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☆おまけ☆
閑話6:おかんのおかしな料理。
しおりを挟む「……死んじゃったの?」
「いや、タケーノコノサートはこのくらいでは死なん」
だからさ、タケーノコノサートってなんだよ。
「しかし戦い甲斐のあるタケーノコノサートでしたね」
だからさ、タケーノコノサートってなんだよ。
「なかなかの援護だったぞリィル!」
「いえいえラスカルこそさすが魔王。凄まじい戦いでした」
がしっ!
二人は戦闘を経て妙な友情が芽生えたらしい。
がっちりと握手して笑いあう。
「……俺達は何を見せられているんだ」
「奇遇だね、僕も同意見だよ……」
「さて、ではタケーノコを回収するとするか」
「そうですね。そうすればタケーノコノサートも縮むでしょう。また来年、ですね」
……何を言ってるのかよく分からない。
ラスカルとリィルは倒れたタケーノコノサートの身体をよじ登り、頭部の後ろあたりにある出っ張りを魔法で生み出した剣で切り落とした。
するとそこから一気に魔力が噴き出し、みるみるうちにタケーノコノサートが小さくしぼんでいく。
最終的にもっごくらいのサイズになってしまった。
「小さくて可愛い。持って帰りたい」
そしてタケーノコノサートとかいう訳の分からない可哀想な名前じゃなくてもっとカッコいい名前を付けてやるんだ。
でも僕の主張はあっさりと却下された。
タケーノコノサートはキノーコ山の守護者らしく、このタケーノコノサートが居るから山の秩序が守られているんだとかなんとか。
ちなみにタケーノコっていうのはタケーノコノサートがマグマを通して大地の魔力を蓄え、膨張したタンクのような物らしい。
そしてそれはとんでもなく美味らしい。
で、タケーノコノサートはしばらくするとまた徐々に魔力を蓄え大きくなっていくんだそうだ。
この山にタケーノコノサートが何匹いるか知らないけれど、この子一匹では無いらしい。
中には体が小さくとも立派なタケーノコを宿しているタケーノコノサートもいるらしい。
だからわざわざ山の麓から山頂を目指して捜索してたみたい。
……キノーコ山に居るタケーノコノサートから取れたタケーノコ……。
出発前だったらゲラゲラ笑い転げているところかもしれない。
けど、僕のテンション最高潮の瞬間に知ってしまったが為に今とっても気分がナーバスになってる。
持って帰っちゃダメだって言うし。
でもこのままじゃ他の動物とかに襲われて危ないかもだしせめて回復魔法だけでもかけてあげないとね。
「ほら、元気出して。急に襲ってごめんね? また大きくカッコよくなるんだよ」
そう声をかけながらタケーノコノサートの傷口付近に口付けをする。
ぼうっとその身体が光り輝き、タケーノコノサートが目を覚ました。
「きゅっ!? ……きゅ?」
「やっべちょーかわいい。やっぱり持って帰りたい」
やっぱり却下された。
「うぅ……名残惜しいけど君は強く生きるんだよ……? そしてまた大きなタケーノコを作ってね」
「きゅっ! きゅきゅ……!」
タケーノコノサートは僕の足元までちょこちょこ歩いて来たかと思うと一度頭を足にこすりつけてからとたとたと山頂へ消えていった。
「……可愛い……」
「へ、へぇ……嬢ちゃんはあーいうのがタイプなのかよ」
なんだかもっごが拗ねてる。
「拗ねないでよ。僕の一番の眷属はもっごなんだからね?」
「そ、そんなんとーぜんよ! あんなのに負けてたまるかってんでぃ!」
もっごも単純というか純粋というか……。
はぁ、しかし可愛かったなぁ……。
「これで無事にタケーノコも手に入った事だし魔王城へ帰るとするか!」
「帰りの転移も頼んでいいですか?」
「無論だ。では近くに来い。何をしている勇者よ、貴様もだ早くこっちへこい」
クラマも僕と同じでなんだかやりきれないもやもやを抱えているみたいだった。
そりゃ何がどうなってそんな名前になったのかとかいろいろ気になるもんねぇ……。
「よし、準備はいいな? では帰還する!」
ラスカルの転移魔法が起動したその時、僕は大事な事を思い出した。
「待って、リィルにお願いが……」
僕が言い切るよりも早く転移魔法が発動し……。
「うぼぼげぇぇぇっ!」
「うわユキナ! 私の魔王城で吐くんじゃない!」
うるさい人の話を聞かずに直接小屋の中に転移したのが悪い!!
「す、すぐに楽にしてあげますからね!」
リィルのおかげですぐに楽になったけれど室内はすっぱい匂いが充満してしまいその後しばらくドア全開で換気する羽目になった。
片付けは勿論僕が自分で……うぅ……情けない。
リィルが手伝うと言ってくれたけれどさすがに断って僕が一人でやる事にした。
勿論他の連中は手伝おうなんて一言も口にしない。ほんとにリィルの爪の垢でも煎じてのめばいいんだはくじょうものどもめ。
床を綺麗に掃除出来た頃には台所の方からいい匂いが漂ってきた。
「これはいいタケーノコの香りがしてきましたね」
僕の知ってるタケノコとはまったく違う、もっと香ばしくてなんというか吐いたばかりなのに胃袋が刺激される香り。
「これは……なんとまぁ……」
クラマまで今にも涎を垂らしそうになってる。
もともと食に関してあまり積極的じゃないクラマがこんな事になるんだからよっぽどだ。
それにしても……。
台所に立つラスカルの後ろ姿を見ていると、以前にも思ったけれど本当にお母さんって感じだ。
「どうした?」
急に振り向いたラスカルと目が合ってしまう。
「い、いや……いい香りだなと思って……」
「ふふっ、すぐにできるからもう少し待っていろ。最高のおもてなしをしてやろうではないか」
そして……とうとう僕らの目の前に、キノーコ山でタケーノコノサートから採取したタケーノコを使った料理が並べられた。
きのこの山のたけのこの里からとれたたけのこ……。
今考えてもネーミングセンスがバグってる。
「さぁメイジ鍋の完成だ! たらふく食べると良いぞ」
美味しそうな料理を目の前に再び噴き出したのは言うまでもない。
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