Sudisutic gun

記憶とレクイエム

　階段を降り、廊下を少し進むとレクイエムの部屋がある。コルコットはノックをすると、
「レクイエム、いるのかしら？」
とたずねた。扉の隙間からは柔らかい色の光と優しい音楽がもれていた。
「あら、あら。コルコットさん、どうぞお入りください。」
部屋の中に入ると気品あふれる少女が椅子に腰掛けてうっとりと音楽に聞き入っていた。彼女はレクイエム。コルコットよりも2歳年上である。
　ここでコルコットはあることに気づく。
「この歌、前回のクレバトールで流れていたのかしら？」
レクイエムはコルコットの疑問を聞いた途端に目を輝かせ、嬉しそうに笑った。
「すごい、すごいですわ。さすがコルコットさん。よくお気づきになりましたわね。」
　レクイエムはカセットテープを入れ替えると今度は先程の気品が嘘だったかのように笑顔を消してしまった。
コルコットはふう、と息を吐くと「変わったわね。」と呟いた。
「で、なんの用？」
いきなり変わったレクイエムの口調に一瞬身構えてしまう。が、すぐにこたえる。
「特に用はないわ。様子を見に来ただけよ。」
といって部屋を出ようと立ち上がる。ドアを閉めようとしたところでレクイエムがちょっと、とコルコットを引きとめた。振り返ると手紙を差し出していた。
「この前ポストに入ってた。多分イグレスト宛。届けに行って。」
レクイエムから手紙を受け取ると静かにドアをしめた。

　部屋からでたコルコットは先程のレクイエムを思い出しながら小さく微笑む。
（久々にアレをみましたわ。あまりなれるものじゃないわね。）
　レクイエムは音楽にすべてを込める。感情や性格、記憶まで。先程カセットテープを変えたときにレクイエムの口調が変わったのもそのせいである。原因は不明。
　ラガルトには変な人が多い。