7 / 143
1章 冒険の始まり
6話 チュートリアル ~収束~
しおりを挟む最後にボソッと何か言ったような気はしたが、戦闘中だからと頭を切り替える。
「ナビさんは敵の攻撃を分かる範囲で教えてくれ。攻撃の種類とタイミングさえ分かれば、避けやすくなるから!」
《分かりました》
そう言って、俺は小走りで狼に突進する。
「行くぞっ!」
狼の動きはしっかりとしていて、先程俺が攻撃で与えたダメージは収まってしまったようだ。
こちらが接近すると、狼達は左右にばらけて交互に攻撃を仕掛けてくる。
最初のように同時攻撃はしてこないし、こちらの動きを先読みするように躱している。
《左後ろ、飛び上がりからの引っ掻きです。二……一……来ます!》
見えていない方向からの攻撃は、ナビさんの指示のお陰でどうにか避けつつ反撃をするが、回避されてしまっている。
どうやらこちらの攻撃パターンを予測しているか、学習されてしまったようだな……
「これじゃ埒が明かないな……なら、一か八か──」
槍を構える時、俺は普段右手を槍の柄頭から20cmほど空けて掴み、左手は更に20cm先で掴んでいる。
しかし、ここで持ち方を変えて意表をついてみようと思った。
狼が俺の攻撃範囲を見切って躱しているなら、当てることができるかもしれない。
これで倒せなければ、また学習されて更に倒しにくくなるが……迷ってもいられない。
悩むうちに距離を詰めてきていた狼の噛み付き攻撃を体を半身にして躱し、槍の柄を使ってもう一匹のいる後方に突き飛ばす。
「グガァッ!!」
突き飛ばした狼は着地体勢をとれていたが、後方から迫ってきていた狼は仲間が飛んでくるのは予想できていなかったらしく、顔面にぶつかったようで呻き声を上げた。
この隙に右手を柄頭ぎりぎり、左手はそのままで構えて、狼に特攻する。
「うおぉぉっっ!」
狼はまた左右にバラけたが、右に避けた方を狙って突っ込む。
狼は木立の間を逃げ回っていたが太い樹に飛び付くと、体のバネを使って一気に距離を詰めてきた。
「グオォゥッ!」
猛烈な勢いで突っ込んで来る狼に、右手を引き絞りながら左手で狙いを定め、体重を掛けて一気に打ち放った。
「はぁぁっ!」
俺の渾身の一撃は、口を開けていた狼のど真ん中を貫通して消滅させたが、強い衝撃で槍を取り落としてしまった。
「うぐっ……右手に力が入らない……」
左手で槍を拾うも、ちらっと見た俺のHPは既に5を切っている……次に衝撃を受けたらやられてしまいそうだ。
《リョウさん! 後方、来ますよ!》
ナビさんの声に慌てて振り向くと、木立の間をすり抜けるように狼が急襲してきた。
「やばい! このままでは……!」
《接触まで約四秒です!》
なんとか左手を主軸にして槍を構えたが、右手は力が入らず矛先が震えてしまう。
どうする……? なんか手はないか!?
距離を詰めた狼は、二メートルほど手前で踏みきって飛びかかってきた。
《噛み付きです! 避けてください!》
「うわあぁっ!」
咄嗟に槍を左手で思いっきり投げた。
その勢いで体勢を崩して左に転がるが、すぐに起き上がって状況を確認する。
俺の投げた槍は運良く狼の開いていた口に入ったみたいで、それと狼自身の勢いもあって狼のHPを削りきって消滅させたようだ。
「はぁぁぁ……助かったぁ……」
全ての敵が消滅して安心した俺は、起き上がりかけた体勢から脱力して地面に突っ伏した。
《リョウさん、お疲れさまでした。まさか、直撃を一回も受けることなく倒すとは思いませんでしたよ》
「いやぁ、現実でのスズメバチの大群相手にするよりはいくらかやりやすかったよ。とは言っても、目の前で噛みつかれそうになったりするのは、すごく怖かったけどな……」
そうボソッと言った俺は、倒れている子供の事を思い出して、慌てて立ち上がった。
「あっ、さっきの子供は!?」
《前方、五十メートル程先で倒れたままです。先ほど見た様子からすると、応急処置をしなければ間に合わないと思われます……》
「応急処置!? ……手持ちに回復するものも何もないのに……どうすれば……?」
解決方法は浮かばないけれど、とにかく子供の所に急がないと……
思考を打ち切った俺は、子供がいる方向に小走りで向かう。
──と、その時俺は足元にヨモギのような草を見つけた。
「ナビさん、この草はヨモギか? 止血に使えないかな?」
《この草はヨモギ草です。ポーションの素材になるものですが、そのまま使うには効果が弱いと思われます》
「応急処置に使うには申し分ないな! ちなみに、ポーションの他の材料は?」
《ポーションを精製するなら花の蜜や蜂蜜が必要ですね。効果は下がりますが、水や浄水でも可能です》
つまり水分が必要なのか。
ヨモギ草を五本ほどストレージに放り込み、周りを見渡すが樹木や草ばかりでそういった水分の類は見つからない。
そうしている内に子供のもとに着いたが、出血は完全には止まっておらず、顔も青ざめていた。
「これは……まずいな。貧血になっていそうだ」
俺は急いで摘んだばかりのヨモギ草を手で細かく千切ると、両手を使って力を込めてすりつぶす。
ちょっと雑だが潰したヨモギ草を子供の傷口に塗布すると、一瞬淡く光り出血が止まったようだ。
「おおっ、意外とすごい効果だな!」
《ええっ!? こんな……すぐに止まるほどの効果があるはずは……》
何故かナビさんが驚いているが、子供の顔色を見るに予断を許さない状況だ。
「ナビさん、村までの案内を頼む! 早く連れて行かないと!」
《分かりました》
0
あなたにおすすめの小説
この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。
サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思うので、第二の人生を始めたい! P.S.逆ハーがついてきました。
三月べに
恋愛
聖女の座を奪われてしまったけど、私が真の聖女だと思う。だって、高校時代まで若返っているのだもの。
帰れないだって? じゃあ、このまま第二の人生スタートしよう!
衣食住を確保してもらっている城で、魔法の勉強をしていたら、あらら?
何故、逆ハーが出来上がったの?
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる