ココロノコエ

ライカ_Lyka

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第四章 言葉が動かすもの

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 「これ、読んだ? 部活棟の清掃の件。たぶんあれ、俺らの言ってたことだよな」

 昼休みの廊下、誰かの声が聞こえた。手には新聞部が掲示した最新号のコピー。

 ──見出しは、《“当たり前”を問い直す声──清掃予算の現場から》。



 「……見てくれる人、いたんだな」

 蒼太が呟いた。

 「ちゃんと届いてるよ。蒼太の言葉が、誰かの心に」

 僕も思わず笑みをこぼす。

 記事には、蒼太が感じた違和感や、掃除に関わる生徒・先生の声が丁寧に綴られていた。僕は蒼太のラフなメモに少しずつ肉付けをして、彼の言いたかったことを崩さないように慎重に整えた。



 反響は予想以上だった。次の日には、生徒会が校内掲示を再点検し、先生たちも記事に目を通していたらしい。

 「どうやら、予算配分の見直しが検討されるみたいよ」

 咲坂先輩がそう教えてくれた時、僕は驚きと少しの誇らしさを覚えた。

 ──自分たちの言葉が、何かを動かした。



 けれど、良いことばかりではなかった。



 「この記事、少し問題があるんじゃないか?」

 部室に現れたのは、生徒会顧問の教師だった。険しい表情で、僕たちの記事を机に置いた。

 「一方的な見方になっていないか? 関係者への確認は? 君たちは記者なんだから、責任を持たないと」

 部室の空気が一気に重くなる。



 僕は言葉が出なかった。
 確かに、予算について学校側の詳しい見解を取れていなかったのは事実だ。

 「すみません……もっと確認すべきでした」

 そう言った僕に、顧問の先生は静かにうなずいた。

 「責任を取る必要はない。ただ、これからはもっと考えて書いていくことだな」



 その日の帰り道、僕はずっと頭の中がぐるぐるしていた。

 ──僕たちは、間違ってたんだろうか。
 ──伝えたことで誰かが傷ついていたら?
 ──でも、黙ってたら何も変わらなかった。



 その夜、咲坂先輩からメッセージが届いた。

 「書くって、きれいなことばかりじゃない。でもね、たとえ傷つけてしまったとしても、その“痛み”を見つめる勇気も、伝える側には必要なんだよ」


 僕はその言葉を読んで、ゆっくりとスマホを置いた。



 ──言葉は、人を動かす。
 でも同時に、重さも、責任もある。



 僕はそれを、これからちゃんと背負っていく。

 何度だって、間違えて、悩んで、でも──

 それでもやっぱり、「伝える」ことをやめたくはないんだ。
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