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第119話:難聴系主人公。
しおりを挟む「しかしここの方々には頭が下がる思いです」
「ナージャも分ってきましたわね! ほらみたことか! わたくしの言った通りでしょう? 獣人とは分かり合えるんですわ! 一方的に奴隷にするなんてどうかしてますわよ」
ナージャと姫のやり取りを聞いていると、どうやらナージャは当初のジオタリスと同じような感じで、姫は獣人との和解推進派らしい。
もし姫の言う通り何者かが姫を狙ってこの騒ぎを起こしたのだとしたら……姫という立場の者がこんな思想を持っている事を良しとしない奴の仕業、って所だろうか?
だとしたらやはり内政に深く関わっている奴が怪しい。
最近になって王に取り入ったというその怪しいヴァールハイトって奴が最有力候補なのは間違いないな。
「とにかく、わたくし達はそんな事があってここにお世話になっておりますが、このままでいるつもりもありませんわ。なんとか原因を突き止めてこの身体を元に戻して、ヴァールハイトの野望を打ち砕くんですの!」
……めんどくせぇ事になってきたな。
てっきりこの獣人の里の中で起きた小さな問題だとばかり思っていたけれど、リリア帝国全体の問題になってしまっている。
俺がこの問題に関与するのは……いくら何でも目立ちすぎるか。
キララに俺の居場所をアピールする事に意味があるとは思えないし、出来ればそっと生きていきたい。
『でも君はこの帝国をどうにかしたいとも思ってるわよね?』
……確かに、獣人が一方的に奴隷として扱われているのは胸糞悪いけどな。
だからといって……。
「ところでジオ、この方がたはどこのどなたですの? そろそろわたくしにも紹介してくださいまし」
「あ、あぁ……なんと説明すべきか……その、えーっと……」
こいつの立場から言える事は少ないだろうな。
俺に負けて言う事を聞いている事も、街を離れて俺達の家で働いている事も、俺達が六竜だって事も、そのどれもがジオタリスにとってはバレたらまずい事なわけで、それを何一つ言わずに説明しようとしたらもう話せる事が無いだろう。
そして、この姫さんの性格からして俺が六竜の一人なんて話になったら手伝ってくれと言い出すに決まってる。
「私とごしゅじんは体の中に六竜が一人ずついて、ジオさんはごしゅじんに喧嘩売ってボコボコにされて今は私達の家で畑を耕してるんですよー」
問題は、どっちみにこの国で問題が起きていたらキララやギャルンに目を付けられる可能性もある。奴等が介入してきたらこの国の問題は更に大きくなってしまうだろう。
……そもそも最初から奴等が絡んでいる可能性もあるか。ヴァールハイトとかいうやつが魔族の可能性も否定できない。
「貴女……六竜なんですの?」
「あぁ……うん」
どちらにしても放っておけば遅かれ早かれ奴等に補足される可能性が高いか……。
こうなってくるとどうやって奴等に気付かれないように対処するかを考えた方が早いかもしれない。
「この国に正義を取り戻す為、貴女のお力をお貸しください!」
突然姫が俺の手をがっちりと掴む。
「……え?」
まずい考え事してて話全然聞いて無かった。
『わたくし達と仲良くしてくださいましー! だってさ』
なんだ、そんな事か?
「まぁ、それくらいなら」
「それくらい、ですか……さすが伝説の六竜様は言う事が違いますわね!」
……へ? 何かおかしい。
おい、ママドラ……。
「六竜を味方に付けたならヴァールハイトを懲らしめるくらいお茶の子さいさいですわーっ! 覚悟して震えて待つがいいですわーっ! おーっほっほっほ!!」
「待て、話が見えん。俺がいつ協力するって言った?」
「つい先ほど……まさかわたくしを騙したんですの……?」
ママドラ、やりやがったな……?
『いや、まさか本当に考え事してて一切話を聞いてないとか思わないじゃない。やっぱり難聴系主人公って存在したのね……』
俺をそんなダメ人間みたいに言わないでくれ!
「姫、考え直して下さい。この者が六竜だなどと本気で信じているのですか? 冷静に考えたら分かる事でしょう。からかわれたのですよ」
「……え、そ、そうなんですの……?」
タヌキ姫が俺の手をぎゅっと握ったまま潤んだ瞳で見上げてくる。
「そ、そうだぞ。俺やそこの馬鹿が六竜なんてどう考えてもおかしいだろ? な?」
「ジオぉぉ……どうなんですの?」
俺はジオタリスをキッと睨む。間に挟まれて泣きそうになっているが、お前は一言こういえばいい。からかわれたんですよ、とな。
「ひ、姫……この方は、その……」
「ジオ! わたくしは貴方の言葉を信じますわ。この方を良く知る貴方が今ここで真実を語りなさい。もし嘘をつき、それが私にバレるような事があればそれはわたくしへの裏切り行為とみなし金輪際貴方とは口を利きませんし英傑の称号を剥奪します。よく考えて次の句を紡ぐのですわ!」
「ぐっ、な、なんと……それはあまりにも……」
このタヌキ姫め……精神的に追い詰めて本当の事を話させようってつもりか。職権乱用、パワハラ上司ここに極まってやがる……。
頼むぞジオタリス、お前だけがたよりだ……!
どっと汗が噴き出るのを感じる。
そもそもなんでこんな事になったんだ? 誰のせいだ?
「もういいですわ。それだけ迷うという事はこの方が六竜であると言っているような物。貴方の言葉が無くともわたくしは確信しました。きっと秘密にするようにと言われているのでしょう?」
「ひ、姫……分かって頂けましたか!」
おい、それは白状してるのと同じだぞ……!
「ミナト、いい加減に諦めた方がいいですわ。私そこのお姫様結構気に入りましたので力を貸します。貴女もそうしなさい」
なんでこいつはいつもこういう出てきてほしくない時に限って現れるんだ!?
「アルマ……お前何考えてんだよ」
「アルマ!? リリア帝国を半壊させたというあのアルマですの!?」
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