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しおりを挟む「……綺麗だねぇ」
向かいのシートに座る愛咲。
外の景色を眺めるその顔が、夕焼け色に染まっている。
大きな瞳。小さくて可愛らしい顔。
細くて長い、サラサラの髪。華奢でスラッとした手足。
舌っ足らずでアニメがかった声が、可愛くて堪らない……と、男子の間では人気の愛咲。
いつもなら子供っぽく燥ぐ愛咲が、しおらしく座っている。
その空気が、何か変で。
……居心地が悪い。
「……」
「……愛月」
ゆっくりと上るゴンドラが、もうすぐ頂点に達しようとした時だった。
いつになく真剣な愛咲の瞳が、少し緊張した様子で僕を捕らえる。
「……好きです。
私と、付き合って下さい」
「………」
──瞬間。
何となく、悟った。
解ってしまった。
「えっと……あのね。
実は、愛月に告白するの、皆に協力して貰ってて。……それでね、」
ふて腐れた空気を露わにした僕に、愛咲が慌てながら笑顔で説明してくる。
「……」
せめてこの告白が、偶然の産物だったと思いたかった。
一度は感謝した東生への気持ちを、見事に踏みにじられた気分。
……最低。
何だよこれ。
茶番、過ぎるだろ。
「……下につくまでに、返事が、欲しいなぁ」
悪気のない、愛咲の笑顔。
困らせているのは解ってる。
解ってるけど……
「……」
僕はそれに
何も……答えなかった。
地上に降り立った僕と愛咲の前に、人影が差す。
「……どうだった?」
東生。
片手を上げ、ニヤついた顔。
最初から僕など一切見ず、愛咲に話し掛けている。
「──!」
……え、待て。
ここに東生が居るって事は……
樹と真奈美は……?
振り返って見れば、一つ見送った次のゴンドラから、二人の姿が。
先に降りた真奈美は、愛咲を見つけるなり駆け寄って飛びつく。
後から降りる樹。複雑な表情を浮かべ、後頭部に手をやりながら……あからさまに僕から視線を逸らした。
「……えぇーっ!
おめでとぉ。良かったね、:真奈美(まなみ)んっ!」
愛咲……だけじゃなかった。
真奈美から相談を受けていたらしい東生は、樹との仲まで、取り持っていた……
──最悪だ。
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