勇者の剣を折ったせいで奴隷落ちした僕は、公爵令嬢に買われてひのきの棒で戦うことを提案されました

いとうその

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16.三本

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第16話

「先に言っておきます。サクラ様がこんな目にあって、僕は貴方を許してはおきません!」

「それは僕のせいじゃ…」

 サクラはいわば自滅のようなものだが、とにかくダイヤは怒りをオランゲにぶつける。すると、ダイヤはひのきの棒を全力で振るう。オランゲの足元が三日月型に抉れる。

「!? これは…」

 一瞬の出来事で流石に驚きを隠せないオランゲ。

「壊れた背負い籠にひのきの棒…噂には聞いてましたが、貴方が万点の木樵ですか」

 どうやらダイヤの実力も先生にまで轟いているようである。

「…そうです。その万点の木樵です。降参するなら今のうちですよ。痛い目に合わなくて済みます」

「…やってみないと分からないですよ!」

 すると、オランゲはダイヤに向かって突っ込んで、ガーバから奪った大剣を思いっきり縦に振る。

 ダイヤはそれを横に避け地面にばら撒かれたひのきの棒を1つ取ると、オランゲのように縦に振る。

「すみません!ガーバさん!」

 すると、その斬撃によりガーバの大剣は見事な切れ目をして折れる。

「な!?」

 ひのきの棒で大剣を砕かれたのだ。流石に驚きを隠せない。そして、ダイヤはもう1つひのきの棒を拾うと、それをオランゲの首元に突き出す。

「あまり痛めつけたくありません。降参するなら今のうちですよ」

 ダイヤの目は騎士団長のそれとなっていた。目をギラっとして殺意すら感じる。

「なるほどなるほど」

 しかし、オランゲは首元のひのきの棒をつかむとニッコリと笑う。

「いいんですか?」

「は?」

 オランゲの予想外の回答にダイヤの殺意が消える。

「貴方の斬撃。素晴らしいものです。ですが力を制御できない。そうじゃないですか?」

「な!?」

 そう、ダイヤは力の制御が出来ない。その為伝説の剣すら破壊してしまったのだ。オランゲは首元のひのきの棒払って歩き出すと、振り返り股と手を大きく開いて宣言する。

「貴方の斬撃が直撃すると。僕は死んでしまうでしょう。それほどまでに強力だ。ですが。北を支配する三男を殺したのが、東の貴族の令嬢が従える騎士となると。どうなるでしょうね」

 そう言って汚く笑う。

「!」

 ダイヤもそれを察したようだ。貴族が貴族を殺すなんて大問題である。それがお互い地位の高い貴族なら尚更だ。

 ダイヤの斬撃でオランゲを簡単に殺す事は出来ても、その後のことでサクラを危険に晒すことはまずいことだと簡単に想像がついた。

 そんなことを考えると、オランゲはダイヤに向かって蹴りを放つ。

「!」

 ダイヤはそれをギリギリでかわす。

「不意をついたつもりですが…流石ですね」

 そう言いながらも、オランゲの攻撃は続く。拳で脚でダイヤを攻める。それを全て交わすが、ダイヤは攻撃する術がない。

「さあさあさあ!もうこれまでですよ!貴方を倒した後、そこの令嬢2人にはたっぷりお仕置きをしないといけません。時間がないんですよ!」

 そこで、ダイヤは雷に打たれた気分になった。

「は?」

 ダイヤは攻撃しているオランゲの拳を止める。その目は再び騎士団長を覚えさせる目をしていた。

「な!?」

「今何言った?」

 ギリギリと音を立ててオランゲの拳を握りしめる。

「ぐ!」

 オランゲは手を離させるために蹴りやもう1つの拳で攻撃する。その全てが直撃するが。全く聞いてない素振りを見せる。

「僕のサクラ様を?お仕置きだと?そう言ったよな?」

 どんどん握られている拳へ力を強める。

 バキ!

 オランゲの拳は痛々しい音を立てる。

「ぐぅ!」

 やっとダイヤがオランゲの拳を離したと思うと、拳は完全に潰れていた。もう動かない。恐らく複数箇所が折れているだろう。

「言っておくが。お前を斬撃なしで再起不能にすることは簡単なんだ。そんなことも分からないのか?」

 ダイヤはいつもと全く違う口調でオランゲを責める。それは潰れた拳で証明された。

「だがな」

 するとダイヤは、ひのきの棒を3本拾う。

「僕のサクラ様にお仕置きをするなんてクソみたいなことを考える奴には。僕の腹の虫が治らない!」

「ひぃ!」

 もうオランゲは怯えながら潰れた拳を抑えていた。

「3本…」

 ダイヤはひのきの棒を3本纏めて掴んで、それを思いっきり振るった。

「は!?」

 オランゲは信じられないような目で目の前の光景を見ていた。大きな竜巻が、自分に向かってやって来たのだ。そして、それに逃げる術はなく、竜巻に直撃する。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 竜巻は収まることはなく、宙に浮いてグルグルと回り続ける。

「僕の竜巻は僕にしか止めることはできない。僕が許さない限りお前は永遠に回ったままだ」

「す、すまなかった!」

 それを聞いたオランゲは必死に許しをこう。

「あぁ!?」

 だが、ダイヤの腹の虫は治らず、怒り散らす。

「お前は僕のサクラ様に何を言った!?おい!もう一度言ってみろ!」

「お、お仕置きをすると…そう言いました!」

 必死に許してもらおうと命令に従う。その間にもオランゲは竜巻で回り続けてる。

「お前何言ってんだオラァ!」

「す、すいません!」

 同じことの繰り返しである。これ程までに今のダイヤは我を忘れて怒り散らしている。

「もういいんじゃない?」

 そこに、優しい女性の声が掛けられる。

「サクラ様!お身体は大丈夫なんですか!?」

「大丈夫、大丈夫。気絶してただけだから」

「それでも心配ですよ!」

 こんなのほほん会話をしている間にも、オランゲは声を上げて竜巻に呑まれている。

「もう止めあげて、命令」

 命令と言われたらそれまでである。ダイヤはそれに従うしかない。

「分かりました」

 ダイヤは3本ひのきの棒を掴んでさっきとは反対側に振るうと、今ある竜巻の逆回転の竜巻が現れる。そして、竜巻と竜巻同士が当たると相殺されて両方が消える。これが、ダイヤにしか消せない理由である。

「いた!」

 オランゲは尻餅を突いて落ちる。

「オランゲ先生。今回のセクハラ騒動。他の先生にも話させてもらいます。いいですね」

「…はい」

 もはやオランゲはサクラに従うしか無かった。

「やりましたねサクラ様!」

 ダイヤはその話を聞きながら、ひのきの棒を拾っていた。

「あ…」

 しかし、肝心の背負い籠は投げられた拍子に壊れていた。ダイヤはなんだか悲しい表情を見せた。

「帰りに買いましょ。行くわよ」

 そう言ってサクラはこの場を去ろうとする。この後は忙しい、先生にセクハラの告発。その確認。終わった後も背負い籠を買わないといけない。それを考えてか、いそいそと歩き始めるサクラ。

「ま、待ってください!」

「…僕のサクラ様か…」

 しかし、気絶から覚めたサクラはダイヤの言葉を聞いて、少し顔を赤くしていた。後ろにいるダイヤはそれを知ることはなかったが。

 ちなみにアケビはガーバの介抱をしていた。
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