センチメントの心

真田晃

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翌朝、北村マイは女友達の前で寂しそうに笑った。


「…ハハ、バカだね。嘘に決まってんじゃん」

屋上で僕を突き放し、風に吹かれ行き場を失ったタバコの空箱を拾うと、北村は暗闇に放り投げた。

「……」
「…実はね、持ってんの。ケータイ」

少し俯き、僕から彼女の表情が見えなかった。

…でもあの涙、あの言葉…
嘘とは思えない…

「…先生?屋上から出られなくなっちゃった…」
ケータイで親しそうに話す北村。

「助けて、先生」

それからヨレヨレした担任が屋上のドアを開けに来て…


「…帰りなよ、吉岡。バイバイ」

笑顔で先生の腕に抱きついた彼女は、寂しそうに笑った。


その笑顔が痛々しくて…

「北む…」

先生側でない方の北村の腕が少し上がる。
2人の背中に発した言葉はその軽く振られた手で止められた。



僕は…あの時…

ちらっと北村を見ると、視線に気づいたのかこちらを見た。

…冷めた目…
まるでガラス玉のような…
そして細い首筋には…生々しい、赤い斑点…

「!!」

スッと北村は背を向ける。


僕は…助けられなかった…
本当だった…
そして北村も僕を頼れないと見透かしていた…


僕は…試されていた…?
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