勇者の剣を折ったせいで奴隷落ちした僕は、公爵令嬢に買われてひのきの棒で戦うことを提案されました

いとうその

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7.入学式

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第7話

「それでは、新入生入場」

 合図とともに新入生が入ってくる。新入生は2列で入場する。右に貴族、左にそれを護衛する騎士である。

「サ、サクラ様…」

「なに?」

 神聖な場の為、2人は小声で話す。

「僕だけ浮いてませんか」

「………」

 他の参列者は重厚な装備や冒険者風の格好をしており、皆自信に溢れている。しかし、ダイヤの学校は騎士と言うより木樵に近い。背中には背負い籠を背負っており、中身は大量のひのきの棒。まるで山に芝刈りをして帰ってきた少年のようだった。

 ちなみに右側の貴族達はサクラも合わせて指定された綺麗な制服を着ている。

 どうやら周りもダイヤに気付いて、ざわついている。

「…ね」

「ね。じゃないですよ…」

 ダイヤは周りの温度差に恥ずかしさすら感じ始めてきた。新入生が入場し、準備してある席に座る。すると、司会進行をしている男が話し始める。

「それでは、新入生代表として、サクラ=フィル=ルーンライト様よりご挨拶をいただきます」

「はい」

 すると、サクラは立ち上がって台に上がる。

「へ?」

 いきなりのことで困惑するダイヤ。台上にいるサクラは喋り始める。

「この度は私たちの門出に集まっていただきありがとうございます」

 それからは、ダイヤには分からない難しい言葉をサクラが話し続けていた。そして、挨拶が終わると一礼して台から降りてくる。

「へ?」

「びっくりした?」

 サクラは悪戯が成功したように笑う。

「教えておいてくださいよ…」

「貴方のそう言う顔が見たかったからね」

 サクラは笑い続ける。

 その後も、入学式は続き、特にそれ以上に何事もなく終了した。

「えっと…この後は教室で自己紹介ですよね?」

「そ、騎士達は教室の後ろにいる感じね」

「分かりました!」

 そう言うわけで、校舎の中に入り、1年B組の教室に入る。ここがサクラの教室である。サクラが教室の椅子に座り、ダイヤは教室の後ろに待機する。大勢の騎士達が待機しており、ぎゅうぎゅうになる。

「ちょ!ちょ!」

 ぎゅうぎゅうに詰められて身動きが取れなくなる。両隣にいる騎士は「ぷっ」と笑っていた。

 そんなことをしていると、担任の教師らしき眼鏡をかけた老婆が入ってくる。

「はい。皆さん。この度はご入学おめでとうございます」

 その後、ありきたりな話をした後に、自己紹介の話になった。

 次々と貴族の少年少女が挨拶すると、ついにサクラの順番になった。

「続いて、サクラ=フィル=ルーンライトさん。自己紹介をお願いします」

「はい」

 そう言って立ち上がる。周りがざわつく。

「私はサクラ=フィル=ルーンライト。東大陸を納めてるルーンライト家の令嬢。見ての通り、貴方達とは一線違う超貴族だけど。普通にサクラと呼んでくれると助かるわ」

 サクラが大袈裟に挨拶する。それに、ダイヤは耳を疑った。東大陸を納めている?確かにお屋敷は豪華なものだったが、まさかそんな大貴族だったとは思っていなかったのだ。

「それと。私の騎士を紹介するわ」

「ふぇ?」

 未だに挟まれているため、情けない声を上げる。

「…あそこで挟まれて、木樵っぽい格好してるのが私の騎士のダイヤ。あんなんでも、この中にいる2.3流の騎士とはレベルが違うわ。あんまり舐めてると殺されるかもしれないから気をつけてね」

 そうニッコリ笑ってそのまま座る。

「い、いや!そんなことしないですって!」

 ダイヤは必死に訴えるが、時すでに遅し、周りにいる騎士はすごい殺意をダイヤに向ける。思わず縮こまる。

「す、素敵な自己紹介ありがとうございました。続いて…」

 そう言ってどんどん自己紹介が終わっていく。その間も、ダイヤは殺意とぎゅうぎゅうで精神的にも物理的にも押しつぶされそうになっていた。

 一頻り自己紹介が終わり、担任の話も終わると、今日はこれで終わりとなった。席を立ち、ダイヤの元へ向かうサクラ。ダイヤも生徒達と騎士がいなくなり、やっとぎゅうぎゅうから解放されたところであった。

「ひ、酷いですよ!サクラ様!あんな自己紹介!」

「だって本当のことでしょ?」

「そうかもしれないですけど…」

「あ、否定はしないのね」

 ダイヤは軍事国家の元団長である。こんなところにいる騎士に遅れを取るとは思えない。それは真実である。

「あら、サクラさん」

 そこに、とある女性に声がかけられる。赤髪のセミロングに、胸がでかい女性はサクラと同じ制服を着ている。そういえば同じクラスにいた生徒である。

「…また面倒なのが」

 するとサクラはそっぽを向く。

「何か言いました?」

「いえ、なにも」

 サクラは笑顔で返す。

「それにしても、サクラさんが同じ学校とは驚きました。これからは仲良くしましょうね」

 そう言って赤髪はサクラに向けて手を出す。

「はぁ…そんな気はないくせによくそんな言葉が言えるわね。アケビ」

 アケビと呼ばれた少女は胸を強調する様に仁王立ちをする。

「まあ、そんなことないですよ。それにしてもサクラさんがそんな弱そうな騎士を連れてとっても可哀想です」

「…なんですって?」

 サクラはアケビに向けて敵意を向けるように目をギラっと睨む。

「あら?聞こえませんでしたか?こんな弱そうな騎士を連れているサクラさんが可哀想だなって思っただけです」

 なんだか険悪なムードである。すると、サクラはポケットにしまっていた手袋をアケビに向けて当てる。

「そんなことを言うのなら…決闘をしましょう!」

「え?」

「騎士同士の決闘を示す手袋ですか…いいでしょう。後悔しても遅いですよ!」

 どうやら手袋を当てるのが決闘の印らしあ。ダイヤの意見など関係なしに、騎士同士の決闘が始まるようである。
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