園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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1章 冒険の始まり

5話 チュートリアル ~救助~

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「今の声は!?」

《誰かが助けを求めている……? チュートリアル中に、こんな事が起こるはずは……》

「だが、確かに聞こえた。行ってみよう」

《待って下さい! 異常が起こっている中で迂闊な行動はデータ破損の恐れもあり危険です! まずは村に向かって助けを──》

「手遅れになったらどうするんだ!? しかもあれは……子供の声だろう!?」


 そう言いながら、俺は声のした方へ全力で駆け出した。


《待って下さい! リョウさん!》




「……誰か……助けて……」


 徐々に弱くなっていく声の聞こえる方へ駆けつけると、木立の向こうに一人の子供が見えた。
 更に三匹の狼らしき生き物が子供を包囲している。

 子供は全身土埃にまみれていて擦り傷だらけになっている。よく見ると足には切り裂かれたような傷があり、かなり出血しているようだ。


「早く助けないと!」


 俺が突撃しようとすると──


《無茶です! あのモンスター達のLVは二十です! 一匹だったとしても貴方のLVでは歯が立ちません!》

「そんなこと言ってる場合か!」


 俺は右手の槍を握り締めて全力で走り出す。自分が全身にうっすらと光を纏っていることにも気付かずに。

 子供は恐怖で目を見開いていて、そこに狼が爪を振り上げたのが見えた。


「あ……ぁ……」

「やめろっ!」


 走りながら大声を出すと、狼達は反転しながら飛び退いた。

 今まさに爪を振り下ろそうとしていた狼は反応が遅れたのか、飛び退く事無くこちらを振り向く。俺はそこに走る勢いを乗せて槍を全力で突き出した。


「喰らえっ!」


 狼の頭部に向けた全力の突きだったが、狼が屈んだためドッと鈍い音を立てて背中に浅く突き刺さる。

「ギャウッ」

 狼は苦悶の声を上げたが、すぐに噛み付いてきた。

「ガウゥッ!」

 反射的に体を半身にして回避したが、刺さった槍が抜けず左腕を牙が掠る。

「ぐっ!?」

 お返しとばかりに槍に体重を掛けて突き刺す。

「ふっ!!」

 HPを削りきったのか、一瞬の間を置いて狼は消滅する。頭の中に響くような声で『LVが上がりました』と連続して聞こえてきた。

 その場に爪と毛皮がドロップしたので、無意識で確認しようとしたが──


「「グァゥッ!」」


 声に驚き前方を向くと、二匹の狼が唸りながら急襲してきた。

 左右から挟み込むようにして、一方は突進しながら噛み付き、もう一方は高く飛び上がりつつ爪を振り下ろしてきた。
 俺は二匹の真ん中の隙間……前方に飛び込むようにして転がる。

「あだっ!」

 受け身を取り損ねて頭部をゴッと打ち付けてしまい、頭を押さえながら後ろを振り向くと、狼達はすぐそばまで詰め寄ってきていた。

「「グァッ!」」

 口を開いた狼達が地を蹴り、飛び上がりながら噛み付いてきた。これは避けれない!!

「うわあぁっ!!」

 咄嗟に槍の柄を横にして狼達の口を押さえることが出来たが、ものすごい勢いで押し倒されてしまう。これで引っ掻かれたら終わりだ!

「う……おぉっ!」

 押し付けられながらも、力を込めて膝蹴りを右の狼の腹部に放つ。

「ギャン!」

 狼は声を上げ、槍の柄から口を離して吹っ飛んだが、もう一匹の狼は柄を噛み砕きそうな勢いで力を込めて来る。

「グウゥゥ~」

 ミシミシと音がして、槍が悲鳴を上げる。右半身が空いたので、膝を曲げたままの右足に力を込めて地面を踏み、柄に掛かっている力を左に受け流す。狼は勢いを受け流されて槍から口を離した。

「ぐっ……おおおっっ!」

 そこにそのまま勢いをつけて右側の柄で狼の頭を殴り付ける。

「ギャウッ」

 二匹目の狼も突き飛ばし、ようやく解放された俺は槍を支えにして一気に立ち上がると、後方にバックステップして体勢を立て直した。


「はぁ……はぁ……」


 ほんの数秒の間だったが、強烈な殺気を浴びた俺は息が上がっていた。


《リョウさん、今なら逃げれるかもしれません! 撤退を!》


 ナビさんの声に狼達を見ると侮れないと思ったからか、警戒して距離を開けているように感じた。


《ここの狼タイプのモンスターは動きが早い反面、防御力は高くありません。ですが警戒しているとなると無闇に突っ込んで来なくなり、こちらから攻撃を当てるのも難しくなります。それに、仲間を呼ぶ可能性もあります!》

「仲間を呼ぶ!? それはまずい……しかし……」


 横を見ると、怪我をしている子供は倒れてぐったりしている……呼吸はしているようだが、このままでは──


 撤退するならと俺が子供を抱き抱えようと屈もうとすると──


《何をしているんですか!? 子供を抱えながらでは逃げ切ることは出来ません! 村まではあと数百メートルくらいと思われますから、全力で走って下さい!》

「こんな小さな子を見捨てろと言うのか!? 俺には……出来ない。どうしても逃げれないと言うなら、あいつらを倒すまでだ!」

《それこそ無謀です! 一匹は運良く倒せましたが、群れのモンスターは仲間が倒されると凶暴化して攻撃力が増します!》


 つまり、一発でも攻撃を受けたら……終わりか。


「なら、サポートしてくれないか? 俺一人では勝てなくとも、ナビさんがサポートしてくれたら勝率は上がるだろう?」


 油断無く狼に身構えながらそう言うと、


《……分かりました。このような状況は想定していませんでしたが、覚悟を決めましょう。私もまだ消えたくはないですし……》

    
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