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魔力検査
しおりを挟むナターシャとして生を受けてから早いことで6年が経った。殿下を探さなければいけないことはわかっているのだが、私は弱いままの自分では殿下に会いたくはなかった。5歳の頃と比べて、筋肉のつきも良くなってきたと思われる。ついこの間、6歳になったということで陛下からお許しがでて木剣ではなく真剣を持つことが可能になった。6歳で真剣を持つということはかなり異例の事態らしく、私の鍛錬の際はかなりの医師たちが付き添っている。正直言ってやりずらい。だが、皇女という立場を考えれば妥当なのだろう。そして、今日も今日とて鍛錬に勤しもうとしていた時、侍従からあることを伝えられた。
「魔力検査?」
「はい。左様でございます。この国では6歳になった際、一律として魔力検査を受けなければなりません」
そんなものルージュとして生きていた時代はなかったのだが。いやあったのかもしれないな。私がそういう場にいなかっただけで。
「そうか。わかった。だが魔力検査にはどんな意味があるんだ」
「少し長くなってしまうので、どうぞ殿下はお掛けください」
「そうか、ではあなたも座るといい」
そう私が言えば、目の前の侍従は目を見開いた。
「なぜ、座らない」
「殿下の目の前に座るなど畏れ多いです」
「なるほど、なら目の前ではない場所に座るといい」
侍従はさらに困ったような表情をした。あぁ、そうか。私もこのような経験があったな。そう私はふと過去のことを思い出した。私も目の前の侍従みたいに、殿下に言われた時は困惑していたな。自然と頬がふっと緩む。なら、彼女に無理強いはできないな。
「申し訳ない、あなたが好きな姿勢で話してくれ」
「殿下のお心遣い感謝致します」
深く彼女は礼をし、話し始めた。
「このランチェード大陸では魔法を使うための魔力が存在していることはご存知ですか?」
「あぁ。数千年前に突如使用することが可能になった、と聞いている」
私がルージュとして生きていた時代にはなかった概念だった。ここで生まれてから数日、侍従たちが不思議な力を使っていたのを見て、あぁあれはここ最近生まれた技術なのだなと思ったのを覚えている。だが実際にはルージュとして生きていた時代と変わらない時代に生まれたものだった。
「そうでございます。魔法を使用する際には、それに応じた魔力を消費いたします。その魔力とは生まれながらにして持てる量が決まっております」
難易度の高く、豪華である魔法を使うには、かなりの魔力を消費しなければならない。ならば、生まれつき魔力量が少ないものは、一生涯そういった魔法を使えないのかと言ったら必ずしもそうとは言えない。なぜなら、鍛錬をすることで少しずつ魔力量を増やすことができるからだ。ただし、その鍛錬というものが非常に危険で最悪の場合命を落とすことがあるため、試した者は少なく確実とまでは言えないのだ。
「魔力は便利なものであり、その反面危険なものでもあります。殿下はご存じでしょうか。魔力が暴走してしまう事例があることを」
「魔力が暴走……それは初耳だ」
私は彼女の言葉を聞いて少し考え始めた。魔力の暴走、か。魔力を使えば必ず魔力は元あったように回復する。だが、それが永遠と回復し続けてしまったら…?魔力の暴走はそうやって考えるのが自然だろうか。とりあえずちゃんと話を聞くか。
「すまない、少し考え込んでしまった」
「考えはまとまりましたでしょうか」
「あぁ、とりあえずは」
そう答えれば、彼女は笑ってただこちらを見る。なるほど、一度話してみろと言っているのか。
「私は、魔力の許容量を超えて魔力を回復してしまうから魔力の暴走が起こってしまうのだろうと。そう考えたのだが……」
話終わった後、彼女を伺ってみれば、顎に手を置き考え込んでいる姿勢を見せていた。何か私は変なことを言ったのだろうか、そう確認しようと口を開きかけたその時彼女は私の方へ前進し目を輝かせた。
「素晴らしいお考えでございます!」
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