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最終章:女神への願い。

第34話:大魔王爆誕。

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「……ど、どうだろうか?」

 僕は魔王が作ってくれた焼き魚とお味噌汁を頂きながらちょっと感動していた。

「すごいじゃん、魔王って料理もできるんだ? とっても美味しいよ♪」

「そ、そうか……それは、よかった」

 ホッと胸をなでおろす様子がこれまた可愛らしい。

「ちょっと気になったんだけど、調味料とかってどこから持ってきたの?」

「む……? あぁ、そんな事か。私は魔王城に備蓄してある食糧庫からいつでも好きな物を取り出す事が出来るからな」

「すっごい! 遠隔の物を取り寄せたりできるんだ?」

「ま、魔王だからな。それくらいは容易い事よ」

 へぇ……遠くにある物を取り出せるって事は……あれ?

「それってもしかしてクラマとはぐれた時にすぐクラマを引っ張り出す事とかできたの?」

「いや、さすがにそれは無理だ。食糧庫は私が場所をきちんと把握しているから……それとあまり大きな物を取り出す事はできん。その場合は自ら転移して持ってくるしかないな」

「転移とかできるんだ? だから前に会った時も目の前から消えちゃったんだね」

 転移とかできるなら世界中どこでもひとっとびじゃん。すっげーっ!

「私の魔王らしさがやっと理解できたか?」

「魔王らしいかどうかはおいといて魔王の実力は理解したよ♪ でもそれなら今後どこにでもすぐ行けるね♪」

「それはそれで多少の制限はあるがな。無理というほどではない」

 なるほどなぁ。さすが魔王って言うだけあってすごい魔法が使えるんだね。
 そっか、最初っから強い人だなぁとは思ってたけど魔王だったならそれも納得だよね。

「それにしても美味しいよこれ。魔王って結構家庭的だったんだ?」

「……母親が、よく作ってくれていたのでな」

 そう言って魔王は寂しそうな顔をした。
 やばい、地雷踏んだかも。

 こちらの様子に気付いたのか、魔王は「気にする事はない」と微笑んだ。

「母は……これは誰にも言った事がないのだが、実は魔物と人間のハーフでな」

 ……おぉ? 既に魔物と人間の共存関係出来てんじゃん異種族の恋とか胸熱!!

「じゃあ魔王はクォーターなんだね」

「多少なりとも人間の血が入っている事が昔は嫌で嫌で仕方なかったのだがな。今となってはむしろありがたく思うよ」

「魔王ってさ……」

「ラシュカルだ。この姿の時はラシュカルでいい」

 魔王ラシュカル……それが彼の本当の名前なんだろう。

「じゃあラスカルで」

「どうしてそうなった?」

「だってラスカルの方が可愛いじゃん」

「お前……母からもらった名前をだな……いや、いい。お前だけの名前で呼ばれるというのも悪い気はしないものだ」

 味噌汁を啜りながら彼は器で顔を見えないようにしていた。もしかしたら照れているのかもしれない。

 ぴかっ!!

「うわっ、なにこれっ!?」

 突然目の前が真っ白に光る。でもこれってどこかで……。

「あーあ」

 もっごのそんな声が聞こえた気がした。

 光がおさまって、目を開けると……目の前には白目を剥いて放心したラスカルの姿が。

「ちょっと、ラスカル? 大丈夫?」

「わ、私は……何という事を……他者からつけられた名を、受け入れてしまうとは……一生の不覚……」

 そんな事言いながら放心してる。

「ねぇもっご、この人どうしちゃったの? さっきの光って……あっ」

 もしかして、さっきのって……。

「お嬢ちゃんも気付いたか? 魔物ってのはさ、名前を付けられてそれを受け入れた時点で名付け親との契約が発生しちまうんだぜ。おいらの時もそうだっただろ?」

「……で、でもさ、それを言うならラスカルは親から名前を付けられてる訳でしょ? 普通そこと契約してる事になるんじゃないの?」

「そりゃそうだぜ。でも魔王様の両親は既に他界してるからなぁ……主不在での状態だった訳だ。そこにお嬢ちゃんが名前なんか付けちまうもんだから……魔王が聖女のしもべになるなんて前代未聞どころの話じゃねぇぞ……」

 マジ……? ラスカルが僕の従者になっちゃったって事?

「でもさ、魔王ほどの立場ある魔物でもそんな事って起きるの?」

「普通はおこらねぇよ。名前を付けられたからって本人が拒絶してりゃ意味がねぇし、何より魔力量の問題もある」

「魔力量?」

 魔物の仕組みがよく分からない。

「おいら達魔物は契約を結ぶ事で主から魔力が供給される。本来はおいらみたいな下級の魔物の力を底上げするシステムみたいなもんなんだよ」

 もっごは「やれやれ」と言いながら放心したラスカルをチラっと見る。

「魔王ともなれば誰にも与しない自分が頂点だという強い意志と、誰にも負けない魔力量を持っているからおいそれと他人に服従させられたりしねぇはずなんだがなぁ……」

「それってもしかして、ラスカルが僕の事好きって言ってくれたのと何か関係ある?」

 もっごは大きな目で天井を見つめながら、「それはあるだろうけど……」と何やら考え始めた。

「多分それだけじゃねぇぜ。きっとお嬢ちゃんの方が魔王様よりも魔力量が多かったんだろうなぁ」

 ……嘘でしょ?
 魔王に好きって言わて手料理振るまってもらったと思ったら僕が魔王の主になっちゃった……。

「契約解除って出来るの?」

「主が死ねば自動的に……でも魔王様はお嬢ちゃんを殺したりできねぇよ。こりゃ詰みだわ」

 どうやら本当に魔王を従者にしてしまったらしい。
 どうしよう……。

 ラスカルを見てもまだ放心して口から魂でも出て来そうな勢いだし……。

「ど、どうしよう? もっご、どうしたらいい?」

「おいらに聞かれても困るぜ。それにな、魔物を統べる魔王の更に上の存在になっちまったって事、理解してるかい?」

「……えっ?」

 もしかして僕、なんかとんでもない事をやらかしてしまったのでは……!?

「お嬢ちゃんは今日からおいらの主で、魔王様の主で、聖女で……」

 もっごの言葉が僕に衝撃を与え、放心した魔王にとどめを刺した。

「大魔王ってこった」

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