勇者の剣を折ったせいで奴隷落ちした僕は、公爵令嬢に買われてひのきの棒で戦うことを提案されました

いとうその

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3.大きなお屋敷

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第3話

「さっきの奴隷。私が買うわ!」

 サクラが胸を張って答える。

「は?この奴隷を買うのか?」

「…助けたことで同情したのなら良いですよ。当たり前のことをしただけですから」

「違うのよ!私は強い騎士を探してたの。貴方みたいな」

 未だに理想の騎士を見つけて高揚している。

「それで、いくらなの?」

「はぁ、2億ゴールドになりますが」

「2億ね…」

 当たり前だが、高価な値段である。16歳程度の少女が奴隷の相場など定かではないかもしれないが、その中でも高い値段なのは間違いなかった。だが、この少女も特別であった。

「ベレス。今持っているお金っていくら?」

「はい、5億ゴールドです。元々スカウトの予定でしたから高めに持ってきていましたので」

 そう言って、ベレスと言われた1番屈強な兵士は大量の金貨が入った大袋を手にしていた。その金額に目を飛び出す奴隷商人とダイヤ。

「んじゃあ5億あげるからさっさとよこしなさい」

「は、はい!」

 そう言ってすぐにダイヤの手錠を外す。と言っても、元から千切れていたのだが。

「どうぞ!ありがとうございました!」

 奴隷商人はご機嫌に去っていった。3億の黒字なのである。高揚するのも無理はなかった。

「さてと」

「は!」

 サクラの言葉で止まっていたダイヤが動き出し、その足元に跪く。

「この度は僕なんかをお買い上げ頂きありがとうございます。ご主人様」

「あ、奴隷だからそんな感じなのね。貴方名前は?」

「ダ…奴隷に名前などありません。ご主人様の思ったまま付けて下さい」

 自分の名前を言おうとして否定した。

「…じゃあ元々の名前は?」

「それは…」

「なに?初めから名前もないの?」

「いえ…ダイヤと呼ばれていました」

「じゃあダイヤって呼ぶわ。私はサクラ。よろしくね。ダイヤ」

 サクラはニッとして笑う。

「は、はい。ありがとうございます…」

「私のこともご主人様じゃなくてサクラでいいから」

「そ、それは…」

 元々、騎士であったダイヤは主を名前で呼ぶのに抵抗があるのだ。

「サ ク ラ」

 しかし、それに対してサクラは高圧的な態度を示す。

「さ、サクラ様」

「うん。よろしい。そいえば貴方いくつ?」

「はい。15です」

「やっぱり年下だ。私は16だから年上ね」

「き、既視感…」

 ダイヤはサクラとゼラを重ね合わせた。

「ん?何か言った?」

「い、いえ。何でもないです。サクラ様」

「それじゃそうね。私のお屋敷に行きましょうか、付いてきて」

「分かりました」

 そう言うわけで、サクラと数人の兵士の後をついて行くことにした。

「ふぇ?」

 ダイヤは目を疑った。思わず変な声もあげてしまった。サクラの屋敷は自分の故郷の城並みの大きさだったのだ。

「ん?どうかした?」

「いや…とっても大きなお屋敷だと思いまして…」

「ふふん…私はこの国有数の名家の生まれだからね。さ、まずはその匂いをどうにかしないとね」

「え?」

「あ、気付いてないの?貴方今とっても臭いわよ」

 人には自分が臭いのを自覚できなくなる時がある。何日も馬車の中に揺れ、水浴びすらしてなかったダイヤはとても異臭を放っていた。

「すいません…半年間奴隷をやってて…ろくに水浴びもしてなかったものですから」

 ダイヤが奴隷落ちきたのは半年前である。そのため見た目は騎士団にいた頃とはかけ離れてボロボロになっていた。

「そう…苦労したのね」

 すると、サクラが「パンパン」と手を叩く。メイドが数名現れる。

「この子を風呂に案内して」

「かしこまりました」

 メイドの1人に命令すると、ダイヤは数名のメイドに囲まれて身動きが取れなくなる。

「ちょ、ちょっと…」

 そのまま風呂まで案内されることになった。しかも、洗ったりなどの世話もメイドがやることになったのだ。

「そ、そそそそ、そこまでしなくていいですよ」

 あまりの出来事で顔が赤くなるダイヤ。

「可愛い…じゃなくて、お嬢様の命令ですのでこれは仕方ないことですので」

「今可愛いって言いましたよね!?」

「ほらほら、前を開けて下さい」

「あー!あー!」

 ダイヤは人生で1番の辱めを受けた。

 風呂を終えると、目の前にサクラがいた。

「さ、サクラ様!?」

 ダイヤはまだパンツのみの状態。ほぼ裸である。

「うん。匂いはとれたみたいね。次は筋肉チェックよ」

 すると、サクラはダイヤの身体をベタベタと触り出す。

「な、なにを…」

「うん。細身なのにやっぱりいい筋肉してるわね。これからあの素晴らしい剣撃が放たれるわけね」

「や、やめて下さい!」

 ダイヤは真っ赤になりながらサクラに抵抗する。

「あら、貴方は私の奴隷でしょ?ご主人様の言うことは聞かないといけないでしょう?」

 すると、ダイヤは何かを察したのか目を大きくした後、涙を流し始めた。

「ちょ!ちょっと!どうしたのよ!」

「いや…これから僕の貞操はサクラ様のものになるのだなっと思ったら…怖くて…すいません」

「て、貞操!?何バカなこと言ってるの!?」

 すると、サクラも顔が赤くなる。

「だって、そうじゃないと僕を買った理由が思いつきません…」

「…貴方を買ったのは素晴らしい騎士だから!それ以上でもそれ以下でもないわ!貴方を奴隷とも思ってない!絶対変なことしないから!本当だから!」

「本当ですか?」

 15歳の少年が子犬のような瞳で見つめる。

「う…ほ、本当よ。何もしないから」

 一瞬、サクラは何かに目覚めようとした。が、なんとか理性を保った。

「よ、良かったー!」

 ダイヤは笑顔になる。

「な、なにこの気持ち…これが母性?」

 サクラは感じたことのない気持ちに襲われていた。

 次にダイヤは料理でもてなされた。しかも、ただも料理ではない。満漢全席のような1人では食べれない量である。

「ふぇ?」

 再びだらしない声を上げる。

「さ、召し上がれ」

「こ、これを僕にですか?」

「他に誰がいるの?」

「僕奴隷ですよね?」

「…さっきも言ったでしょ?私は貴方を奴隷と思ってないわ。騎士として私の屋敷で雇ったのよ。これくらい当然のもてなしだわ」

 そう言ってサクラが胸を張る。

「あ、ありがとうございます」

 そう言って次々と料理を平らげて行く。奴隷になってから、ろくな飯にありつけていなかったダイヤは、1人では到底食べれないと思っていた料理を全て胃の中に収めた。

「あ、あの料理を全て食べるなんて…」

「や、やっぱりダメでした?」

 サクラの発言に震えだす。

「いいえ、あの料理をこんな小さな身体のどこに収めるか不思議に思っただけ。さて」

 すると、サクラはダイヤにビシッと指を指す。

「食休みしたら、次は模擬戦ね!」
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