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菊地編
208.
しおりを挟む軽くシャワーを浴び、昨日洗ったシャツに着替えると、ショーパンがない事に気付く。
剥き出しの太腿。
裾を片手でぐっと下げ、できるだけ下着が見えないようにして部屋に戻る。
さっきは感情に任せ、五十嵐の目の前でパンツを脱ぎ、それを投げつけてしまったけれど……冷静になってみると、結構恥ずかしい。
備え付けの冷蔵庫の前でしゃがんでドアを開け放っている五十嵐が、背を向けたまま僕に話し掛ける。
「昨日、さ……何があったんだよ」
「……」
遠慮がちながら無遠慮に聞いてくるのは、ほんとに相変わらず。
下着と一緒に買ってきたであろうドリンクを、冷蔵庫のホルダーに幾つか補充し、それまで入っていた炭酸飲料を一本取り出す。
喉が渇いていたのか。当たり前のようにぷしゅっと開けて、ゴクゴクと喉を鳴らす。
「……何か、ヘンな事……されなかったか……?」
「ヘンな事って?」
直ぐに質問返しをすれば、五十嵐がしゃがんだまま此方に顔を向けた。
「……ぅわっ、と……!」
大袈裟に驚いて、尻餅をつく。
手が滑って炭酸を服に零すとか。もう、コミカルすぎ。
「し、下……穿けって!」
「その下だけど。……何処にあるか知らない?」
「……お、俺が……知るわけないだろ」
手をばたばたとさせ、慌てた様子で真っ赤な顔を背ける。
「……」
さっき、目の前でパンツ脱いでやったのに。なんでそんな反応するんだよ。
そもそも五十嵐は、普通にノンケだった筈。
男の生足見たって、別にどうって事ないだろ。
五十嵐の背後を通り、ベッド端に腰を掛ける。
両手を後ろに付き、足をぶらぶらとさせ、そこから高みの見物をする。
──五十嵐の背中。
やけに広くて、大きい気がする。
僕と同じ中学生の筈なのに……
「……昨日、vaɪpərのリーダーの誕生日会だったんだろ?
いつもは留守番の工藤が、菊地さんに連れてかれたからさ。
何かあったんじゃないかって……心配で。俺、ここに泊まったんだよ」
冷蔵庫をぱたんと閉め、振り返った五十嵐が真面目な顔で僕を見上げる。
「そしたら工藤、菊地さんに抱きかかえられて戻ってきて、……その、凄く、苦しそうだったから……」
五十嵐の瞳が揺れ、視線が落とされる。
「……もしかして、真木さんから貰った薬の事がバレて……
それで、酷い目に遭ったんじゃないかって……」
「……」
──そっか。
すっかり忘れてた。
その問題もまだ残ってたんだった……
10
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