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☆おまけ☆
閑話1:魔王城へようこそ。
しおりを挟む「ほらクラマ起きてよ。もう行くよ?」
「うぅん……」
まったく、相変わらず寝起きが悪いなぁ……。
「そんなんだったら僕だけで先にいくからね?」
「うぅ……」
今日は朝から用事が有るっていうのにクラマは全然起きてくれない。
そっちがそのつもりならこっちにも考えがあるんだからね。
「じゃあ僕だけでラスカルのところ行ってくるから。ゆっくり寝てれば!」
「待て」
勢いよくガバっと上半身を起こし、ボサボサになった頭を掻きむしるクラマ。
「……俺も行く。すぐに準備するから少し待ってくれ」
いつもこれくらいサッと起きてよ……。
クラマはほんの数分で身支度を整え、「待たせたな」とキメ顔。
こういう所も含めて好きなもんは好きなんだから仕方ないんだけどさぁ……。
昔に比べたらこの身体になった事で僕は僕の気持ちに素直になる事ができた。
それはとても嬉しいし自分でもこの姿は気に入ってるからいいんだけど……。
「……それにしてもユキナ、今日はその……ちょっと露出が多すぎじゃないか?」
「おやおや~? とうとうこの身体に欲情するようになっちゃったのかなぁ~?」
「いや、少々気分が悪く……い、いや待て違う。そうじゃないんだ」
「……あっそ」
この身体になってからというものクラマが僕に対して距離を取る。
それはこの世界に来てから変わっていない。
……そりゃちょっとくらいはこの身体にも慣れてくれたかなーって思う事はあるけどさ。
それでもたまに、ふとした時にめちゃくちゃ
吐き気を我慢してるような顔をするんだよね……。
僕にとってそれがどれだけショックな事なのかも本人が理解してるってのが尚更質が悪いんだよなぁ。
「まぁいいや。それじゃいこ?」
二人で部屋を出て城の廊下を進み、通り過ぎる人達に手を振りながら階段を降りて中庭に出ると、そこには見慣れた後ろ姿があった。
「リィルおっはよー♪」
「あぁ、おはようございますユキナ。……と、クラマ様」
「お前最初俺の事完全に目に入ってなかったな」
「いえいえそんな事はありませんよ。今日はこんな時間からユキナと一緒だなんて珍しく
お早いんですね?」
「……」
クラマがやたらとこっち睨んで来るんだけどなんなの……?
「いつもクラマが全然起きないからよくリィルに話し相手になってもらってるんだよ」
「……へぇ、うちのユキナがいつも世話になっているようだな」
「いえいえ、なかなか相手にしてもらえないと寂しそうにしていらっしゃったのでその寂しさを埋めて差し上げただけですよ」
な、なんだこのギスギスした空気は……!
朝から空気が重くなるからやめてよね。
「ところで今日はどちらへ?」
リィルがクラマとバチるのをやめてこちらに振り向き笑顔を見せた。
あー、これ結構機嫌悪い時の笑顔だわー。
「えっとね、ラスカルに呼ばれて魔王城に行くとっころ。パーティーやるんだってさ。よかったらリィルも来る?」
余計な事を言うなとばかりにクラマが僕の肩を肘で小突くけど気にしない。これくらいいでしょ?
そもそもクラマが喧嘩売るような真似したのが悪いんだからね?
「あの魔王ですか……私とユキナの思い出が詰まった訓練場に勝手にあんな物を建造した魔王には一言私から言ってやらねばなりませんね。いいでしょう、私も一緒に行きます」
あっれ、機嫌悪そうだからせめて楽しい事を一緒に……って思ったんだけど更にギスギスの予感がしてきた。
パーティーなんてみんなで騒いだ方が楽しいと思っただけなのになんか思ってたのと違うぞこれは……。
「さ、そうと決まれば早く行きましょう」
リィルは僕らの返事を待たずすぐに城の裏手方面へと歩き出した。
「……僕らもいこっか」
「あ、あぁ」
城の裏手に回ると、以前僕とリィルが魔法の訓練をしていた場所に大きな木製の看板が突き立っている。
魔王城ジャバル支部。
そう書かれた看板は、やたら歪んだ筆跡だけれど、日本語で書かれていた。
「お前の世界ではどう書くのだ?」とラスカルに聞かれて教えてあげた結果がこんな事になるとは……。
僕とクラマにはミミズがのたくったような字にしか見えないけれど、日本語が読めないこの国の人からするとなかなかアーティスティックで良い感じらしい。
魔王城って言ってもその建物自体は完全にプレハブっぽい掘っ立て小屋だけど。
看板の方が小屋の天井より高いってどういう事なの。
ドアをノックして「ラスカル居るー?」と声をかけると、中からドタドタ音がしてドアが開いた。
でもドアの向こうには誰も居なくて……?
「嬢ちゃんこっちこっち」
声は足元からだった。
「あ、もっごおはよ♪」
「おうよ! あー、でもなんていうか……せっかく来てもらったのに悪いんだけどなぁ……」
「ん? もしかして何かあったの?」
「そこから先は私から説明しようじゃあないか」
部屋の奥からラスカルがやたらとマントをなびかせながら現れた。風も吹いてないのに。
あれどうやってるんだろ? わざわざ登場シーンの為に風魔法とか使ってるのかな?
だとしたらなかなかこだわりがあってよろしい。
こんな掘っ立て小屋じゃなければもっと貫禄が出るんだけど。
「フハハハ! ユキナ、今日も元気そうで何よりだ。まずは歓迎しよう。ようこそ我が城へ」
――――――――――――――――――――
お読み頂きありがとうございます!
今回の話は本編最終話後の後日談という後付けですが、シャドウ事件の後皆の関係性がどうなっているのか? その辺を中心にお届けいたします(笑)
もしかしたら続編を書く事もあるかもしれないですが、ひとまずは数話の閑話、無駄話にお付き合いくださいませ☆彡
応援ありがとうございます!
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