勇者の剣を折ったせいで奴隷落ちした僕は、公爵令嬢に買われてひのきの棒で戦うことを提案されました

いとうその

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17.学級委員長

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第17話

 後日、その日は1日自主学習となった。昨日、サクラがオランゲのセクハラを告発し、彼自身もそれを認めたためである。

 貴族の学園でセクハラがあったとなると大問題である。急いで対応をしなければならない。この問題は数日で解決しないといけないものである。

 そんな中、生徒たちは呑気なものである。自主学習と言われ、真面目に勉学に励む者、友達と駄弁る者。自身の騎士と話し合う者。様々なものがいるはずだった。そう。はずだったのである。先生の最後の捨てゼリフさえ無ければ。

「そうだ。この時間を利用して学級委員長を決めてもらえませんか?」

 この学級の優しそうな眼鏡をかけた老婆は柔らかく笑いながら地雷を置いて来た。多くの学生は雷に打たれた様に静まり返る。その中で、2人はニヤッと笑っていた。勿論、サクラとアケビである。

「本来は今日学級委員長を決める予定だったんです。時間があればでいいので。よろしくお願いしますね」

 そう言って先生は、地雷だけ落としてドアを閉めた。

「「私が立候補します!」」

 サクラとアケビが同時に立候補する。すると2人はお互いを睨み合う。

「アケビには学級委員長なんて似合わないわ。ここは私に任せて」

「それはこっちのセリフです。私に任せてゆっくりしてください」

 バチバチとお互いを睨み合う。その間、ダイヤは心配そうにお互いを交互に見ていた。

 それからは、教卓でお互いをアピールタイムが始まった。まずはサクラである。

「私は新入生代表として入学式に挨拶をしました。それは学年主席だという証明です。そんな優秀な私に是非とも清き1票をよろしくお願いします」

 新入生代表の挨拶は学年主席が行うものだったのか。サクラは背負い籠を提案したりと、頭のキレる人物だと思っていたが、まさか学年主席だとは思わなかった。ダイヤは驚きを隠せなかった。

「…サクラさん。あなた、入学試験の自己採点は何点でしたか?」

 アケビが尋ねる。

「499点よ!」

 恐らく500点満点なのだろう。それをそんな点数でクリアするとは流石サクラと言わざる終えない結果である。

「私は自己採点498点でした。これは学年次席と分かる点数です」

「ええ!?」

 思わずダイヤが大きな声を出してしまった。あのアケビが勉強できると思っていなかったためである。衝撃を隠せなかった。そして、大声を出したことにより案の定こちらを見る生徒たち。

「あ…すいません」

 ダイヤは場の空気に飲まれて謝ることしかできない。

「ダイヤさん。何か問題でも?」

 アケビがダイヤに尋ねる。今まで次席と知らなかったが、次席と知るとなんだかオーラを感じる。

「な、なんでもありません」

 思わずそのオーラに飲み込まれてしまった。

「とにかく、主席だか知りませんが1点しか変わらなかった前回のテストがなんだというのです。次のテストではその結果は逆になっているかも知れません」

 アケビの言っていることは正しい。たった1点しか差がなければ、その結果はすぐに逆転する可能性はある。今回の主席次席は関係なものと言って良いだろう。

「ということでサクラさん。騎士での勝負で決めませんか?」

「は?」

 サクラはキョトンとした顔をする。

「あんた自分が何言ってるか分かってるの?こないだボコボコにされといて、勝てると思ってるの?」

 ダイヤとガーバの力の差は圧倒的である。49回転ばされた挙句、最後は脅されて完敗したガーバ。対して「万点の木樵」とダサいものだが異名を手に入れたダイヤ。異名のある騎士は強さの証明だとサクラが言っていた。そんな2人が再び対決しても勝敗は目に見えているものである。

「ふふ、サクラさん。勘違いしてませんか?私は勝負とは言っても、決闘とは言ってませんよ?」

 不敵に笑うアケビ。

「!」

 瞬間。サクラがあることに気づく。だが時すでに遅しと、ガーバが歩きながら教卓に詰め寄る。

「どうも、私はアケビ様の騎士であるガーバです。学級委員長はアケビ様こそ相応しいと思います」

 そう言いながらウインクを放つ。

「「「きゃー!」」」

 学年の女子の黄色い声援が響く。ガーバは実力はともかく、素晴らしい見た目をしている。いつもとは違うガーバの強気のオーラに眩しさすら感じる。

 そして、アケビも教卓に詰め寄る。

「どうか私に…いえ、私たちに清き1票をお願いします」

 そう言って、いつもサクラに見せる様な胸を強調させるポーズをとる。

「「「うおおおお!」」」

 ある部分を見て興奮する男ども。サクラはそれを汚いものを見る目で見ていた。しかし、サクラとアケビのその部分の差は歴然である。

「…く!」

 サクラはある部分を掴むと、悔しがってその場にへたり込む。

「サ、サクラ様!?」

 ダイヤは急いでサクラの元に駆け寄る。

「ダイヤ…」

 サクラはダイヤを見上げる。

「だ、大丈夫ですよ!胸がなくたってサクラ様は素晴らしいお方です!」

 瞬間。サクラに雷が落ちる。そして、ふらふらと立ち上がると悪魔の様にニヤッと笑っていた。

「そうね…胸なんて関係ないわ…あなたがいるもの…」

 どうやらサクラの地雷を踏んでしまったらしい。

「サ、サクラ様?」

「行きましょ?」

 サクラは女子生徒の制服を持ってにっこりと笑っていた。

「え?ええ!?ちょっと待ってください!聞いてないですよ!」

 ダイヤはこれから何をされるのか察してか、強く否定する。だが、ダイヤの否定も虚しく、教室の外に連れられる。

「あー!あー!」

 サクラが自信満々にドアを開ける。

「「「「「「うおおおお!!!」」」」」」

 学生たち初見のダイヤの女性姿である。その可愛さに男女問わず歓声をあげる。

「どうかこの可愛い騎士であるダイヤの主人の私に清き1票を!」

 サクラが仁王立ちして決める。

「サ…サクラ様…」

 ダイヤは涙を浮かべている。それに再び歓声をあげる生徒たち、挙げ句の果てに騎士たちもテンションが上がっている。

「万点の木樵ー!万点の木樵ー!」

「万点よ木樵可愛いよ!万点の木樵!」

「きゃー!万点の木樵!」

 万点の木樵ムードである。これは学級委員長が決まっただろう。

「ず、ずるいですよサクラさん!ダイヤさんの女性姿なんて可愛いに決まってるじゃないですか!」

 そう言って怒っているのか称賛しているのか分からないアケビ。

「素晴らしい。これは素晴らしいものだ」

 うんうんと頷くガーバ。

「やめて下さい!」

 こうして、ダイヤを犠牲にしてサクラの学級委員長が決定したのであった。
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