センチメントの心

真田晃

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「…僕には…北村さんの辛さとか解らないけれど、理解したい。僕は北村さんに死んで欲しくない」

僕は彼女の左腕を掴んだ。

「…それは、他殺になるのが怖いんでしょ」
「そうじゃなくて!!僕は…」

涙が出てきた。
彼女の背負っているものが重すぎて…
僕は何の力にもなれなくて…


「僕の好きな人は、北村さんです…
ずっと…ずっと好きです…だから…僕は北村さんに死んで欲しくない…」
「……」
「力になりたいんだ…」

視線がぶつかる。

「頼りないかもしれないけど…」
「…吉岡…」
「北村さんは汚れてなんかない…他の誰より…キレイだよ」

僕は彼女を抱きしめた。
それは彼女が僕の背中に手を回したから…

「…本当?」

少し泣きじゃくった彼女の声…

「…うん」
「私、こんな風に抱きしめられたの、初めて…」

ギュッと彼女の腕に力がこもる。

きっと家族にも…こんな事、無かったのかな…

僕も強く抱きしめた。

「私、あんたの事、好きにならないかもよ…?」
「…うん」
「……」


何て夜…


僕達2人の頭上には、満点の星空が広がっていた。
それらを僕ら2人が独り占めしてるような気分だった。
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