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第5話 ちょっとした冒険
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「今日はいよいよ、街道を外れて森の中へ行くんだね」
「そうです」
次の日の朝、宿を出たリーネとフリッツは森の地図と目的地の位置を示す小型の羅針盤を持って歩き始めた。
森の中へ入ると木々の合間から漏れる光がほんのりと辺りを満たし、心地良い気分である。リーネはここでも珍しい植物やキノコや虫などを熱心にスケッチする傍らで、真剣な彼女の邪魔をしないように、フリッツは周囲の様子を油断なく警戒していた。
しばらくは何もなく散歩気分で歩いていたが、奥に進むにつれて人の手が入った痕跡はなくなり、徐々に木々は密集し下草も伸び放題で、歩き辛くなってきた。うす暗くなった森の苔むした岩や木々の間に垂れる無数の蔓が、否応なく薄気味悪さを演出している。
この様子だといつ魔物が出てもおかしくないな、とフリッツは剣の柄に指を掛けいつでも抜けるように構えた。
陽が傾き始め、より一層不気味さを増す森の中が急に静かになった。今までどこからともなく聞こえていた鳥や獣の声が聞こえなくなったことに、フリッツは気が付く。
妙な沈黙が続き、嫌な匂いの風が吹き抜ける。
「リーネさん、気を付けて。何か来る」
フリッツが警戒感を滲ませて、隣のリーネに声をかけ、鞘から剣を抜いた。徐々に何か虫の羽音のようなものが聞こえてくる。それは間違いなく二人に近づいて来ており、不快な耳障りに思わず眉間に皺が寄る。
ガサガサと草や木の葉が揺れる音がして、姿を表したのは人の大きさの半分はあろうかという巨大な蜂の魔物だった。それも複数、どうやら取り囲まれているようだ。赤く光る大きな目が否応なく危機感を煽る。
襲い掛かって来る巨大な蜂の一匹を華麗な一閃で撃退するフリッツ。続けざまに二匹目、三匹目と一刀のもとに両断していく。その鮮やかな剣さばきにリーネは思わず見惚れていたが、はっとして鞄を地面に置くと中から緑色の粉が入った小瓶と明かりの点いていないランタンを取り出した。
「一体あと何匹いるんだ……?」
次々湧いてくる蜂の魔物にいい加減ウンザリしたフリッツが思わず唸った途端、リーネが叫んだ。
「フリッツさん、伏せて!」
そう言われてフリッツは反射的に身を屈める。それを見計らってリーネは硝子の小瓶に入った緑色の粒子を手に広げ、魔物の群れに向かってぶーっと思い切り吹きかけていった。
「!」
フリッツは驚いて、思わず動きが止まる。
その粉は霧のように大きく広がり魔物達の体に付着し、直後魔物の群れが悶えるようにぐるぐると飛び回り、耳をつんざくような叫び声を上げ始める。
思わずフリッツは顔をしかめたが、リーネは素早く次の行動に移る。彼女が六角柱型のランタンを高く掲げると、中から眩い白光が輝き魔物の群れはそれに当てられると方々へと逃げて行った。
半ば呆然と一連の様子を見ていたフリッツが、困惑した顔でリーネを見る。
「とりあえず聞きたいことは色々あるけど……その前に水貰える?」
「はい。待って下さいね」
リーネは光るランタンを置き、鞄から水筒を出しフリッツに手渡す。それを飲んで一息吐くと、フリッツはリーネに質問する。
「で、さっきの緑色の霧みたいなのは何?」
「これですか? これは毒霧の粉ですよ」
「毒霧?」
「はい。錬金術で調合した魔法の粉なんですけど、これを吹きかけると相手を毒状態にすることが出来るんですよ。あと、他にも痺れさせるやつとか目潰し出来るやつとか。火炎が吹けるやつもあるんですよ。全部纏めてデーモンブレスの素って呼ばれてます」
そう説明しながら、リーネは楽しそうに鞄から黄色の粉の入った小瓶や、黒色や赤色の小瓶をフリッツに見せた。
「でもやっぱり私が一番好きなのは毒霧ですね!」
「へ、へぇ……そうなんだ……刺激的だね」
