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第2章:冒険の始まりと新たな仲間。

第27話:力の解放と分断。

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「ほえー、結構入り組んでるんだね」

「あまり周りに触らない方がいい。何がきっかけで崩れるか分からないからな」

「ん、ありがとー♪」

 シュラって僕の事結構気にかけてくれるんだよね。

 でもシュラが魔法で明かりをつけてくれてるから結構明るいし快適。

 ……そういえば、どうして僕らの事勇者と聖女って分かったんだろ?

 だって街からは誰も出られなかった訳だし、他所の街とかとも連絡はつかない状態だし。
 リィルに教えてもらった通信魔法も僕が使わなきゃ繋がらないし。

 外で知ってる人がいるのが不思議。

「ねぇシュラ、どうして僕とクラマが……」

「しっ、静かに……。魔物だ。囲まれている」

 シュラが魔物の気配を察知して身構える。
 けど、何か様子がおかしい。

「……どういう事だ?」

「どうかしたの?」

「……てっきりここに居るのは影の魔物かと思っていたんだが……」

 ぞろぞろと通路から出てきた魔物達は、見た事もないのもいるけどあの黒い影の魔物じゃなくて普通の魔物だった。

 影の魔物だと思ってたっていうのはトンネル内の暗がりだから?

「シュラ、君のテイムでなんとかなる?」

「……無理だな。ここの魔物は正気を失っている。どうにもならん……始末するしかない」

 シュラは強く奥歯を噛みしめ、怒りをあらわにした。

 とても怒ってる。……どうして? 僕と同じで魔物が好きなのかな。出来るなら戦いたくないとか?

「勇者よ、遠慮はいらない。一気に行くぞ」

「言われなくても!」

 シュラはムチをしまい、魔法で剣を作り出して魔物を切り裂いていく。

「……すごい」

 彼の身のこなしは解放状態のクラマほどではないにしても目にもとまらぬ、という言葉がしっくりくるほどだった。

「ぼ、僕も戦うよ!」

「ユキナはダメだ! お前が魔法使ったらここが崩れる!」

 あっ、そうか……こういう場所で僕って役に立たない?

 クラマも必死に剣で応戦するけどかなり苦戦してるみたい。

 いっそ僕が危険な目にでも合えばいいんだろうけど……。

「ぐっ、言っておくが……妙な事は、考えるなよ……!」

 クラマが魔物の振るった爪を剣で受け止めながらこっちをめっちゃ睨んでくる。

「わ、分かったよぅ……」

 見てるしか出来ないの……?

 いや、こんな時でも使える魔法があったはず。
 えっと、えっと……。

「かの者に勝利の祝福を……【グランディズメント!!】」

 クラマとシュラの身体がうっすらと赤い光に包まれる。

「うぉっ、これは……ユキナがやったのか?」

「信じられん効果量の強化魔法だな……感謝するぞ」

 シュラにはすぐ分かったみたいだけどクラマはびっくりしてる。

「僕だって暴れるだけじゃないんだからね! どやーっ!」

「これならっ、いける!」

 クラマの動きが三倍くらい良くなった。
 これで連邦にかつる!

 一斉に飛び掛かってきた魔物はクラマの一振りで胴が真っ二つ。
 血や内臓があちこち飛び散ってけっこうキツイ。

 ゲームみたいに倒したらサラァって消えていってほしい。

 どちゃどちゃとあたりに魔物の死体が増えていく。

 シュラも勿論負けておらず、相変わらず鬼のような形相で魔物を仕留めていく。
 的確に急所を一突き。
 おかげで無駄に血の雨は降らないし内臓も散らばらない。
 とってもスマートな戦い方だ。クラマにも見習ってほしい。

「お嬢ちゃん! あぶねぇ!」

 気が付いたら背後にでっかいオークが立っていて、やたらでかい斧が僕に振り下ろされていた。

 かろうじてもっごが横に飛び攻撃をかわしてくれたけれど、一瞬遅かったら危なかった……。

 オークは白目を剥いていて、口からダラダラと涎を垂らしていた。
 そして、そのオークの目には、大きな傷があった。

 以前花畑で襲ってきたオークだ。間違いない。
 でもあの時より更に理性がぶっ飛んでるように見える。

 シュラが言ってたようにここの魔物達は理性が失われている。
 このオークを見て確信した。
 今思えばあの時は僕に攻撃してきたわけじゃない。ただ腕を掴んでどこかへ連れて行こうとしただけ。

 きっとまだあの時には理性があったんだろう。
 かわいそうに……。


「お嬢ちゃん大丈夫か!?」

「僕は平気! ありがとうねもっご!」

「俺のユキナに……何してるんだ貴様ぁっ!!」

 そんな恥ずかしくなるようなセリフを叫んでクラマが超人化し、オークを一刀両断。頭から真っ二つ。

「……クラマ、このオークあの時の……」

「そうか。今回はきちんとトドメをさせたようだな」

 僕は、無意味と分かっていながらもオークの遺体に手を合わせて祈った。


「うおっ!?」

 突然グゴゴゴ……と地面が揺れ、ぽっかりと穴が開いた。
 床が崩れて下の通路と繋がってしまったらしい。
 でもそんな事より問題なのは……。

「クラマっ!!」

「ぐっ……俺の事はいい! 自分で何とかする!」

 そう言い残しクラマは暗闇に消えていった。

 僕の危険が去ったからクラマの超人的な力は既に消えていた。

「……こちらは終わったぞ。勇者は……下に落ちたのか?」

 残りの魔物を全て片付けてシュラが僕の肩を叩く。

「ど、どうしよう! クラマが、クラマが落ちちゃった!」

「……見せてみろ。……勇者、聞こえているか?」

「あぁ。こっちは無事だ。上によじ登るのは難しそうだが……」

 暗闇の中からクラマの声がする。怪我とかはしてないみたいでよかった……。

「だったら僕らも下に……」
「ダメだ! 俺はまだ力がうっすら残っていたから無事だったが結構深い。怪我をするぞ」

「そんなの魔法で防げば……」
「これ以上振動を与えない方がいい。あまり大声だって出したくないくらいだ。思った以上に脆くなってるから静かに進め。少しの間別行動だ」

 待ってよ、クラマ僕居なきゃ力出ないじゃん……。

「勇者、お前にこれをやる。ちゃんと受け止めろよ?」

 そう言ってシュラは腰に下げていた袋から小さなランタンを出して火を付け、そのまま穴の下へ放った。

「助かる。俺はこのまま先へ進むから俺に構わず進め。どこかで合流できるだろう。ユキナ……俺は一人でも平気だから、心配するな」

 クラマはそう言って暗闇を進み出す。

 直前、一瞬だけ灯りに照らされたクラマの顔が見えたような気がした。

 ……クラマ、無事でいてね。

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