園芸店店長、ゲーム世界で生産にハマる!

緑牙

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2章 村での生活

5話 肥料と活力剤

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 考えていても分かるわけないな。

 こうなったらできることは一つ──


「ドリアドネさん。あなた方はどれくらいの期間、命の源であるカイエンナッツを食べずにいられるものなんですか?」


 単刀直入に聞いてみた。

 ドリアドネさんは驚いた顔をしたあと、悲しげな笑顔を浮かべて──


《もってあと一月……くらいですわ……》

「なっ……」


 思わず絶句してしまった……

 もうそれしか時間がないというのか!?

 ……これは想像していたより、かなり深刻だな。

 現実と同じなら、カイエンナッツが実を付けるまで早くて五年……

 長くて十年かかるはずだ。間違いなく持たないだろう。

 なにか、ドリアドネさんを助ける方法はないのか……?

 俺が考え込んでいると、ブレンに肩をつつかれた。


《リョウさん、かなり低い可能性になりますが……リョウさんのスキルなら、ドリアドネさん達を助けることが可能かもしれません》

「俺のスキル……? 『???』か!?」

《そうです。この辺りの土には光の魔力があるから、栄養がほとんどなくてもその植物は発芽したんですよね? なら、この周辺の素材を使って強い肥料を作り出せば……》

「いや、それはダメだろう」
《!? 何故ですか? 肥料さえあれば、植物はもっと早く育つのでは……?》

「このカイエンナッツは芽が出たばかり。つまり人で言うなら赤ちゃんと同じだ。強い肥料なんて、人に照らし合わせたら味付けの濃い食事みたいなものだよ」

《えっと……? つまりどういうことですか?》


 ありゃ……伝わらなかったか。ちょっと抽象的過ぎたかな?


「つまり小さい苗に強い肥料を与えても、養分を吸収できずに弱ってしまうんだ。最悪、根が焼けてしまって枯れることもあるよ」

《……! そうだったんですか。いい案だと思ったのですが……》


 ブレンは落ち込んだのか、頭をうなだれてしまった。

 俺はそんなブレンの頭を撫でながら、違う案を思い付いていた。


「でも、やり方を変えればいけるかもしれない。芽が出たばかりでも使えるものを作ればいいんだ」

《そんな都合のいいものがあるんですか?》

「うん。肥料じゃなくて、活力剤を作ればいいんだと思う」

《……違いがよく分からないのですが……》


 うーん……どう説明したら分かってもらえるかな……


「えっと……肥料は栄養はたくさんあるけど消化の悪い食べ物で、活力剤は消化のいい食べ物って感じかな?」

《はぁ……つまり、負担が少なくて吸収しやすい……ということでしょうか?》

「そんなようなものかな。負担をあまりかけずに、成長を促したいからね」


 よかった……何とか伝わったか。しかし、問題は材料だな。

 光の魔力というのを多めに含んだ樹液とかがあれば最高だが、抽出する手段がない。

 樹木に傷をつけただけだと、採取するのに時間もかかるし……


《あの……お二人の話を聞くに、カイエンナッツの成長を促す方法に、心当たりがあるんですの……?》

 考え込んで固まっていた俺に、今度はドリアドネさんが声をかけてきた。

 ……ドリアドネさんは草木の精霊で、根を操ったりもしていた。

 もしかすると──


「可能かもしれない、という程度ではありますが、試してみたいことがあるんです。……ドリアドネさん、樹木の樹液を抽出したりできませんか?」

《ちゅうしゅつ……? どういったことですの?》

「うーん……樹木から、一部の樹液だけを取り出すことなんですが……できそうですか?」


 俺が問い掛けると、ドリアドネさんは頬に手を当てて目を閉じた。

 難しい表情をしてるな……

 もしかして、樹木にダメージを与えそうだから悩んでるのでは──


《じゅえきって、なんですの……?》


 ドリアドネさんから質問を返された俺は、思わず脱力してしまった。

 そっちか……


「えっと、人が怪我をした時に出る血は分かりますか?」

《はい、それは分かりますわ》

「植物も傷が付くと、傷を修復するために液体を出しますよね? それを樹液と呼んでいるんです」

 ドリアドネさんは、手を打って笑顔を浮かべた。

 どうやら、伝わったのかな……?


《体液のことだったのね! なら、私のでも──》

 そう言って、ドリアドネさんが自身の腕に手をかざしたのを見た俺は、思わず大声を出した。


「待った!! それはダメです!!」


 びくっとして動きを止めたドリアドネさんの腕と手を掴むと、左右に引き離す。


「簡単に自分を傷つけたらダメです! ちゃんと話を最後まで──」


 説教をしかけて、俺は固まってしまった。

 今の今まで、ずっっと見ないようにしていたんだが……

 ドリアドネさんは、服……身に付けてないんだよな。

 大事なところには葉があるんだけど、俺が両手を離した結果、葉が落ちてしまって……

 き……胸部が丸見えに……


 俺は慌てて手を離して後ろを向いたが、一気に顔が熱くなって鼻血が出てしまった。
 

《顔を背けるほど、近くで私を見るのがお嫌でしたの……?》

「違います! とりあえず、胸部を隠してください! 俺には刺激が強すぎるんです……!」


 悲しげにドリアドネさんが問い掛けてきたが、顔は向けずに否定した。

 俺はストレージからフォレストウルフの毛皮を出すと、ドリアドネさんがいると思われる方向に差し出した。

 手から毛皮の触感がなくなったので、追加でもう一枚取り出して差し出す。


「もう一枚渡すので、念のため下も隠してください」

《……わかりましたわ……》


 うっかりが起こらないとも限らないからな。

 万が一見てしまったら、また気絶しそうだし……



 ドリアドネさんの判断だけだと不安だったので、ブレンにお願いして局部を隠してるか確認して貰った。

 ブレンに問題ないと言われて振り向くと、ドリアドネさんは毛皮を蔓のようなもので固定してくれていた。

 安堵からため息を吐き出した俺は、改めて何が必要なのかを説明することにした。


「必要なのは二つです。光の魔力を強く受けた樹の樹液と、同じく光の魔力を強く受けた草の汁ですね」

 すると、早速ブレンから質問が。


《樹液と汁の両方が必要なんですか?》

「うん。理由としてはいくつかあるけど、バランスがとれそうだからかな。樹液だけだと成分が濃すぎるから、草の汁も合わせて吸収しやすくしたいんだ」

《光の魔力が強いのは問題ないんですか?》

「それに関しては、ドリアドネさんの方が分かるかな?」


 俺が目線を向けると、ドリアドネさんは頷いた。


《そうですわね……ここに来てから少し体の調子がいいのは、光の魔力によるものですわ。より強い光の魔力があれば、この子にもいい影響があるはず……ですわ》


 ドリアドネさんは俺達に説明しながら、苗を優しく撫でていた。

 この子……か。ドリアドネさんにとっては、大事な子供なんだろう……

 これは、絶対に失敗するわけには行かなくなったな。
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