リーネの満面の笑顔を見ると、何故毒霧が一番好きなのかを尋ねる勇気がフリッツにはなかった。
「そうです」
次の日の朝、宿を出たリーネとフリッツは森の地図と目的地の位置を示す小型の羅針盤を持って歩き始めた。
森の中へ入ると木々の合間から漏れる光がほんのりと辺りを満たし、心地良い気分である。リーネはここでも珍しい植物やキノコや虫などを熱心にスケッチする傍らで、真剣な彼女の邪魔をしないように、フリッツは周囲の様子を油断なく警戒していた。
しばらくは何もなく散歩気分で歩いていたが、奥に進むにつれて人の手が入った痕跡はなくなり、徐々に木々は密集し下草も伸び放題で、歩き辛くなってきた。うす暗くなった森の苔むした岩や木々の間に垂れる無数の蔓が、否応なく薄気味悪さを演出している。
この様子だといつ魔物が出てもおかしくないな、とフリッツは剣の柄に指を掛けいつでも抜けるように構えた。
陽が傾き始め、より一層不気味さを増す森の中が急に静かになった。今までどこからともなく聞こえていた鳥や獣の声が聞こえなくなったことに、フリッツは気が付く。
妙な沈黙が続き、嫌な匂いの風が吹き抜ける。
「リーネさん、気を付けて。何か来る」
フリッツが警戒感を滲ませて、隣のリーネに声をかけ、鞘から剣を抜いた。徐々に何か虫の羽音のようなものが聞こえてくる。それは間違いなく二人に近づいて来ており、不快な耳障りに思わず眉間に皺が寄る。
ガサガサと草や木の葉が揺れる音がして、姿を表したのは人の大きさの半分はあろうかという巨大な蜂の魔物だった。それも複数、どうやら取り囲まれているようだ。赤く光る大きな目が否応なく危機感を煽る。
襲い掛かって来る巨大な蜂の一匹を華麗な一閃で撃退するフリッツ。続けざまに二匹目、三匹目と一刀のもとに両断していく。その鮮やかな剣さばきにリーネは思わず見惚れていたが、はっとして鞄を地面に置くと中から緑色の粉が入った小瓶と明かりの点いていないランタンを取り出した。
「一体あと何匹いるんだ……?」
次々湧いてくる蜂の魔物にいい加減ウンザリしたフリッツが思わず唸った途端、リーネが叫んだ。
「フリッツさん、伏せて!」
そう言われてフリッツは反射的に身を屈める。それを見計らってリーネは硝子の小瓶に入った緑色の粒子を手に広げ、魔物の群れに向かってぶーっと思い切り吹きかけていった。
「!」
フリッツは驚いて、思わず動きが止まる。
その粉は霧のように大きく広がり魔物達の体に付着し、直後魔物の群れが悶えるようにぐるぐると飛び回り、耳をつんざくような叫び声を上げ始める。
思わずフリッツは顔をしかめたが、リーネは素早く次の行動に移る。彼女が六角柱型のランタンを高く掲げると、中から眩い白光が輝き魔物の群れはそれに当てられると方々へと逃げて行った。
半ば呆然と一連の様子を見ていたフリッツが、困惑した顔でリーネを見る。
「とりあえず聞きたいことは色々あるけど……その前に水貰える?」
「はい。待って下さいね」
リーネは光るランタンを置き、鞄から水筒を出しフリッツに手渡す。それを飲んで一息吐くと、フリッツはリーネに質問する。
「で、さっきの緑色の霧みたいなのは何?」
「これですか? これは毒霧の粉ですよ」
「毒霧?」
「はい。錬金術で調合した魔法の粉なんですけど、これを吹きかけると相手を毒状態にすることが出来るんですよ。あと、他にも痺れさせるやつとか目潰し出来るやつとか。火炎が吹けるやつもあるんですよ。全部纏めてデーモンブレスの素って呼ばれてます」
そう説明しながら、リーネは楽しそうに鞄から黄色の粉の入った小瓶や、黒色や赤色の小瓶をフリッツに見せた。
「でもやっぱり私が一番好きなのは毒霧ですね!」
「へ、へぇ……そうなんだ……刺激的だね」
リーネの満面の笑顔を見ると、何故毒霧が一番好きなのかを尋ねる勇気がフリッツにはなかった。
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