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ハロー ベストフレンド!!
しおりを挟む「……んで、遅れたわけね~……」
ジュリアンの前の席に座るヘレナは、頬杖をつきながら呆れたように笑った。
ヘレナ・スチュワードはジュリアンが高校時代に所属していた運動部の部員の一人で、ある時ジュリアンから声をかけたところ、見事に馬が合い、それからというもの毎日学校で一緒につるむ仲になった。
ある日、ジュリアンが自分に都会でやっていくと宣言したことに強い感銘を受け、なら私もと必死に勉強し、ジュリアンと共にこちらの大学に進んだ。
今はたまたまこちらに越してきた親戚の家に泊まっているらしい。
ジュリアンはヘレナから手渡されたタオルで首元を拭きながら苦笑する。
「いや~私としては全力を尽くしたんだけどな~……」
結局、ジュリアンの全力疾走と路地のショートカットをもってしても一限目には間に合わず、講義を終わらせた教授と廊下で鉢合わせてそのままこっぴどく怒られたのは記憶に新しい。
「それでさ、さっきの講義のノート、見せて欲しいんだけど……」
ジュリアンが机から身を乗り出し、子犬のような目をしてヘレナを見つめる。
はいはい、とヘレナはタオルを受け取り鞄を漁る。
「おら、2ドル出したら貸してやってもいいけど」
「妙に現実的なの怖いな」
ありがと、とヘレナからノートを取り、今日の日付が書かれてあるページを写す。
口調はぶっきらぼうなのに反して、文字やレイアウトが丁寧なのが彼女の性格をよく表しているだろう。
「やっぱいつ借りても綺麗にまとめられてすごいわ」
自分のとは大違い、と付け加えるとそれはどうも、と声が返ってきた。
幸い内容は一頁と少しで足り、これなら次の授業までにヘレナにノートを返すことができるだろう。
ジュリアンはチラッと室内の時計を確認する。
まだ午前。
早くカフェに寄りたいな、そうぼやくジュリアンをヘレナが適当にあしらった。
四限の終わりを告げるようにチャイムが校内に響く。
「はぁ~……やっと終わった~」
ジュリアンが体を伸ばすと、それに応えるかのように腹の虫も鳴く。
慌てて繕うも、ヘレナにはばっちり聞こえてしまったようだ。
「じゃあランチにしましょっか」
ジュリアンとヘレナはそれぞれ荷物を持ち、一階へと足を運ぶ。
他の教室からもわらわらと生徒が溢れ出し、たちまちカフェテリアの入口は人でいっぱいになった。
「やっぱりいつ来てもすごい人混みね……!!」
ヘレナがなんとか喉から声を絞り出す。
ここの食事はバイキング形式になっており、生徒達はあらかじめ食費を払い、それぞれ配られた銀のトレイに好きなものを自由に取っていく(ミールプラン)。
ジュリアンはハンバーガーとポテト、コーラを、ヘレナはメキシコの料理であるタコスを選び、中庭のテラステーブルに置いた。
中庭は芝生が敷き詰められ、常緑樹からは木洩れ日が降り注ぐ、一種の憩いの場となっている。
「……それで?ジュリアンあなたその男の名前知ってんの?」
「……え」
知らないけど、とジュリアンがきょとんとしながら言うと、ヘレナは頭を抱えた。
「あんたねぇ……名前も知らない男に一目惚れって相当アレね、いかれてるわ」
そう言ってヘレナは頭の横でくるくると指を回した。
ジュリアンは手についたケチャップを舐めながら反論する。
「だってすごくカッコよかったのよ。ヘレナも会えば分かるわ。誰だってあの深い青の瞳で見つめられたら胸が苦しくなって……」
一息で言い切り、ジュリアンは静かに息を吐く。
頭上の雲が太陽を隠し、辺りが暗くなる。
「……恋しちゃうわよ……」
ジュリアンがか細い声で呟く。
手にあったバーガーの包装紙がくしゃ、と窮屈そうに鳴く。
今にも泣き出しそうな顔のジュリアンを見てヘレナが口を開いた。
「……まぁ、ドラマチックでいいんじゃない?そーゆー恋も反対ではないけど……ただ私は……」
心配だわ。
ジュリアンがヘレナを見やる。
ヘレナは真っ直ぐジュリアンを見つめていた。
雲が晴れたのか陽が濃くなり、二人を照らす。
「ヘレナ……」
「……でもやっぱり、名前は聞きなさい。そのうち会話に支障が生じるわよ」
大げさに肩をすくめるヘレナを見てジュリアンははにかんだ。
なんだかんだ言っても、アドバイスをくれたり心配をしてくれるヘレナに何度救われたことか。
「……なんか、ありがとね」
「え、いきなりなんだよ気持ち悪い。……いいよ別に、親友でしょ?」
その言葉に、ジュリアンは力強く頷いた。
「うん!これからもよろしく!ヘレナ!!」
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