勇者の剣を折ったせいで奴隷落ちした僕は、公爵令嬢に買われてひのきの棒で戦うことを提案されました

いとうその

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20.真相

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第20話

 授業も終わり放課後になると、サクラとダイヤはゼラの元へ向かう。理由はゼラに勝った条件として「秘密」を教えてもらう為である。

「…本当にスパイなんでしょうか?」

 2人はゼラの秘密として、先生になった事情を話してもらう予定である。嘘をつく可能性はゼラの性格上低いとダイヤが答えると、サクラはそれを言及することにした。

「だから可能性の話よ。何もなかったらそれでいいんだから。私は先生のスリーサイズなんか興味ないしね」

 そう言いながらゼラの元へ歩く。ゼラは校庭で授業で使った道具の片付けをしていた。

「ゼラ先生」

「ん? あ…」

 サクラに気づき、次に隣にいるダイヤに気付いて固まるゼラ。

「さっきの授業で先生の秘密を教えてもらえるって聞いたんですが」

「あ、ああー」

 ゼラはそれを聞いて目を逸らした。まるで何か後ろめたさがあるかの様に。

「…まあ、約束は約束だからね。そうだ。片付け手伝ってくれない?体育倉庫で話さない?」

「体育倉庫…ですか?」

 わざわざ人気のないところで話すとなると、あっちもこっちの聞きたいことを察しているのだろう。そして、その答えは決していいものではないのも信憑性が増してきた。

「…私は先に体育倉庫に行ってます」

 サクラはそう言って体育倉庫の元に向かう。

「えーと」

 瞬間、ゼラはダイヤに抱きついた。

「ゼ、ゼラ!?どうしたの!?」

 急なことに驚きを隠せないダイヤ。

「ごめん…ちょっとだけこのままでいい?」

 ゼラは寂しがりの猫の様に答えた。

「なんなんだよ…」

 ダイヤはなにがなんだか分からなかった。1.2分くらいすると、ゼラが顔を赤くして離れる。

「…ごめん」

「よく分からないけど体調でも悪いの?」

「は?」

「だって顔が赤いし。熱でもあるんじゃない?」

 ダイヤがそう言うと、ゼラはジトっとした目で見つめていた。

「はぁ…なんか冷めちゃった。後はこれを片付けるだけだから。行こうか」

 そう言ってゼラは授業に使った道具を持とうとするが、ダイヤが代わりに持つ。

「じゃあ行こうか」

 そう言ってスタスタと歩いて行く。

「…そう言うとこだよなー」

 ゼラもダイヤの後ろを歩く。

 体育倉庫につくと、サクラが扉の前で仁王立ちをしていた。そして、なんだか機嫌の悪そうな顔をしている。

「それだけを運ぶのに随分時間がかかったのね」

「え? いや、実は…」

「あー!あー!」

 ダイヤが話そうとするとゼラがダイヤの口を抑え、声で制する。

「な、なに?」

「そういうのは話さないんだよ!」

「よく分からないなぁ」

 ダイヤはゼラの言っていることがよく分からなかった。

「はぁ…まあ入りましょうか」

「ですね」

 そう言って、3人は体育倉庫に入る。

「さて、ゼラ先生。貴方の素性はダイヤから聞いています」

 扉を閉めるとサクラは簡潔に今の状況を説明する。

「単刀直入に聞きます。貴方はルドロフ国…軍事国家のスパイですか?」

 そう言ってビシッとゼラに指を指す。ゼラはそれを聞いて顔を俯く。

「…よくそんなことを考えたね」

 すると、ゼラは顔を上げて答える。

「そうだよ。私はルドロフ国のスパイ」

 それを聞いてダイヤとサクラは真剣な顔になる。

「なんでこの学園なの?」

 スパイと分かった途端、サクラはゼラにラフに接する。

「特に理由はなかったけど、強いて言うなら貴族がたくさん集まって情報を手に入れるためかな?」

 そして、ゼラはダイヤに指を指して答える。

「私がスパイとしてこの国に送られた理由は、そこにいるダイヤが理由」

「え? 僕?」

 当の本人はキョトンとした顔をする。

「そ、ダイヤがこの国で買われたって噂を聞いてね。私はダイヤを連れ戻しにきたの」

「え? まって、連れ戻す?」

 予想外の言葉に言葉が詰まる。

「そうだよ。ダイヤがいなくなって、私たちの戦力はガタ落ちしたわ。それほどダイヤは圧倒的だった…国王様はダイヤを許して国に戻ってくる様に命令を出してる」

「僕が…また国へ戻れる…」

 思っても見なかったことにダイヤの頭は回らない。それを察してか、サクラはダイヤの肩を叩く。

「サクラ様…」

 サクラは俯いて表情が見えないが、一言喋る。

「貴方の好きな様にしなさい」

「僕は…僕は…」

 ダイヤは複雑な気分になっていた。

「言っておくけど、ダイヤに拒否権はないよ」

「え?」

「ダイヤが拒否をしたら私たちルドロフはこの国に戦争を仕掛けるつもりでいる。それほどまでにダイヤは特異な存在だから」

 冷酷にゼラが宣戦布告を伝える。

「戦争って!?そんな無茶苦茶だ!」

 ダイヤの必死な説得も、ゼラには届かない。

「私たちも必死なの。ここでダイヤが戻って来なかったら。戦力が偏る恐れがある。いずれ私たちルドロフの脅威になる」

「…やだ」

「え?」

 ダイヤの一言にサクラは耳を疑う。

「嫌だ!サクラ様と離れるなんて!僕は絶対に嫌だ!」

 大きな声で必死に思いの丈を伝える。サクラにはダイヤがそんなに必死になる理由が分からなかった。サクラは奴隷だったダイヤを買っただけである。そんなに強い感情はないはずである。

「…そっか。それが答えなのね」

 するとゼラは体育倉庫の扉に手をかける。

「私たちが攻めてくるのは1週間後、全勢力をかけてこの国に奇襲をかけるわ。それと最後に」

 ゼラはダイヤの方を見て言葉を放つ。その言葉は震えていた。

「ダイヤ…好きだった」

 そうしてゼラは体育倉庫を後にした。

「…大変なことになりましたね」

 ダイヤはなんだか和やかに笑う。

「…なんで拒否したの?」

「え?」

「なんで拒否したのって言ったの!」

 サクラは少し怒っている様だった。

「ど、どうしたんですか!? サクラ様」

「私はただの奴隷だった貴方を買っただけで、私に特別なものはないはずでしょ!それなのに」

 すると、ダイヤはにっこりと笑う。

「そんなことないですよ。サクラ様は私の命の恩人ですし…何より…」

 顔を赤くして答える。

「僕はサクラ様のことが好きですから」

「え?」

 予想外の返答に固まるサクラ。

「…やっぱり気付いてませんでしたか。流石のサクラ様の勘でも分からなかった様ですね」

 ダイヤは調子良く「ふふん」と鼻を鳴らす。

「ま、まって。いつから?いつから私にそんな…」

「最初からですけど」

 ダイヤはにっこり笑う。

「え?」

 サクラはさらに混乱する。

「最初から僕はサクラ様のことが好きでした」

 そして、思い出す。ダイヤとサクラが出会うちょっと前の話を。
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