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1章 冒険の始まり
7話 発現するスキル 1
しおりを挟む連れていく前に、まずは意識を確認しないと。
「大丈夫? 声は聞こえるかい?」
子供はうっすらと目を開けて、僅かに頷いた。
「狼はもういないから大丈夫だ。すぐ村に連れていくから、そこまで頑張ろうな?」
と再度声をかけると、ゆっくり頷いた。ゆっくり抱き上げると、脈は早く弱く感じる。
《リョウさん急ぎましょう。そこから右に少し進めば細い道に出ます。そこを道なりに進んで行けば村に着きます》
「分かった」
あまり揺らしてはまずいと思い、小走りで進む。木の根が多いので足元をちょくちょく見ながら進んでいると、地面から生えてるホタルブクロの様な植物が目についた。
植物の袋部分が所々うっすらと透けるような黄色をしていて、重そうに袋を垂らしている様子はまるで蜜を溜め込んでいるかのようだ。
「ナビさん、あの植物って……」
《はい、あれはミツブクロ草ですね。花粉を運んでくれる虫を呼ぶ為に、袋に蜜を溜めているんです。花自体は無臭だから、虫が寄って来ないんですよ》
「その蜜、ポーション作成に使えないか?」
《使えますが、まさか作るおつもりですか? 調合スキルがなければ出来る物の品質は低いので、効果はあまり期待出来ませんよ?》
「そうかもしれないが、この子の様子を見るにこのままでは出血性のショック症状を起こすかも知れない。少しでも早く水分や栄養を取らせた方がいいと思う」
子供は顔が青白いだけでなく、汗をかいていて脈も早い……かなり危険な状態と思われる。
周りを見回して竹のような植物があるのを確認した俺は、「ちょっと待っててな」と子供に声を掛けてそっと地面に横たえると槍を取り出した。
「せいやっ! はぁっ!」
気合いと共に槍を振り下ろして竹を斜めに切断する。返す刃で竹の節目の下を切り離して即席の器の出来上がりだ。
次に残っている竹に2ヶ所、節目まで縦に切り込みを入れて手前に折り取る。かき混ぜたり、潰したりする棒だ。
槍をしまってミツブクロ草の蜜の下に器をセットして蜜を搾る。全部搾ると植物が困るだろうから数ヵ所から分けて蜜を集めた。
「あとは混ぜるポーションの元か。ヨモギ、プルーン、ブドウを混ぜようと思うんだがどう?」
《ヨモギだけでいいんですが、何故フルーツまで?》
「いや、不味くて吐かれてしまったら意味がないから……子供だし、フルーツ入れたら飲みやすいんじゃないかな?」
《苦い野菜ジュースじゃないんですから気にしなくても……まあ、鉄分も補給出来そうなものにはなりそうですが。ですが、誰もやったことがない組み合わせになりますから、無事に調合出来るかどうか保証は出来ませんよ?》
「最悪、水分を取れれば村までは持たせられると思うから、やらないよりはやるべきだと思うんだ」
《はぁ……忠告はしましたからね?》
呆れた様な声で言われてしまったが、聞き流して材料を細かく千切っていく。
今度は器があるから、そこに投入して潰しながら混ぜていく。見た目が茶色っぽいから、果実入りなのに全く美味しそうには見えないな……
(この子の体が無事に回復する物が出来ますように……)
器を強く握りつつ、願いを込めながら混ぜていると、唐突に強い脱力感に襲われて思わず膝を突く。
「うわっ……!?」
《リョウさん!? どうしま…………えっ……これは……?》
ナビさんの驚いた声に器の中を見ると、オレンジ色の液体に変わっていた。
「何故にオレンジ色? さっきまでは濃い茶色だったはず……?」
《最初に気にするのがそこですか!?》
ナビさんから鋭い突っ込みを頂いたが、とりあえず調合は無事できたようなので、タップして詳細を見てみた。
『粗雑な中級万能薬(子供専用)』
〖素材を粗く混ぜ込んだ為に出来た品質の低い中級の万能薬。
目の前の子供の回復を強く願いながら魔力を注いだため、その子供限定で体力の回復と体調不良を整える。
他の人物が飲んでも美味しいだけで、僅かな回復効果すらない。
製作者 リョウ 〗
「……なんだこれ? 子供専用? しかもポーションじゃなくて万能薬? それに……魔力?」
《ち……中級万能薬!? まさかこんな組み合わせで!?》
ナビさんが驚くほどの物が出来てしまったようだ。
「とりあえず一口………!? 青臭くなくてうまいっ!」
《それはまた意外ですね。ヨモギ草も入っているのに……》
「子供専用だから、飲みやすくなったのかな? 急いであげてみよう!」
子供の体をそっと起こし、「果物も入ってる美味しい薬だよ」と言って口に器を近付けた。
子供が頷いたのを見て、少し飲ませてみるが……
「ゲフッ……」
むせて吐き出してしまった……。
「くっ……何とか飲んで貰えれば……」
《リョウさん、その万能薬を飲ませるのではなく使ってみて下さい!》
「使うって……? ……あ! そうか!」
ここがゲーム世界なのを忘れかけてた……慌てて万能薬をタップすると、詳細だけでなく使う表示もある。
使うをタップすると、対象を選択して下さいと出たので子供の肩を軽く触る。すると、器の中身が消えて子供にきらきらと光が降り注ぐ。
子供の体を支えながら見守っていると、徐々に顔色が良くなり、呼吸も落ち着いてきた。よく見ると、全身の傷もなくなったようだ。
「調子はどうだい?」
声をかけてみたが反応がない……心配になって顔を覗き込むと、症状が落ち着いたからか眠ってしまったようだ。
「寝てしまったのか……ふう~、とりあえず落ち着いたみたいでよかった……。ナビさん、使う事教えてくれてありがとう! 助かったよ!」
《いえ、少々驚いてしまっていて……お伝えするのが遅くなりました》
「そう言えば色々聞きたいんだけど……せいぜいポーションができる筈が、なんで万能薬になったんだろ?」
《これは推測になりますが……果物を加えたことで栄養のバランス改善や吸収効率が上がって、万能薬扱いになったのではないかと。しかし……造血剤ならともかく、万能薬には程遠いはずですが……》
「じゃあ魔力ってのは?」
《魔力とはMPの事ですね。詳しくはステータスを見てみたら分かると思いますよ?》
えっと……ステータスの見方は──
「メニュー」
呟くと複数の項目の中にステータスがあったのでタップする。すると表示されたのは
リョウ LV10
HP 10/52 MP1/37
STR 1 INT 1 VIT 1 AGI 1 DEX 1 LUK 1
ボーナスポイント 27
装備
両手 ビギナースピア
頭
首
(セット防具 冒険者装備一式により防御力+4)
上半身 冒険者の服(上)
下半身 冒険者の服(下)
足 冒険者の靴
攻撃力 21
防御力 21
攻撃速度 +0%
スキル
槍術 LV2
投擲 LV1
薬草学 LV1
調合 LV2
錬金術 LV1
??? LV1
「……えぇ?」
《……!?》
予想外のステータスに突っ込み所が満載だ……。
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