園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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1章 冒険の始まり

1話 いざ、ナチュラルワールドオンライン(NWO)の世界へ! 1

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 俺は志田 良太 しだ   りょうた

 園芸店で店長をしている四十歳の園芸家であり、そしてRPG系のゲームが好きなゲーマーでもある。



 六月一日の今日、ついに待ち望んでいたゲーム『ナチュラルワールドオンライン』(通称NWO)のリメイク版が発売された。

 ナチュラルワールドオンラインN W Oは四年前にVRMMO RPGというジャンルのゲームとして発売された。

 このゲームは自由なプレイスタイルが売りで、プレイヤーには戦士や魔法使い等のいわゆる職業が存在しない。

 その代わりに多種多様なスキルがあり、スキルを習得する事で冒険はもちろん、料理 鍛冶 錬金 裁縫 木工 etc……

 様々な生産職業を体験することも出来る。

 冒険者として未知の世界を旅するもよし、職人や商売人として過ごすもよしと、プレイヤーの夢が現実に出来る世界だ。



 しかし既存のハードでは


[操作しにくい 凄く目が疲れる 戦闘が難しすぎる]


 など、良い評判はあまりなかった。

 俺も鍛冶や商売をメインにプレイはしていたが、仕事で疲れた後に操作しにくい状態での長時間プレイは出来ず……

 いつの間にか放置してしまっていた。

 内容自体は結構気に入っていたが、こちらは操作しにくいのに敵は素早く動く。

 戦闘が難し過ぎて断念したというのも、理由の一つだ。

 敵からの素材が手に入り難かったら、鍛冶も商売も満足に出来ないから……



 そして二年前、新たに発売されたVRコネクトというハード。

 これによってVR世界は大きな発展を遂げた。


 既存のVRのゲームはヘッドセットの形状の物が多く、頭部が重くなりがちだ。

 操作するにもヘッドセットについているボタンの操作が主なので


[操作しにくい、首が痛くなる、目が非常に疲れる]


 などの改良を求む声が沢山寄せられていたらしい。

 VRコネクトはゴーグルと手袋がセットになったような機械により、仮想現実の世界にて冒険ができるという画期的なものだった。

 仮想現実の世界での移動は実際に体を動かすのとほぼ変わらず、コントローラー無しでゲームが出来るようなものだ。



 VRコネクトが発売されてから、様々なゲームのリメイク版が対応ソフトとして登場した。

 どんなジャンルも初回生産分は数日で完売するほどの人気だったのだが──RPG物の人気は、更に桁違いだった。

 オンラインではないものの、ゲームの世界に入ることができて、ボタン操作ではなく実際に自分の体を動かして冒険が出来る……

 RPG好きには待望の機能だったからだ。

 VRコネクト対応のRPG物は、初回生産分の即日完売は当たり前で、時には販売開始から三十分しない内に完売という事もあった。

 VRコネクト自体も常に品薄で、入荷するそばからすぐに完売。

 定価は三十万なのだが、インターネットでは四十五万が最安値という状況が発売から二年経った今も続いている。



 去年の秋頃、ナチュラルワールドオンラインN W OがVRコネクト対応でシステムを一新して開発中 

 という情報が出回りはじめてから、俺は休みの日を使って家電販売店をひたすらに巡った。

 そして今年に入って四月、新品のVRコネクトを遂に手に入れる事が出来た。

 この日はテンションが上がり過ぎて叫んでしまい、隣人にうるさいと怒られてしまった事は記憶に新しい……

 後はNWOの発売を待つばかりだったのだが、初回販売数は八千個と少なく……入手は難しいと予想された。

 数が少ないのは、VRコネクト初のオンラインRPGなので初期のバグを警戒してのことだろうか……



 幸いにも仕事の有給を使い、三日徹夜で並んだ甲斐があってNWOを買うことが出来た。

 ソフトが手に入った俺は、連日の徹夜で痛んだ体と懐具合の事も忘れて小躍りした。


 遂に……子供の頃から憧れていた、ゲームの世界に入って冒険が出来るぞ!

 確か、ゲームがプレイが出来るようになるのは──

 午後三時から……だったかな?

 今はまだ十時二十五分。

 休みは明日まで取ってあるし、色々準備しておこうかな。

 そう考えた俺は近所にあるスーパーに向かい、食材を買い込んで独り暮しのマンションに帰宅した。



 マンションに着いて、上がったテンションのまま階段を駆け足で登っていると、二階の踊り場を通過する際に──


「わっ!」
「……っ!」


 曲がり角で人にぶつかりかけてしまった……


「すみません!  大丈夫でしたか……?」


 俺は申し訳ないと思い声を掛けたが、無言で鋭い視線が返ってきて心臓が縮み上がってしまった……

 お隣に住む一人暮らしの女性だったのだ……


「志田さん、こんにちは」

「は、はい! こんにちは……」

「階段や廊下を走らないようにって、張り紙……してありますよね?」


 冷たい目線と、怒気を含んだ声に冷や汗がだらだらと出始める……


「申し訳ありません!  嬉しいことがあって、つい……」

「ついじゃないですよ! いい年して子供みたいに……恥ずかしくないんですか!?」


 更に怒らせてしまい、凹んでいると──


「……少々大声を出し過ぎてしまったようですね……」


 お隣さんの声に周りを見ると、玄関のドアからこちらを覗いてる人がちらほらと見受けられた。


「志田さん、次からは気を付けてくださいね? では、失礼します」


 若干冷静になった口調でそう言うと、お隣さんは早足に去っていった。

 その背中に「以後、気を付けます」と声を掛けた俺は、冷静さを装って階段をゆっくりと登った。



 三階の自分の部屋に入った俺は、コップに水を入れて一口で飲み干した。


「はぁ~……まいったまいった……」


 溜め息をついた俺は、吹き出た汗をタオルで拭いて座り込む。


「また怒らせちゃったな……今回も、明らかに俺が悪いけど……」 


 以前から色々と怒られていた俺は、お隣さんに頭が上がらない。

 ベランダに置いている植物の蔓がお隣のベランダに入ってしまった時から色々怒られるようになっちゃったんだよな……

 色々と気を付けないと。
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