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しおりを挟むそれは、ある日の昼休み──教室とは別の棟にある空き教室にて。
いつもの様に五人で連み、いつもの様にそこで駄弁る。
しかし、朝から妙にトゲトゲしい態度の東生が、机上にドカリと座って腕を組むと、睨みつけるようにして僕を見下ろした。
「前から思ってたんだけどさ。お前ら、距離近すぎじゃね?………ホモかよ」
ボソッと呟いた最後の言葉には、明らかな悪意を感じた。
軽蔑の色を孕む、下卑た目つき。
攻撃的なその態度に、つい僕は──
「ハァ……?!
んな訳ないじゃん。……てか、ホモとか言うな。キショいだろ!」
触れて欲しくなかった所を突かれ、全力で否定する。そうしなければ……認めた事になってしまうと、思ったから。
僕が樹を、好きだって──
「……だよな、樹」
隣に居た樹に振る。
僕は当然、苦笑いしながらも「そうだね」って、同意してくれるものだと思っていた。
「………」
だけど樹は、少し困惑した表情を浮かべた後、直ぐに顔を逸らし……何も答えなかった。
それから樹は、僕とは距離を置くようになった。皆と連んでいても、以前のように傍にはいない。
高身長でスラッとしたモデル体型。
笑顔が爽やかなイケメンの樹は、誰にでも優しくて。その分け隔てのない性格も手伝って、兎に角モテた。
優しげな眼差しは、樹に近付く女子へと向けられ──もう僕を映す事など、なかった。
……何であんな事、言っちゃったんだろう。
僕から顔を背ける樹。
あの時の光景が思い返される度に、胸の奥がギュッと締め付けられる。
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