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第七章 100億への道
炎上系Vtuber
しおりを挟むーー縋野寮・一階応接室。
三人目の面談予定者がやってくる時間。チャッピーがそわそわと待機している。
「……SNSマーケティング経験5年、年齢は30歳だにゃ」
「渚のストーキングレポートによると、燃◎とある。また、さっきみたいに熱い人がくるのかな」
ドアがノックされる。
現れたのは、きっちりとジャケットを着た、落ち着いた雰囲気の女性。髪はすっきりまとめられ、眼鏡をかけた姿はどこか“堅い”印象すらある。
「三条千佳と申します。前職ではSNS戦略と広告運用を担当しておりました」
(あれ、思った以上にちゃんとした人だ)
微笑みながら言うその姿は、ごく常識的な社会人だ。
「なるほど……SNS運用経験が豊富とのことですが、具体的にはどんな案件を?」
「はい、企業アカウントの運用をしていました。企業PR、商品紹介、キャンペーン誘導、クレーム即時対応、果ては“おはよう”投稿まで幅広く」
「……なるほど。いわゆる“中の人”ですね」
「ただ、ちょっとしたワード選びのズレで炎上したり、絵文字一つでブランド価値が揺らぐ時代なので……リスク管理には自信があります」
(なんでこんなちゃんとした人がうちに……?)
「前の仕事はなぜお辞めになったんですか」
「実は、私副業をしておりまして、ちょっと税務上も副業の域を超えてきてしまいまして……。できればそっちで身を立てて行ければと思っています」
そう言って彼女が差し出したのはVtuber「卯凪パイ」と書かれた名刺だった。それにしてもVtuberとは根っからの“中の人”である。
チャッピーが即座に検索して小声で耳打ちしてくれる。
「卯凪パイ……確かに登録者数10万人規模にゃ。一部から熱狂的な支持を得ているが、過激な発言(アダルト系)で度々炎上しているようだニャ」
「三条さんじゃなくて炎上さんじゃん……」
「惨状さんかもしれないニャ」
ただ、人を集められるVtuberはうちにはいない存在だ。来海とのコラボでも十分幅が広がるだろう。まあ駄菓子屋発の子どもが軸のブランドでこの人材はどうなんだ、というのはあるが、“夜のお菓子”が新たな顧客を狙っていけるのも確かだ。
「では三条さん、PuPuのSNS周りの対応、お願いしてもいいですか?」
三条さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「はい。何かが燃えそうなときは、私が先に燃えておきますので」
渚のレポートの意味がわかった瞬間だった。
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