流刑島、運命の番

真田晃

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横峯の指が、僕の手に触れる。

「でも、啓介だけを責める事はできない。
僕も、彼に自分を重ねて……心の中で倫太郎を殺していた。
匠海に支えられながら、君を育てる事で……僕は、少しでも。君だけでも。……罪を償えただろうか……」

涙で滲む瞳のまま頷けば、横峯が弱々しく息を吐いた。


「……流刑島……か……
強ち、間違ってはいないよ。
犯罪者を収容する……という意味ではね……

僕達人間が来た時点で、ここはもう……犯罪者の住む島に……なってしまったのだから……」


ゴホッゴホッ、

口元を覆って咳き込んだ横峯の手には、大量の吐血が──
見れば、白衣の一部が、血で濡れ広がっている。

苦しそうに、荒々しい呼吸を繰り返す横峯が、弱々しく僕を見上げた。


「……倫太郎……」


上擦っていた息を飲み、ゆっくり見開かれる双眸。
その黒瞳が、小刻みに揺れた。

「……すまなかった……
啓介を……止められ、なくて……」

横峯の目尻から、涙が零れ落ちる。
その顔は、窓から差し込む月光のせいで蒼白く……僕を不安にさせた。

「君だけでも、逃げて……
……生きのびて……欲し、い……」

僕を掴んだ手が、緩む。
そのまま滑り落ちれば……もう二度と、動く事はなかった。


「………、っ」

大粒の涙が、頬骨の上を掠め次々と落ちる。

目の前で起こったこの現実を、僕はもう……受け止める事が出来なかった。
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