前は往生とか言っていたのに、ついに直接的に殺すと言い切っている。殺意が高まっていないか?
 とはいえ、彼女の事情はあの後聞いて知っている。
 神社が貧乏なのに対して、寺は葬式や法事のお布施収入がかなりあり、いつもうらやましく思っていたそうだ。
 そして近場で最も栄えている善光寺に、ダンジョンのついでに訪れたところ、より一層お坊さんに対する敵意が増したそうだ。

「仏教もキリスト教もイスラム教も敵です。ボウズなので」

 言い切ってしまった。
 キリスト教のボウズはトンスラと呼ばれる頭のてっぺんを剃る髪型があるのでわからなくはないが、イスラム教? と思って聞いてみると、「あのターバンはハゲ隠しに違いない」との答えが返ってきた。
 それは彼女の偏見だろうと思う。

 ともかく、ボウズスレイヤーは世界の大宗教のほとんどにケンカを売る好戦的な存在のようで、ぜひ実現しないことを望む。宗教戦争なんてまっぴらだ。

「ともかく、一回ダンジョンに潜ってみたいですね」
「エリスがどこかつれていってあげなよ」
「その時はカナメも付いてきてくれるのよね?」
「うーん、いいけど、テストとか大丈夫なの?」

 僕の方は2学期末のテストで、正直勉強の方は不安がない。
 だが、ミノリは受験があるはずで、ダンジョンなどにうつつを抜かしている暇は無いはずだ。

「大丈夫、ほら、私はスマホも持っていない真面目な中学生ですよ」

 そうなのだ、彼女は家の方針でスマホを持っていない。
 というか、あの神社のあたりも携帯の電波は届いていないから、家にいても通信手段としては役に立たないという事情もあるのだろう。
 そんなわけで、暇だから勉強時間はしっかりとれていると彼女は主張した。

「じゃあ、一回ぐらいいいか」
「やった、じゃあ妖怪退治に使う武器を持っていきますね」
「それって、持ち出していいものなの?」

 とはいえ、妖怪退治に使うものならアンデッド系のダンジョンが良いかもしれない。
 一応エリスにそのあたりをリクエストしておく。

 このようにして、週末にミノリも加えたダンジョン攻略が決定した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...