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第一章 梅雨の幻影
元気でね2
「あの、……密かに想ってた人とは……その後、どうなったんですか?」
僕の質問に、樹さんの顔色がサッと変わる。さっきまであった優しい笑顔は消え、何処か憂いを帯びた瞳が──ここではない遠くへと彷徨う。
「……離れていったよ。気持ちを悟られる事もないまま。
最後に会った時、もし気持ちを打ち明けていたら、少しは違っていたのかなって……今でもたまに思うよ」
「今でも、その人の事………好き、なんですか?」
「………うん。そうだね」
「……」
キッパリとそう言い切られ、心の奥がズクン…と抉られる。
「だから……初めて実雨に会った時、かなり動揺したよ。
……あの時の彼に、見た目も雰囲気も……似ていたから」
「………僕も……です。樹さんが、大空に似てて……」
「……だから、僕に抱かれたんだよね」
樹さんが、少し意地悪な事を口にする。
だから、僕も……
「樹さんも、僕をその人に重ねた……んですよね」
そう返すと、樹さんが寂しそうな苦笑いを見せた。
「………うん。お互いさま……だったね」
樹さんの手がスッと伸び、僕の頭をくしゃりと撫でる。
それから頬に触れ、憂いを帯びながらも蕩けた瞳を僕に寄越し──親指の腹で僕の唇に触れ……名残惜しむように、ゆっくりと横に引く。
「元気でね」
「……」
樹さんは、大人だ。
ここで、さよならしようとしてる。
……いやだ、そんなの……
ツキン……と、胸の奥が痛む。
「……はい。樹さんも」
本当は、全てを割り切って受け入れられる程……僕は強くもないし、大人でもない。
もし樹さんが、大空とは全く関係のない人だったら……?
背徳行為だと感じる事もなく。
……この優しい温もりに、甘えようとしたかもしれない。
僕の質問に、樹さんの顔色がサッと変わる。さっきまであった優しい笑顔は消え、何処か憂いを帯びた瞳が──ここではない遠くへと彷徨う。
「……離れていったよ。気持ちを悟られる事もないまま。
最後に会った時、もし気持ちを打ち明けていたら、少しは違っていたのかなって……今でもたまに思うよ」
「今でも、その人の事………好き、なんですか?」
「………うん。そうだね」
「……」
キッパリとそう言い切られ、心の奥がズクン…と抉られる。
「だから……初めて実雨に会った時、かなり動揺したよ。
……あの時の彼に、見た目も雰囲気も……似ていたから」
「………僕も……です。樹さんが、大空に似てて……」
「……だから、僕に抱かれたんだよね」
樹さんが、少し意地悪な事を口にする。
だから、僕も……
「樹さんも、僕をその人に重ねた……んですよね」
そう返すと、樹さんが寂しそうな苦笑いを見せた。
「………うん。お互いさま……だったね」
樹さんの手がスッと伸び、僕の頭をくしゃりと撫でる。
それから頬に触れ、憂いを帯びながらも蕩けた瞳を僕に寄越し──親指の腹で僕の唇に触れ……名残惜しむように、ゆっくりと横に引く。
「元気でね」
「……」
樹さんは、大人だ。
ここで、さよならしようとしてる。
……いやだ、そんなの……
ツキン……と、胸の奥が痛む。
「……はい。樹さんも」
本当は、全てを割り切って受け入れられる程……僕は強くもないし、大人でもない。
もし樹さんが、大空とは全く関係のない人だったら……?
背徳行為だと感じる事もなく。
……この優しい温もりに、甘えようとしたかもしれない。
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