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蛙のしあわせ
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「お茶ってさあ、おいしいよなあ」
「まーね」
「お茶ってさあ、ミドリだよなあ、、」
「そうだねえ」
「でも、ミドリじゃないお茶も飲んでるのに、お茶ってさあ」
「ミドリだね、、、、、。ところで、僕ら、何してるんだっけ」
飛んでいて、落ちていた。俺は、落ちていた。あれ、今話してたのは、誰だっけ。
「お前、誰だっけ?」
「忘れたの。ばかだなあ」
「うるせえよ。誰だっけ?」
「君がよく知ってる」
何言ってるんだ。俺は知らない!
地上に着いた。
「ここからは、君が一人で行くんだよ。」
意味がわからない。口が回らない。着地がドカンとしたせいだ。
「ひと、りって、どういう、ことだよ」
「一人で行くっていうか、ひとりになるっていうか、もともと一人だったっていうか、、」
「何、言って」
「まあ、とにかくそういうわけだから‼またね」
目が覚めると、夜中だった。月が大きく見えた。森にいた。少し歩くと、すぐに登山道が見つかったので、街に出た。静かだった。
街には、疲れた顔をした若い蛙がいて、話しかけてきた。
「遠くから来たようだけど、どこからきたんだい?」
「知らねぇよ、俺ァ、おぼえてないんだ」
「そいつは大変な目にあっているようだね」
「ホントだよ、まったく困ってるところだ」
「行くところがないのなら、うちにきなよ」
蛙は少し嬉しそうだった。疲れた顔が染み付いているせいで、口角の上がりが悪い。
「遅いじゃないか。何やってたんだい」
蛙の奥さんが嗄れた声で言った。
「それになんだい!それは、猫じゃないか。大きすぎて、うちに入らないよ」
蛙の家は小さかった。俺は大きかったが、家の戸に前足をかけると、ぐぐぐ、と小さくなった。
「入れるさ、お前も知ってただろうに。お客さんに失礼だぞ」
「稼ぎは悪いのに口だけは達者だネェ。まぁいいさね、朝がきたら、出て行ってもらうよ。」
蛙の家で、ご飯をご馳走になった(口に合わなかったので残した)。奥さんが眠ったので、疲れた顔の蛙と酒をのんだ。
「悪いね、蛙くんさぁ」
「いいんだ、気にしないでくれ。仕事ばかりで疲れていたんだ。一緒に酒を呑む相手がいて、今日はいい夜になったよ。」
「仕事が嫌なら、やめちまえよぉ。疲れた顔の所為で、笑った顔も引きつってるぜ」
「子供と、口も悪いが奥さんもいるんだ。だから、仕事にいくよ」
「わからないけど、愛ってことかい」
「愛っていう言葉は、二音節しかないのに、解釈が難しいんだよ。愛なんだろうか...酔ってきたね」
俺と蛙は少し飲みすぎたことに気づいてそして、いまさら愛について考えるなんていうのは、恥ずかしいと思った。これを恥ずかしいと思うのはまた、なんでだろうか、というところまで話したことを憶えている。朝になった。
「ありがとなぁ、またなぁ」
「西に行けばまた、街があるよ。気をつけて」
「仕事、がんばれよぉ」
家を出ると、体が大きくなった。どういうことだかよくわんないや。
蛙はまた、奥さんに小言を言われていた。
「まーね」
「お茶ってさあ、ミドリだよなあ、、」
「そうだねえ」
「でも、ミドリじゃないお茶も飲んでるのに、お茶ってさあ」
「ミドリだね、、、、、。ところで、僕ら、何してるんだっけ」
飛んでいて、落ちていた。俺は、落ちていた。あれ、今話してたのは、誰だっけ。
「お前、誰だっけ?」
「忘れたの。ばかだなあ」
「うるせえよ。誰だっけ?」
「君がよく知ってる」
何言ってるんだ。俺は知らない!
地上に着いた。
「ここからは、君が一人で行くんだよ。」
意味がわからない。口が回らない。着地がドカンとしたせいだ。
「ひと、りって、どういう、ことだよ」
「一人で行くっていうか、ひとりになるっていうか、もともと一人だったっていうか、、」
「何、言って」
「まあ、とにかくそういうわけだから‼またね」
目が覚めると、夜中だった。月が大きく見えた。森にいた。少し歩くと、すぐに登山道が見つかったので、街に出た。静かだった。
街には、疲れた顔をした若い蛙がいて、話しかけてきた。
「遠くから来たようだけど、どこからきたんだい?」
「知らねぇよ、俺ァ、おぼえてないんだ」
「そいつは大変な目にあっているようだね」
「ホントだよ、まったく困ってるところだ」
「行くところがないのなら、うちにきなよ」
蛙は少し嬉しそうだった。疲れた顔が染み付いているせいで、口角の上がりが悪い。
「遅いじゃないか。何やってたんだい」
蛙の奥さんが嗄れた声で言った。
「それになんだい!それは、猫じゃないか。大きすぎて、うちに入らないよ」
蛙の家は小さかった。俺は大きかったが、家の戸に前足をかけると、ぐぐぐ、と小さくなった。
「入れるさ、お前も知ってただろうに。お客さんに失礼だぞ」
「稼ぎは悪いのに口だけは達者だネェ。まぁいいさね、朝がきたら、出て行ってもらうよ。」
蛙の家で、ご飯をご馳走になった(口に合わなかったので残した)。奥さんが眠ったので、疲れた顔の蛙と酒をのんだ。
「悪いね、蛙くんさぁ」
「いいんだ、気にしないでくれ。仕事ばかりで疲れていたんだ。一緒に酒を呑む相手がいて、今日はいい夜になったよ。」
「仕事が嫌なら、やめちまえよぉ。疲れた顔の所為で、笑った顔も引きつってるぜ」
「子供と、口も悪いが奥さんもいるんだ。だから、仕事にいくよ」
「わからないけど、愛ってことかい」
「愛っていう言葉は、二音節しかないのに、解釈が難しいんだよ。愛なんだろうか...酔ってきたね」
俺と蛙は少し飲みすぎたことに気づいてそして、いまさら愛について考えるなんていうのは、恥ずかしいと思った。これを恥ずかしいと思うのはまた、なんでだろうか、というところまで話したことを憶えている。朝になった。
「ありがとなぁ、またなぁ」
「西に行けばまた、街があるよ。気をつけて」
「仕事、がんばれよぉ」
家を出ると、体が大きくなった。どういうことだかよくわんないや。
蛙はまた、奥さんに小言を言われていた。
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